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桜楓会 Ohfukai Society

7月教養講座 これを楽しむにしかず

2024.08.25 07:17

去る7月21日(日)、隣組のホールにおいて、桜楓会の教養講座「これを楽しむにしかず」が開かれました。
参加者は36名(会員17/会友19)で、講師はこれまでと同じく広報役員の丸尾が務めました。
丸尾担当の教養講座はこれが3回目となりますが、過去2回は音楽よりも美術を中心とした内容になっていました。      

今回は講座の題名どおり、個人的に好きな作品やトピックを中心に構成し、音楽に関する題材も増える形となりました。 また、丸尾がこれまで旅先で撮影した画像なども合わせてご紹介しながら、内容に厚みを持たせたつもりです。

具体的な内容は、まずオーケストラ、コーラス、フィルハーモニーなどのよく耳にする音楽用語が古代ギリシャに端を発することや、バッハは小川さん、ヴェルディは緑さんなど、作曲家の名前の中で、日本語に訳せるものなどをご紹介しました。「神に愛された」という意味のアマデウス(モーツァルト)が早世したこと(神が引き寄せた?)や、同じく短命で終わったショパンの心臓を安置してあるワルシャワの教会の映像などをご覧いただきました。この日は他にも、現地で撮影したベートーヴェンの頭髪や墓をはじめ、 シューベルト、スメタナ、ドヴォルザーク、マーラーなどの大作曲家たちの墓の映像などもご紹介しました。                                         
指揮者は何のためにいるのか?という疑問への答えとして、指揮者が誕生した歴史的経緯や、朝比奈隆、フルトヴェングラーといった大立者たちのエピソードを例に、指揮者の威光というものについてお話しました。

続いては「女性の美」をテーマにしたコーナーでした。「美しさのゆえに愛するなら」というマーラーの歌曲をお聴きいただいた後、アメリカ人画家サージェントの代表作「マダムXの肖像」を取り上げました。パリの社交界で脚光を浴びていた画家と絵のモデルになった女性が2人ともアメリカ人であったという事実から、歴史の新参者であるアメリカ文化が、ヨーロッパに抱くコンプレックスや、今のネット社会と何ら変わらぬスキャンダルとその根底にある妬みやそねみなどについて考察を試みました。

後半は、講師の好きな絵の紹介ということで、アメリカ美術の「ナイトホークス(夜更かしをする人たち)」(エドワード・ホッパー)とベルギー美術の「見捨てられた町」(フェルナン・クノップフ)を元にした内容でした。「ナイト・ホークス」については浮世絵師、河鍋暁斎の「枯木寒鴉図」と「幽霊図」や映画「カサブランカ」、またマーラーの妻、アルマの生涯についてなど、自由な連想で多岐にわたるトピックをご提供しました。「見捨てられた町」からは、芸術の根底には「性」と並んで「喪失感(死)」が存在することや、クノップフと同時代のベルギー絵画、マグリットやポール・デルヴォーなどの作品を合わせてご覧いただきました。

そして、夢をテーマにした作品が多いデルヴォーに通じる絵画として、日本の石田徹也の作品をご紹介しました。誰の真似でもないスタイルで、現代社会における閉塞感を描いた石田の作品は、賛否含めて強いインパクトを持つもので、この講座でも最も反響が大きかったように思います。

石田の享年と同じ31歳で没したシューベルトが、余命宣告によって、最後の数年間で音楽表現を急激に深化させたことにも触れた後、締めくくりとして、イギリス音楽の「前奏曲ロージメードル」(ヴォーン・ウィリアムズ)を聴いていただきました。この曲は丸尾が最も愛する曲で、この世を去る時に自分のかたわらで鳴っていてほしいと切に願う音楽です。

ベートーベンの墓

ナイトホークス

枯木寒鴉図

見捨てられた町

マダムXの肖像 (テートギャラリー版)