「ジャズ喫茶案内」創刊号
これは「ジャズ喫茶案内」の創刊号ですが、皆様、ご存知でしたでしょうか?
今回その発行者であり、「ジャズ喫茶案内*Gateway To Jazz Kissa」というサイトを運営なさっておられる楠瀬克昌さんにお時間を割いていただき、2度目の対談が実現いたしましたので、そのお話と併せて紹介いたします。
前回も書きましたとおり、楠瀬さんはプロの物書き。またTwitterの中では全国ジャズ喫茶関連情報の潤滑油役として、様々な情報をリツイートしていただく等、私も常々お世話になっている方でもあります。
今回もまた色々と情報や刺激をいただきましたが、その説明が何ともわかりやすく、膨大な情報を俯瞰しつつ整理しておられる方のご見識はやはりさすがでした。(注)
そしてそんな楠瀬さんが満を持して創刊されたのが、この「ジャズ喫茶案内」。
改めて感じさせられたのは、紙という媒体の訴えかける力の強さ。
上質な紙をご使用されていることも相まって、美しい風景写真が印象的なこの目次の見開き頁。
情に流されてはいないものの、どこか温かい眼差しを感じさせる文面とお店の方々との信頼関係が伝わってくる写真とのマッチングが心地好いお店の記事。
あっという間に読み終えたとは言え、最初から最後までフルカラーの贅沢な48頁は読み応え・見応え十分。
そして、今回号で特筆すべきは、やはり巻頭で取り上げられた岩手・越前高田のジャズタイムジョニーさん。
東日本大震災でお店を流され、仮設住宅の中で周囲の支援を仰ぎながらも営業を再開されたママ。しかし、立ち退き期限が迫った今、再建資金が足りないという深刻な問題に直面しているという現実を柱に、これまでのこのお店の歴史を辿ることでママの魅力をあぶり出し、更には震災の恐ろしさ、その後の復興状況までが見えてくる全16頁にわたるじっくりとしたリポート。
これだけでも読む価値があると思いますが、それだけでは終わりません。
水没から完全復活された宮城・気仙沼のヴァンガードさん、震災復興の一助になればと開業された宮城・栗原のカフェ・コロボックルさん、店主を失ったお店を引き継がれた宮城・名取のコーヒー&セッション パブロさんという3軒を取り上げておられますが、その共通点はあの震災でジャズ喫茶を始めることになったマスター達の存在。それぞれの人生の大きな変化が描かれ、人間の物語としてもとても興味深いものでした。
加えて、このヴァンガードさんの店内写真等、ずっと眺めていても飽きないきれいで味わい深い写真や、岩手・一関の名店ベイシーを起点としたジャズ・スポットのめぐり方を例示することで東北ジャズ喫茶巡りに誘われた編集後記等々、本当に色んな魅力が満載。
また、売上の内、半額の500円は、ジャズタイム ジョニー再建募金に寄付されるというこの1冊。ご興味のある方はこちらの楠瀬さんのサイトをご覧くださいませ。
また、ジャズタイムジョニーさんの復興支援サイトはこちらですので、併せて紹介しておきます。
尚、この対談が行われたのは、名古屋・本山にあるJazz & Coffee Days(デイズ)さん。
住宅街の表通りに面したビルの2階にあるこじんまりしたこのお店。銘スピーカー ヴァイタボックスをそれなりの音量で鳴らされておられて、実に居心地のいい空間でした。
とは言え、私自身は楠瀬さんのお話に引き込まれてしまい、じっくり聴くことが出来ませんでしたので、また次回、ゆっくり伺おうと思った次第です。
【駐車場:無(近隣にコインパーキング多数有)、喫煙:不可(お店の出口そばに喫煙所有)】
(注)今回、楠瀬さんから色々お話を伺い、興味深かったものから一つだけ。。。私の音楽的レベルを晒すようでお恥ずかしいのですが、「今、流行っているカマシ・ワシントン等のジャズとフュージョンとの違いはどこにあるのでしょうか?」と質問したところ、「フュージョンはジャズ・ミュージシャンがジャズにロックとか他の要素と融合させたものに対し、今の流行のジャズはヒップ・ホップを始めとした色んな音楽的要素等が元々身についているミュージシャンがジャズをやった時にそういう要素が自然と出てきているだけ」とのこと。
音楽は言葉にはならないので、それでカマシ・ワシントンが理解出来るのかと言えば、それはまた違う問題ですが(笑)、理解する取っ掛かりがいただけたのはありがたかったです。
<追記>楠瀬さん、お忙しい中、お時間をいただき、どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。また、第2号も楽しみにいたしております。