空気はどこにでもあるのに、空気入れが無い

愛し君へ

暑いけど風は秋めいてきた今日この頃、いかがお過ごし？

暑さ寒さも彼岸までだよ。

君は普段自転車に乗る？

先日、自転車で過ごした休日の話をお届けするね。

その日は、好きなうどん屋さんに行こうと思って、

天気も良かったし、自転車で行くことにしたんだ。

自転車で走り出して２，３分後。

少しタイヤの空気が少ないなと感じた。

この先に自転車屋があるのはわかっていたので

“あの自転車屋で空気入れればいいか”

という軽い気持ちで走り続けた。

９時４５分。自転車屋に到着。

さっそく店の外にある空気入れを使おうとしたけど、ノズルが無い。

入り口を見ると「１０時開店」の文字。

営業時間外は空気入れが使えないらしい。

あと１５分。微妙な時間だ。

“まぁ、自転車屋くらいどこかにあるっしょ”

と、またもや軽い気持ちで走り出した。

１０時１０分。別の自転車屋にを発見。

しかし、「本日休業日」の文字が。

１０時３０分。

国道沿いを走り出してからは、まったく自転車屋が無い。

車屋はたくさんあるのに。車屋で空気入れてもらえないかなと思いつつも、

入る勇気がなく、重くなったペダルをひたすら漕ぐ。

“こんな事なら、家を出たときに引き返して空気入れればよかった”

と後悔をしだした。

快晴の空を見上げながら、

“空気はどこにでもあるのに、空気入れが無い”

純文学のタイトルのようだなと思いながら、いつもより重いペダルを漕ぐ。

そして、ついにうどん屋に到着してしまった。

１０時４５分。開店前に一番乗りで並ぶ。

１１時開店時には、７人ほど並んでいた。

重いペダルを漕いだおかげか、

いつもの１.３倍くらいうどんが美味しかった。

“タイヤの空気は後日入れよう”

うどんを食べながら、そう思っていた。

自転車でお出かけする日は、

出かけた先のお風呂屋ではなく、

戻ってきて近所のお風呂屋に行く。

往復約２時間自転車に乗ったので、

お風呂も楽しみだ。夏はサウナにも入る。

サウナ用に飲み物を買おうと、

お風呂屋近くのドラッグストアに入った時、

駐輪場に信じられないものが置いてあった。

「ご自由にお使いください」

タイヤの空気入れだ。

まるで赤子を抱きかかえるかのように空気入れを持ち上げる。

“今日のストーリーは君と出会うためだったんだね”と。

刈川は一生忘れない。

あのドラッグストアに空気入れがあることを。

なんだか人生の縮図のような一日でした。

これからは涼しくなってくるので、

君もサイクリングなどいかがですか？

ランデブー、デートの約束をしよう。

次会う日まで会えない時間を大切に。