ペット商材の流通と今後の市場展望 Vol.2
ペット産業で活躍する経営者や専門家をゲストに招き、日本の動物医療やペット産業の現状と将来について深掘りするセミナー形式のインタビューシリーズ。
国内では犬の飼育頭数が減少し、市場が厳しさを増していくことが予想されます。このような状況下で、私たちが取るべき市場判断と今後の施策とは何でしょうか。現状分析と市場展望を中心に、お話を伺っていきたいと思います。
(この記事は3名による対談セミナーから、井東様との対談を抜粋して掲載しています)
ゲスト
井東 正樹(いとう まさき)
ジャペル株式会社 取締役
大規模流通システムでペット商材を届け続ける国内物流の要
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生田目
ありがとうございます。
特にコロナの影響で、市場全体にも影響が出ましたが、流通面でも大きく変化が出てきた印象ですね。
ただ、実際の犬の飼育頭数は減少し続けています。
この先、さらに飼育頭数が減少していくとして、商品点数の増加や単価の上昇だけでは市場成長に対応できないと思うのですが、具体的にどのような影響が考えられますか?
井東
生田目社長のおっしゃる通り、統計情報からは飼育頭数は減少していますが、市場全体は徐々に大きくなっていることがわかります。
これは一般的に、円安で商品の生産原価が上がり販売単価も上昇しているからと言われています。
ただ、頭数の減少率が大きいため、これだけでは市場規模の拡がり方を説明できません。
実際のところ、コロナ禍をきっかけにECの販売ルートが急激に拡大しました。
そのため、飼い主が商品やメーカーに直接アクセスする頻度が飛躍的に上がりました。
また、高齢ペット層の増加で機能的な商品が求められるようになっています。
このような購買チャネル需要と商品需要の変化が同時期に起こったため、機能的な高額商品が自宅から店舗に行かずに注文できるといった構図になりました。
高付加価値商品が浸透する環境が整ってきたため、市場規模が拡大したと考えています。
さらに、今までは高齢ペット向け商品、いわゆるシニアペット市場のラインナップが不足していました。
2008年のペットブームから15-16年。ペットのコア層がシニアになっています。
そこに目を付けたペット関連業種外の企業も、「得意分野×ペット」で参入してきています。
今までは、「ペット業界は閉鎖的な産業だ」と言われて顧客の奪い合いをしてきましたが、新領域の開拓によって市場が動き始めていることを実感しています。
私はペット市場にずっといるので、個人的には市場に参入してきた異業種企業に頼るばかりではなく、業界のクセを知り尽くしているペット関連企業が率先して高い視座で市場を盛り上げてほしいと思っています。
生田目
仰る通り、動物病院市場もシニアペット領域に関しては重要度が増しています。
ペット業界全体として、ペットの高齢化と家族化が大きな転換期になっていますね。
新しい角度の商品ラインナップはどのようなものがありますか?
井東
フードで言うと年齢や疾患に合わせたラインナップが一般化しています。
早い時期からそういった商品が出てきていましたが、コロナを境に品目がより充実した上に市場規模も右肩上がりになっています。
また、ペット用品は生活用品とケア用品の大きく2つに分けられます。
生活用品は機能に差が出にくく、アイデア勝負になってしまうので、あまり目立った傾向はないかなと思います。
一方で、ケア用品は専門的要素が強く出やすいので機能に重点が置かれる傾向にあります。
まだまだケア用品の領域はラインナップが不十分だと感じますし、優れた機能を持った商品が開発されることを期待しています。
ただ、この領域に入るには専門的知識が必要となるので、異業種からの参入には難しさがありますし、まだ参入企業は少ないのが現状です。
ペット用品、特にケア用品は今後着実に市場が拡大し、事業成長が見込める領域だと思います。
Vol.3へつづく