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「学ぶことの勇気と流行」

2024.09.17 05:06

https://www.weblio.jp/wkpja/content/%E5%A0%80%E7%94%B0%E5%AD%A3%E4%BD%95_%E5%A0%80%E7%94%B0%E5%AD%A3%E4%BD%95%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81【堀田季何】より

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/15 14:09 UTC 版)

堀田季何 ペンネーム 堀田季何(ほったきか) 誕生 1975年12月21日(48歳) 東京都文京区 職業 俳人、歌人 言語 日本語、英語 国籍 日本 ジャンル 俳句、短歌、翻訳、評論

代表作 『惑亂』(2015年)、『星貌』・『人類の午後』(2021年)

主な受賞歴 第3回芝不器男俳句新人賞齋藤愼爾奨励賞

第72回芸術選奨文部科学大臣新人賞 第77回現代俳句協会賞 第3回高志の国詩歌賞

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来歴

ブラウン大学、東京大学大学院などで学ぶ。小中高大を通じて英語で教育を受け、中学時代から英語で自由詩、日本語で短歌を書いていた。米国より帰国後に短歌、俳句、連句と本格的に取組むようになる。文芸家として、2015年、日本芸術文化国際交流財団「日・アラブ首長国連邦(UAE)芸術家・文化人等交流事業」の平成26年度事業・作家交流プログラムによりアラブ首長国連邦に派遣される。日本現代詩歌文学館振興会評議員。日本文藝家協会会員。

俳句

「澤」「吟遊」各同人、世界俳句協会監事を経て、現在、「楽園」主宰、現代俳句協会常務理事(2015年3月末まで青年部委員、2019年夏より幹事・IT部長。法人化に伴い、幹事から理事に。2024年3月に常務理事)、国際俳句協会(旧・国際俳句交流協会)理事。兜太現代俳句新人賞選考委員、全国俳誌協会新人賞選考委員、鈴木六林男賞選考委員、俳句甲子園審査員長[2]、詩歌トライアスロン選者、GHOC現代俳句オープンカレッジ講師[3]。過去に、センバツ!全国高校生即吟俳句選手権審査員、笠間書院「季何学研究所」所長代理、poecrival選者。

2010年、第3回芝不器男俳句新人賞齋藤愼爾奨励賞受賞。結社賞として第13回澤新人賞受賞。2016年、アラブ首長国連邦の出版社より日英亞対訳句集『Arabia』(邦題:亞剌比亞)を刊行。2018年、「俳句王国がゆく」北海道浦河町編俳句チャンピオン[4]。2021年、句集『星貌』及び句集『人類の午後』を刊行。2022年、『人類の午後』で第72回(令和3年度)芸術選奨文部科学大臣新人賞[5]、第77回現代俳句協会賞[6]、第3回高志の国詩歌賞[7]受賞。

外国語俳句においては、「草枕」国際俳句大会外国語部門大賞、龍谷大学青春俳句大賞英語部門最優秀賞(別の筆名による)。2011年、第2回東京ポエトリー・フェスティバルに英語作品(一部日本語)で参加。同詩祭では、自作の朗読の他、俳句の神話性についてのミニ講演、参加詩人の通訳、参加詩人による作品の翻訳を行っている[8][9]。

2012年、モンテネグロに招聘され、第42回ラトコヴィッチ国際詩祭(正式名称は「ラトコヴィッチの詩的な夕方」)に参加、日本語俳句と英語俳句を朗読[10]。2014年秋にはベトナムのハノイで日本語俳句の英訳を朗読。2016年3月にはUAEに招聘され、エミレーツ航空文学祭2016に参加、来日経験のある現地詩人二名との鼎談や英国詩人たちとの俳句朗読(日英)を行う[11]。2023年5月、スウェーデン俳句協会に招待され、現地及びデンマークの俳人に日本の現代俳句及び俳句事情を紹介した上、作品朗読及び翻訳を通じた俳句交流を行う[12]。2023年6月、国際対がん連合(英語版)のスイス・ジュネーヴ本部にて、がんと俳句についての講演を英語で行う[13]。

短歌

短歌は春日井建に師事。同時に中部短歌会入会(現在、同人)。結社賞として中部短歌会新人賞受賞[14]。2009年、第2回石川啄木賞(短歌部門)受賞[15]。2015年、歌集『惑亂』を刊行。2016年、同集により平成28年度日本歌人クラブ東京ブロック優良歌集賞受賞。現代歌人協会会員、日本歌人クラブ会員。

詩歌翻訳

翻訳家としては、主に短歌、俳句、自由詩の翻訳を行っており、国内外の媒体に掲載されている[16][17]。2019年、英訳を行った岡井隆歌集『伊太利亜』の日本語・英語・ドイツ語対訳版を砂子屋書房から刊行(独訳は中川宏子)。

逆に、日本語俳句や英語俳句は、他者によって翻訳されることもあり、多数の言語に翻訳されている(英語、フランス語、中国語、リトアニア語、モンテネグロ語、ルーマニア語、マジャル語、ベトナム語、アラビア語等)[18][19][20][21]。 その他、米国の詩人John Bloomberg-Rissmanによるコラージュ形式の連作詩「In the House of the Hangman 693 & 694」に作品5句の英語版が使用されている[22]。

人物

野村千春は父方の大叔母(叔祖母)。巽聖歌、周郷博は父方の大叔父(叔祖父)。[23]河合二湖は母方の従妹(人生で会ったことは「十指に数えるほどしか」ないらしい)。[24]

2017年4月15日、ツイッターにて心の性が男性ではない事を公表。

著書

詩歌集

歌集『惑亂』 書肆侃侃房 2015.9 ISBN 9784863851993 前書・平岳大、解説・大塚寅彦、装画・笙瑞枝 正字・歴史的仮名遣い

句集『Arabia: 99 Haiku』(邦題『亞剌比亞』)(日本語・英語・アラビア語対訳版)Qindeel 2016.3 ISBN 9789948138280 日本語創作及び英訳・堀田季何、アラビア語訳・Qindeel社提供 デザイン・寺井恵司 新字・歴史的仮名遣い

句集『星貌』邑書林 2021.8 ISBN 9784897099088 デザイン・寺井恵司 新字・新仮名遣い(附録は新字・歴史的仮名遣い)

句集『人類の午後』邑書林 2021.8 ISBN 9784897099064 枝折・宇多喜代子・高野ムツオ・恩田侑布子、装釘・寺井恵司 正字・歴史的仮名遣い

単著(詩歌集以外)

『俳句ミーツ短歌』笠間書院 2023.4 ISBN 9784305709851 装画・長崎訓子 装幀・室田潤

翻訳

岡井隆歌集『伊太利亜』(日本語・英語・ドイツ語対訳版)砂子屋書房 2019.10 ISBN 9784790417354 英訳・堀田季何、独訳・中川宏子

共著/アンソロジー

『第2回東京ポエトリー・フェスティバルと第6回世界俳句協会大会2011 アンソロジー』(東京ポエトリー・フェスティバル協議会/世界俳句協会編)七月堂 2011.9 ISBN 9784879441812[25] 作品及び翻訳所収

『世界俳句協会アンソロジー2011』(世界俳句協会)七月堂 2011.9 ISBN 9784879441836 作品所収

『草獅子 vol.1』双子のライオン堂 2016.11 ISBN 9784990928308 作品所収

『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』(現代俳句協会青年部編)ふらんす堂 2018.12 ISBN 9784781411361 俳論所収

『アジアの多文化共生詩歌集 ―シリアからインド・香港・沖縄まで』コールサック社 2020.7 ISBN 9784864354417 作品所収

『パフェ沼』ビーナイス 2020.12 ISBN 9784905389453 作品所収

『女性とジェンダーと短歌 書籍版「女性が作る短歌研究」 水原紫苑・編』短歌研究社 2022.1 ISBN 9784862726988 歌論所収

『LGBTとキリスト教 20人のストーリー』(監修・平良愛香)日本キリスト教団出版局 2022.3 ISBN 9784818411005 文章所収 - 第9回おふぃす・ふじかけ賞[26]、キリスト教書店大賞2023[27]

『闘病・介護・看取り・再生詩歌集』コールサック社 2022.10 ISBN 9784864355391 作品所収

『われらはすでに共にある』現代書館 2023.8 ISBN 9784768459478 文章所収

脚注

^ 文化庁等資料

^ 第26回俳句甲子園審査員長プロフィール

^ 堀田季何 GHOC 現代俳句オープンカレッジ講師

^ 2018年9月23日放送

^ “佐野元春さんに大臣賞 21年度芸術選奨、濱口竜介監督も(写真=共同)”. 日本経済新聞 (2022年3月9日). 2022年3月9日閲覧。

^ 第77回現代俳句協会賞決定のお知らせ

^ 第3回高志の国詩歌賞の受賞者

^ 第2回東京ポエトリー・フェスティバル

^ The 2nd Tokyo Poetry Festival & the 6th World Haiku Association Conference 2011 Anthology

^ ラトコヴィッチ国際詩祭公式サイト

^ The Writers' Exchange

^ A meeting of Swedish and Japanese haiku poets

^ UICC Twitter

^ 中部短歌会HP主要同人欄

^ 短歌ポータル

^ 「ガニメデ」65号、66号「伊太利亜」(岡井隆)英語抄訳

^ "As what blows must be contradiction" (Masami Morikawa), World Poetry Almanac 2011 (ed. Hadaa Sendoo)

^ ルーマニア語文芸誌「CRONICA」

^ リトアニア語文芸サイト「Literatūra ir menas(文学と芸術)」

^ 日本語俳句英訳サイト「Blue Willow Haiku World」

^ セルビア(モンテネグロ)語文芸サイト「Хаику новине(俳句ニュース)」

^ 「ZEITGEIST SPAM」

^ 講演等にて開示されている。歌誌「短歌」2013年8月号には巽聖歌との縁に触れた記事を掲載。同記事によれば『巽聖歌作品集』刊行後援会会員名簿には堀田季何の祖母や父の名もある。

^ 堀田季何『惑亂』(書肆侃侃房)

^ アンソロジー 2011

^ 2023・おふぃす・ふじかけ賞発表

^ 『LGBTとキリスト教』が大賞を受賞!

外部リンク

楽園俳句会

Report from Tokyo 6: The Radioactive Kika Hotta

「詩客」公式サイト

ラトコヴィッチ国際詩祭公式サイト

第2回東京ポエトリー・フェスティバル公式サイト - ウェイバックマシン(2008年6月24日アーカイブ分)

日本芸術文化国際交流財団

現代俳句協会賞受賞記念対談 堀田季何×マブソン青眼 - YouTube(現代俳句協会、2022年12月31日公開)

アート・ドキュメンタリー番組「No.109 詩人 Haikuの未来 詩人 堀田季何」

この項目は、文人(小説家・詩人・歌人・俳人・著作家・作詞家・脚本家・作家・劇作家・放送作家・随筆家/コラムニスト・文芸評論家)に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(P:文学/PJ作家)。


http://www.asahi.com/ad/chinohiroba/zemi03/ 【「学ぶことの勇気と流行」】より

霜 栄(しも さかえ)先生

駿台予備学校 現代文科講師

2018年2月5日(月)、駿台お茶の水センタービルにて、『知の広場』リレーゼミの第三回が開催された。「学ぶ」ということをテーマに、毎日学校で勉強する高校生にとって、とても興味深いテーマで授業を行ったのは、駿台予備学校現代文講師の霜栄先生。古代ギリシアから現代までの学びの変遷を振り返りつつ、2021年に予定されている大学入試改革でセンター試験の後継となる「大学入学共通テスト」について触れた。以下に本授業の趣旨を紹介する。

学びの原点は「言葉」と「道具」を学ぶことから

なぜ人は学ぶのでしょうか。私は「自分が持っている今の限界を壊して自由になるため」だと思っています。だから、学ぶためにはそれなりの労力も必要です。そして人類は学ぶという宿命を背負って生まれて来たのでしょう。

人類の歴史を辿ると、およそ500万年前に、樹上から地上に降り、二足歩行に移行しました。しかし地上には猛獣という敵が暮らしています。だから人間は、猛獣から命を守らなければなりません。

そこでうまく役立ったのが言葉と道具です。もちろん生物は、役立つものを手に入れるために進化することなどできません。言葉の始まりは、祈りや叫びといった詩的言語だったでしょう。猛獣に一人で立ち向かうことはできないため他者と協働し、連携プレイを行う必要がありました。その際、仲間とコミュニケーションを取る手段として、祈りや叫びのためにあった言葉が偶然役立ったのです。また、二足歩行により空いた両手で、道具を使うことができるようになりました。こういうわけで、学びの原点は言葉と道具を学ぶことでした。

言葉を学ぶということは、名前を付け、自分とそれらを区別していくことです。机といすを分ける。さらに机とテーブルを、椅子とソファを分ける。こうして身の回りの世界を分けて成長していきます。そしてこれが「分かる」という言葉にもつながっています。サイエンス「科学(=分科の学)」の語源も「分かる」という意味です。分かったと叫ぶのは、それが何の要素でできていて、どんな秩序で存在しているのかを理解した瞬間です。例えば、物質を化学式で表してみる。そうすると何の要素と何の要素がどのようにつながっているかが分かるわけです。また、道具を使って日常の困難に対処し、世界を解釈し環境を変えていく。これは現在の科学技術の原型ではないでしょうか。

言語と道具は一言で言えば「メディア」と言えます。メディア「media」と は、「間にあるもの」を意味する「medium」の複数形です。言語は、私とあなた、彼と彼女、いろいろな人間の間で交わされます。道具も同じ。私と土、私と岩、私と植物の間で作用します。つまり、人間の学びの始まりが、メディアの始まりでもあったと言えるでしょう。厳しい環境の中で、世界を解釈し、現実を変えるために、人間は言葉で連携し合い道具で対処して生きてきた。それが人類の学びなのです。

世界が変わると、勉強することも変わる

2045年には、汎用性人工知能があらゆる分野で人間の能力を上回る「シンギュラリティ」の時代が訪れるとも言われています。囲碁の世界では既に人工知能(AI)が最も優秀な棋士たちに勝利を収めました。チェスの世界ではもっと以前にAIが人間に勝利しています。ではいま、チェスの世界で一番強いのは誰でしょうか。実は人間でもAIでもありません。「ケンタウルス」と呼ばれる人間とAIのタッグチームです。このようなイノベーション(=新しい結合)が今後さまざまな可能性を生み出すと期待されます。

2012年、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン氏と、野村総合研究所は、日本の労働人口の49%がAIやロボットに代替される可能性が高いと発表しましたが、人間はただ、奪われるだけではなく、新たな仕事も生みだしていくでしょう。人間とAIのイノベーションです。第1次産業革命のときには、人間は蒸気機関を機織り機や馬車や帆船と結合させ、さらには鉄道を生み出し、通勤や通学が始まったのです。ですから、今後の世界が絶望的だと考える必要はないように思います。もちろん今回の第4次産業革命は、人間の身体能力の外化ではなく、人間の思考能力の外化ですから、私たちの学びにこそ最も大きな変化をもたらすでしょう。

2021年にスタートする「新共通テスト」が少しでも時代の変化にふさわしいものであることを願っています。最も顕著に変わろうとしているのが国語です。記述式の設問が導入され、従来ならこれが国語?と思うものも登場します。例えば、契約書や公的文書を読んだうえで、借主として住民として、どう対処すべきかといった問題が問われます。今後は、複雑な設定の中で特定の立場に立って、問題解決を図る能力が問われていくでしょう。

これからの学びの流行とは…

古代ギリシアの時代、仕事は奴隷が担っていました。それに対して自由人は体育、芸術、哲学といった技芸を学んでいました(たとえば哲学者プラトンはレスリングの名人としても著名です)。それがリベラルアーツ(自由になるための技芸)の始まりです。学校「スクールschool」の語源であるギリシア語「スコレーscholē」とは、もともと「今ここでやっていること自体に意味がある時間」という意味。役立つこと、仕事に活かせることを学ぶのは奴隷。自由人は自由であるために、自分の人生を費やすのに価値あることを学ぶのです。

その後、「リベラルアーツ」は古代ローマから中世において、自由7科(「文法・修辞学・論理学・算術・幾何・天文学・音楽」)となり,そして近代に入ってからは「人文科学・社会科学・自然科学の基礎分野の横断」へと、学問の流れは変化してきました。

近代の幕を開けたのは市民革命と科学革命でした。この二つの革命がもたらしたのは脱宗教化による近代国家の成立と第1次産業革命です。科学は世界をどう解釈するかの知恵となり、産業革命は、生活や環境を変える現実的な力を人間に与えました。こうして産業革命をきっかけに、学校で科学などの実学を教えるようになりました。これが普通学校教育の始まりです。

したがって私たちの学びには、2種類あります。役立つことを学ぶ実学と、学ぶこと自体に意味があり自由であるためのリベラルアーツです。産業革命後はとかく、役に立つ勉強をしようという流れが強くなりました。保険制度、インフラ、交通網などを整備することとともに、国家の収益をあげるためです。究極的には税収を増やすことが学びの目的とされたのです。

日本でも1872年に学制が公布され、近代の学校制度が始まります。この年には福沢諭吉が『学問ノススメ』を出版しました。これから新しい実学の学びが重要だという内容でしたが、当時日本の人口が3000万人余りの時代に、300万部以上も売れたと言われています。明治維新がけっして単に上からの変革であったわけではなく、人々の新しい時代への渇望に支えられたものであったことが感じとれます。

東京大学が開校したのは1877年。ヨーロッパには中世から大学がありましたが、神学や哲学、そこから派生した医学や文学が重要科目であり、当時、科学は“オタク的な科目”で、ヨーロッパの大学における学問の中心ではありませんでした。しかし東京大学は、富国強兵政策のもと工学系を重視したため、優秀な科学者を招くことができ、世界有数の大学へと成長していきました。

敗戦後の1947年には教育基本法が公布されます。「たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願う」とした上で、この理想を実現するために教育を推進するとしました。1872年の学制公布から75年ぶりの改革。そして2021年の新共通テストは、1947年の教育基本法から74年ぶりの改革。

このようにして人の一生に近い75年、74年という年月のほぼ等差数列的経過が、今回の大きな入試改革に必然性を与えているかのようです。

東京大学もまた変わろうとしています。電子書籍と紙の書籍とを融合させ、双方の利点を最大限に活用できる環境を構築するハイブリッド図書館の構想です。この図書館にはアクティブラーニングを意識した学習スペースも配備されるようです。図書館を起点として授業が展開していくのです。その場で電子書籍と紙の書籍の両方を駆使して学生同士が議論を行う形で授業が進められていく予定です。2045年のシンギュラリティに向けた世界的潮流とも言えますが、また福沢諭吉や緒方洪庵の塾に集った維新前夜の若者たちのアクティブラーニングに回帰していくものとも言えるでしょう。

あたりまえの自分を壊す勇気をもって学ぼう!

新しい時代に適応した「役立つ」教育を行おうという声は、今後ますます大きくなっていくでしょう。しかし大きな変化のときほど、ときに半歩下がって広い視野を保ち、なるべく本質を見極めていたいものです。

私は最初に触れたように、「自分が持っている今の限界を壊して自由になるため」に学ぶのだと思っています。もしも役に立つことだけを学ぼうとするなら、それは奴隷です。奴隷は何に価値があるのかを決める自由を持たず、すでに定められた名誉や権力や金銭の虜となるでしょう。役立つためだけの学びは精神を自由にしません。だから力をもつほどに多くの物や人を支配する力に向かってしまうでしょう。

存在する自分の祈りや叫びとしての詩的言語。役立つことに左右されない始まりの言語を忘れたくありません。自分とはしょせん、他者の他者にすぎません。そして誰もがみな、自分の世界の主人公でありながら、誰もがみな、他人の世界の脇役です。他人との間にけっして壁を築かないようにしたいものです。多くの他者の他者として存在するために。互いに自由であるために。

もちろん自分が達成できることは僅かです。しかし元来、世界の豊かさに比べれば、自分の存在など砂粒にすぎません。それを知るときの清々しさ、自由さ。それを味わうためにこそ、私たちは学ぶのではないでしょうか。

これからの時代、大きく激しく新しい学びの流行がみなさんを捉えるでしょう。松尾芭蕉は「不易流行」という言葉を唱えました。「不易」という不変の本質は、「流行」という新しい流れを追う姿にこそあるというのです。どこまでも自分の未知を知るためのものとしての学びを追求していってください。そしてそのためには、今の自分が身に付けたものを壊す勇気も必要です。世阿弥は「守破離」という言葉を唱えたと言います。守ってきたものを破り、さらに破る自分から離れてこそ、私たちは少し自由に舞うことができるのでしょう。