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いろはうたう

午睡の輪廻

2024.11.10 10:00

最後に雨が降ったのがいつだったか思い出せない。

いずれにせよ今日それはリセットされたことになる。

その日、鼠は窓に当たる雨の音で目を覚ました。


短い秋の終わりが嫌いだった。

なのに去年も一昨年も覚えているのは秋の後ろ姿ばかりだ。

そして鼠は今年もまた過ぎ去った秋をベッドの上から眺めている。

遅く起きた平日の午後、静かに降る雨の音も好きではない。


寝起きの彼の花眼に世界はほんのり色づいて見える。

そのまま花畑で微睡んでもいいのだが洗濯物のことが気にかかる。

昨日の夜に干したまま今も雨に濡れているはずだ。

鼠は眠りの淵で下半身から這い寄る夢の愛撫を甘受しながら

洗濯はやりなおしだなと思う。


いつかの雨の日、鼠は自らの想いを雨で流した。

欠片も残さず流れ出た想いは雨に溶け排水溝に消えた。

あの日の雨は海へたどり着いただろうか。

海は鼠の想いをどう受け取っただろうか。

伝えることと引き替えに鼠の中から消えたその想いを。

鼠に後悔はない、それでも夢に囚われぬ夜はない。