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マヤ

三代目❤夢小説 『NAOTO編40』

2019.01.05 23:00

夜になり民宿のカウンターで食事を済ませ、直人が席を立とうとすると、主人が声を掛けてきた。



「シーズンオフといっても、まだまだ気温も高いですし、かえって今くらいの時期の方が人も少なくておすすめですよ」



「はぁ…」



「どーです?滞在中に一度潜ってみませんか?」



プライベートの旅行なら、すぐに快諾しただろう。



だが、直人はとてもそんな気にはなれなかった。



「休暇が終わったらすぐに大切なイベントがあるので」



まりあの実家は小さな民宿で、宿泊費も一泊3食付きで5500円、東京では考えられない位の安さだ。



きっと体験ダイビングなどの収入で利益を補って、宿を運営してるんだろう。



そんなことを考えながら主人の顔を見ていると、直人は何だか申し訳ない気持ちになってきた。



「…ダイビングは無理でも、シュノーケリングなら」



「そうですか❗ではさっそく明日ご案内させます」



ーん?



ーします…じゃなくて、させます?



ー他にスタッフがいるんだろうか?



直人が腑に落ちないような複雑な顔をしていると、主人がフォローするように言った。



「ああ‼ご案内ですが、丁度いまうちの娘が帰ってきてるので、それに案内させます」



「…え!?ご主人じゃないんですか?」



ー娘っていったら、まりあちゃんのことだろ?



ー嫁入り前の娘にそんなことさせていいのか?



ーそんなことって、なに想像してんだ、俺…



「あいにく今夜から別のダイビングツアーの予約が入ってまして、明日の夜まで留守にします」



ー最初から分かってたら、シュノーケリングなんて言い出さなかったのに。



直人が変に気を使ったために、もう後には引けない状況になった。



「ご心配なく。うちの娘もスキューバダイビングインストラクターの資格を持ってますし、経験もあります」



ーいや、そういう問題では…



「まりあ!」



「はぁい‼」



思ったより元気な声が厨房の奥から聞こえてきた。



首里城が描かれた色鮮やかな暖簾(のれん)をくぐってまりあが顔を出した。



すぐに直人の方を見て頬を染めた。



「アチャー(明日)お客さんをシュノーケリングにお連れして」



「あ、はい!よろしくお願いします」



まりあはペコンっと頭を下げた。



直人はまりあが断るかと思っていた。



「ハナリ辺りがいいだろ?」



「ハナリ?」



「シブがき隊の像がある無人島です」



「え?そうなんですか」



主人に付け加えるようにまりあが続けた。



「もうずいぶん風化してしまって、誰の像かもわかりませんが」



「遠いんですか?」



「いやぁ、ビーチからすぐ沖に見えてる島ですよ!島まで渡し船も出てます」



ーまりあちゃんと二人でシュノーケリング?



「ぁんたぁ、そろそろ出んと」



厨房から出てきたまりあの母が主人に声を掛けた。



「そうだな、どうぞごゆっくり」



主人は直人に挨拶して出かけていった。



振り向くとまりあの姿も見えなくなっている。



まりあの母と二人だけになった。



「あのー、お願いがあるんですが」



「はい?なんですか?」



「コインランドリーってありますか?」



「ああ‼うちの洗濯機使って下さい。干場は裏口出た所で」



「助かります」




つづく