「おんなは働かなくてもいいんでしょ?」について
このところ虎に翼から目が離せない。
いまさらながら、このドラマには、いまいまのフェミ的要素が満載だ。
毎回、後味すっきり。
そうそう、そうでなくっちゃ、という、言ってみれば「優等生」的な展開に、あいなるのだ。
いってみればNHKの朝ドラの王道でもある。
先日は、登場人物のひとり、中学生の発言と、それに同意する同僚の対応がとらちゃんの「はて」を引き出す。
いったん様子を見守るとらちゃん。
はて、直前の出来事はこうだ。
とらちゃんの職場に見学にやってきた男子中学生のひとりが、「おんなは働かなくていいではないか。家で家事と育児をしていればいいのに、なんでそんなに頑張るのか。合点がいかない」といった主旨の発言をしたのだ。
これに対し、とらちゃんの後輩である男性同僚は「わかるわかる」と応じる。
男たちは、必ず働かなくてはならない。苦しくとも嫌な仕事でも。
これに対して女性たちは、別に働くことは義務ではないのに働いている。
そして、なかで優秀な女性たちなら「女性なのにがんばっている」と、男性からすれば優位な扱いを受けているようにみえる。
君が感じるように多くの男たちの憤りにもつながろう。
こんなの納得いかないよな、わかるよ、と、男性職員はいうのだ。
しかし、、、と彼は続ける。
上から下を見て、弱いものを貶めたりいじめたりする構図になってはいいけないよな、と、男性職員は問いかける。強いものが弱いものをこらしめる、差別する、下に見てぞんざいな扱いをすることはならぬことだ、と、男性職員は中学生に伝える。もし君がそんな気持ちで、いま言ったことを考えるのだとしたら、それは違う、ということ、君ならわかるよな・・・と男性職員は中学生にいう、そんな流れだったと思う。
はるか昔、私が子どもを産んで仕事を再開しようとしたときのことを思い出した。
自分は「お金のために働く」のだと、そのときは思った。働くのは当たり前だから、と。専業主婦のままでいる発想は、ただただなかった。
そんなとき「女性が、お金のためだけではなく、働きたい、と思ってはいけないのか?」という問いかけが、誰かが世に発信するかたちでなされた。
それを聞いて私は「仕事ってお金のためでしょ、でも、もしかしたらそれだけではないのかな。とくに女性は、結婚して働くということは家計を助けることが理由であることが当然だと考えていたけど、ちがうのかな?」という思いが、慌ただしい日々のなかで頭に浮かんだのだ。
そのときは、日々の忙しさにかまけて深く考えたりその後の世論の行方を追ったり、誰がこれに対してどんな意見を発信したか、といったことに意識を向けなかった。
いまなら、「あなたのしたいことを選んですればいい、それが仕事でも、専業主婦になることでも、子育てに専念することでも。そして仕事に戻りたくなったらまた仕事を始めればいい」と言える。
もちろん「仕事を始めればいい」といっても、ブランクののちに仕事を見つけることの難しさや再開したあとの大変さだってある。
そして今日の放送では、妊娠した年下の女性同僚が、仕事はやめたほうがいいのではないか、と涙ながらに虎ちゃんに相談にきた。
そこで虎ちゃんは「女性の地位向上のためになんとしても頑張れ、とも、妊娠したから仕事はやめたほうがいいとも私は言わない、考えない。して欲しいのは、あなたがしたい道を選らんで進んでいくこと。そしてあなたの居場所はここにある」と言う。
なんて心強い言葉だろう。
したい道を選んだら「私のこれまでの居場所」がなくなるケースだってある。
とらちゃんの、この日の言葉は、そうした不安やもやもやに応えるかのような、そして今の世の中に提案するような言葉だったと感じる。
したいことをしたい。そのために何かを手放さなきゃいけない場合がある。
そんなときに「ここはいつでも私が帰ってこられる」とおもえる場所があれば、思い切り羽ばたける。
場所は、物理的でなくとも構わないのだと思う。
確かに自分の場所がある、という実感を得られる環境、人、ということだろうか。
女性は、働くことをやめて子育てに専念したら、マミートラックに乗ったといわれる現状がもどかしい。