【幸せのためのヒントFile39:おさがりを巡らせるコミュニティと、ある衣装家の想い ~〈ぐるっと交換会〉の背景にあること~】
『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)で連載している「4つの視点から考える 幸せのためのヒント」。
9月号では、子ども服の物々交換会〈ぐるっと交換会〉の発起人、平田香織さんに伺った話を紹介しています。
この活動の真ん中にあるのは、衣服にまつわる仕事をしてきた香織さんの、衣服へのリスペクトと衣服を愛おしく思う気持ち。
そんな香織さんの熱意が、共にこの会を運営する仲間に伝わり、交流会に参加した人の心を動かし、子育てママたちが交流する場に発展しているようです。
香織さんは、アパレル企業にパタンナーとして勤務後、衣装家として独立(衣装家としては田村香織の名で活動)。
舞台やダンス、現代サーカスなどの衣装デザインと製作をしています。
結婚を機に住み始めたまちで子育てをするなか、「同じマンションに子育て中の人がいても『おさがり、要りますか?』と聞き合う関係になりにくい」と感じたのが、〈ぐるっと交換会〉を始めたきっかけなのだそう。
「1着たりとも無駄にしたくない」という想い
〈ぐるっと交換会〉は大雑把に言うと、持ち込んだ分の枚数を持ち帰ることができる物々交換会です。
でも、なんでも預かっているわけではありません。
香織さんは、言います。
「持ち込まれた服はその場でチェックして、シミや破れなどがあるものはお戻ししています。“廃品回収ではない”ということを理解してもらうために。お預かりしたからには最後まで大切にしたいです。防虫剤を入れて保管し、黄ばみ汚れを見つけたら洗っています。1着たりとも無駄にしたくないので」
ある人が言った、「みんなのクローゼットですね」という言葉
最近では、利用者と一緒にこの会をつくっているような感覚があるのだそう。
「どのサイズの服がもっとあったらいいですか?」と声を掛けてくれたり、香織さんたちが子ども服にサイズのシールを貼って並べているのを見て、持ち込む服にあらかじめシールを貼ってきてくれたり。
ある人が、「みんなのクローゼットですね」と言ったのだそう。
香織さんと一緒にこの会を運営するゆうこさんは、自分の子どもたちに、
「いまはあなたの服だけれど、いずれ誰かの服になるかも。だから大事に着ようね」
と、話していると教えてくれました。
ちょっとずつ、次の世代にバトンが渡されているようです。
現状、香織さんをはじめボランティアで成り立っているこの交換会。
今後も継続していくために、香織さんは助成金を得るなどして体制を整えているところ。
運営費を賄えるくらいの利益をこの活動の中で生み出し、無償ではなく有償ボランティアで回す仕組みをつくっていきたいと話していました。
実は、衣装家としての香織さんはよく知っていて、身体の中心にスッと1本筋が通っているような、安定感のある人だと感じていました。
そして今回、かなりの努力家であると再認識。
忙しさを言い訳にせず、限られた時間で最大限のパフォーマンスを発揮しています。
この先も、実現したいことがたくさんあるのだそう。
今後が楽しみです。