過敏性腸症候群の生活の質と心理療法④:事務局便り#22
- 予防策を繰り返す影響:日常編
- 過敏性腸症候群に対する予防策と気持ちの関係
*動画とブログの中身は同じです
本日の内容は、過敏性腸症候群と、生活の質や心理療法との関係の続きです。
まず、予防策を繰り返すことで、日常生活にどのような影響があるのかを、友人との外出を例にして説明します。
続いて、日常生活に良くない影響がでても、予防策を繰り返してしまう感情的な理由も簡単に説明したいと思います。
Aさんは過敏性腸症候群で治療を受けています。
最近、食事の後によくお腹が痛くなり、トイレに長い時間いることが多くなったため、外食は避けるようにしています。
ある日、友だちのBさんがAさんを食事に誘いました。
でも、Aさんは食事に行ってトイレに長くいたら、友だちやお店に迷惑をかけるかもしれないと思い、誘いを断りました。
これでBさんに迷惑はかけないと、Aさんはほっとしました。
その後も、何度かBさんが誘ってくれましたが、Aさんは同じように断り続けたため、次第にBさんからの誘いがなくなってしまいました。
Aさんはお腹の症状のことをBさんに伝えていませんでした。
なぜなら、お腹の病気のせいで断ると言うと、Bさんに「気にしすぎだ」と言われるかもしれないと思ったからです。
それによって、Bさんは自分の誘いが迷惑になっていると勘違いし、Aさんを誘うのをやめてしまったのです。
結果として、AさんとBさんは疎遠になってしまいました。
Aさんの話は少し極端な例かもしれませんが、予防策をとることで本来の目的とは違う結果になることもあります。
しかし、Aさんのように予防策を取ることで安心を感じると、なかなか方針を変えにくくなります。
Aさんは、Bさんと会わなかったために、お腹が痛くなる心配は減りましたが、実際に会って楽しい時間を過ごせば、それに勝る喜びを感じたかもしれません。
でも、その喜びは実際には経験していないので、幻のようなものです。
もしAさんがBさんの誘いを断ったときに得られる安心感が、目の前に差し出された1万円としたら、Bさんと会うことで得られるかもしれない喜びは、もしかしたら2万円の価値があるかもしれませんが、逆に2万円の損失を被るリスクもあるような、確実性が低い選択肢です。
もし確実に手に入る1万円と、どうなるかわからない2万円分の選択肢があったら、あなたはどちらを選びますか?
多くの人は、確実な1万円を選ぶでしょう。
予防策を取ること自体が悪いわけではありませんが、Aさんのように、もし目指した結果と違う結果になりそうなら、早めに予防策を見直す必要があります。
次回はこのように安心を選ぶことの長期的な影響についてもう少し詳しく説明します。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストもしくはそのイラストを使って菊池が作成
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集英社新書プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】の連載をしています。主に第10回および第11回が、過敏性腸症候群についてです。