管理職が評価する企業ランキング(vol. 126)
責任増す一方、働きに見合わない報酬。「管理職離れ」を食い止めるヒントとは?
要旨:
- 「待遇面の満足度」スコアの平均は4点以上!職務に対する正当な報酬は重要なポイント
- 組織風土として浸透した行動指針。アマゾンとマイクロソフトのリーダーシップ
- アマゾン ウェブ サービス ジャパンの「Our Leadership Principles」
- 日本マイクロソフトの「Growth Mindset」「他者への貢献」
サラリーマンの77%が「管理職になりたくない」―。これは、昨年一般社員に対して行われた調査(※)で明らかになった結果です。終身雇用制度といった雇用慣行が限界を迎えるなか、一つの会社で定年まで勤め上げるキャリア設計は変わりつつあります。キャリアアップは必ずしも管理職になることとイコールではなくなりました。働き方の多様性が高まる中で、管理職が担う責任を負担に感じ、管理職への昇進を希望しない人も少なくないようです。
では、管理職から評価が高い企業にはどのような特徴があるのでしょうか。今回の調査レポートでは、管理職の社員に限定し、OpenWorkへ会社評価レポートを投稿する際「あなたはこの企業に就職・転職することを親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」という質問に0~10点で回答するネットプロモータースコア(NPS)を集計、ランキングを作成しました。管理職として働く社員が「自社をおすすめできる」と評価する企業を、社員クチコミと併せてみていきます。
(※)日本能率協会マネジメントセンター「管理職の実態に関するアンケート調査
「待遇面の満足度」スコアの平均は4点以上!
職務に対する正当な報酬は重要なポイント
一般的に、管理職昇進を希望しない背景として、「給与が割に合わない」といった声があります。これは、管理職になると残業手当がつかない企業も多く、責任が増えたり業務時間が伸びたりしても給与に反映されず、「タイム・パフォーマンス」(時間対効果)が悪いことへの不満です。
一方、今回管理職として働く社員が自社を「おすすめできる」と評価した企業からは、報酬や給与への納得が特徴として見られました。上位20社の「待遇面の満足度」スコアの平均は5点満点中4.08点と非常に高く、具体的な給与制度や賞与に関するクチコミからも満足度が高いことがわかります。
ランクイン企業の管理職が投稿した、待遇面に関するクチコミ
「基本給+インセンティブ+RSUの構成。インセンティブは基本給の54%が達成度によって支給される。マネージャーになると割合が67%になる。これに加えてRSU支給と、特定の契約や商品を売った場合のスポットでのインセンティブが支給される。(シニアアカウントマネージャー、男性、アマゾン ウェブ サービス ジャパン)」
「給与制度は十分に整っており、四半期ごとのパフォーマンスに応じて、年に一度(場合によっては上半期・下半期の二度)、昇給やStock Award、Incentiveボーナスが提供されます。(マネージャー、女性、日本マイクロソフト)」
「基本給はそれほど高くありません。残業代が結構な割合を占めます。ボーナスは業績連動ですが、業績が良い場合には多くの割合を占めます。ただ、業績連動の設定がマスメディアが隆盛だった時代のものであり、これから当面はボーナスに期待することはできないかと思います。業界的には苦しい局面ですが、それでもなお給与面では恵まれた会社だと思います。(シニアマネージャー、男性、電通)」
「総合職は新卒入社するとスタッフ職からスタートし、ほぼ同年代同時期に管理職(プロフェッショナル職)になれる。管理職になった段階で給与は月給、賞与は1.5倍くらいに上がる。賞与は年二回支給で、夏のボーナスは基本賞与に加えて業績連動ボーナス、個人の成績加算金が加算される。後者二つによるボーナスの個人差は大きい。(マネージャー、女性、三菱商事)」
「十分すぎるくらいもらえています。賞与は年2回査定により、またポストか否かによって金額に差が出ますが、以前よりは個人による差が少なくなったと思います。他の会社よりもボーナスの比率は高めかと。月給については年に1回査定により上がる人と上がらない人に分かれます。(下がる人はほぼいない)給与はポストかどうかは関係なく、資格等級によりベース金額が異なります。(部長、男性、野村不動産)」
「かなり高い方だと感じる。給与に文句を言っている社員をみたことはない。ベース給も高いが、インセンティブで同期や同じ役職の人でも大きく年収に差がつく印象。(リーダー、女性、クイック)」
組織風土として浸透した行動指針
アマゾンとマイクロソフトのリーダーシップ
1位と2位にランクインしたアマゾン ウェブ サービス ジャパンと日本マイクロソフト。どちらも世界的有名企業で、日本だけでも多くの従業員を抱える大企業です。両社のクチコミから見えた共通点は、組織に浸透した「行動指針」でした。コミュニケーションや課題解決において、役職に捉われず共通の視点でディスカッションができること、悩んだ時に立ち返れる指針があることは、管理職のみならず組織を運営するうえで大きな助けとなることがわかります。
両社の行動指針と社内への浸透がうかがえるクチコミを紹介します。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの「Our Leadership Principles」
アマゾングループが掲げる「Our Leadership Principles(OLP、リーダーシップ・プリンシプル)」は、「チームを持つマネージャーであるかどうかにかかわらず、全員がリーダーである」という考えに基づく16項目の行動指針で、採用においても重視されているようです。
クチコミからは、社内にOLPが浸透していることがうかがえ、役職や部門を越えてチームワークを発揮できる環境があることがわかります。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンの管理職が投稿した企業文化に関するクチコミ
「Amazon 共通の Leadership Principles に沿った考え方、行動が奨励されている。採用時にも Leadership Principles に沿った行動のエピソードを確認するので、社員個々の基本的な行動原則が揃っているのが特徴。Customer Obsession や Ownership といった行動原則を共有しているため、原理原則の部分で考え方が大きく異なることによるフリクションのようなことはほとんど起こらないし、何か問題があったときに Role や部門関係なく協力し合って問題解決に向かうことが自然にできている。(マネージャ、男性、アマゾン ウェブ サービス ジャパン)」
「OLPという行動規範や、Still Day 1というカルチャーが深く社員に浸透しておりモチベーションの高い社員が多い。組織を跨いだ活動も多く皆協力的で仕事は非常にやり易く、キャリアパスも多いため自身の都合で異動する(実現したいキャリアがある場合)ことも出来る。(営業部長、男性、アマゾン ウェブ サービス ジャパン)」
「Our Leadership Principles というアマゾングループ共通の理念をもとに事業推進計画の策定やアカウント戦略を考えている。この理念が比較的浸透しており、人材採用の局面でも適用されているため入社後の Gap も少なくなっている。(Account Manager、男性、アマゾン ウェブ サービス ジャパン)」
日本マイクロソフトの「Growth Mindset」「他者への貢献」
2014年にマイクロソフトのCEOに就任したサティア・ナデラ氏。マイクロソフト再興の立役者であるナデラ氏が行った文化変革がクチコミにも表れています。
失敗を恐れず常に学び続ける姿勢を持つことを意味する「Growth Mindset」や、他者の成功にどれだけ貢献できたかが評価につながるといった「他者への貢献」を挙げる社員が多く、チームを率いる上でもサポートする上でも指標となっていることが見てとれます。
日本マイクロソフトの管理職が投稿した企業文化に関するクチコミ
「本当に大きな企業なので、環境も働き方も組織やチームによって大きく異なりますが、特に印象的なのは会社全体で『他人の成果にいかにポジティブな影響を与えているのか』『他人の成果を使っていかにどうビルドアップしていったのか』がパフォーマンス評価のポイントになっている点です。それも相まって、『協力』が能力の一つとして重要視されています。本来個人プレイヤーとしての能力の高さを持っている方も多い上、(役割で求められている以上に)周りのサポートやコーチングが出来る方が多い気がします。(ビジネスマネージャー、女性、日本マイクロソフト)」
「根付いている文化としては、オープンでポジションに関係なく全てのメンバーが自由に意見を上げ議論のできるカルチャーがあり、とてもよいと思います。またGrowth Mindset という言葉がよく使われ、今の状況や自分の限界だと思っている世界に留まることをよしとせず、失敗をしてもしっかりと挑戦を続ける姿勢が重要視されます。その中での失敗はまったく咎められません。また部門の壁を越えて連携することでいかにインパクトを最大化できるかに軸を置いているため、様々なチームとコミュニケーションを取る機会が多く、さまざまな視点を知り合えることもよいと思います。(マーケティングマネージャー、女性、日本マイクロソフト)」
「CEOが変わってから社会や人全般に対する企業ミッションへの意識が高まり、従業員の士気も高い。また、IT業界全体に対して大きな影響力を持つことから高い視点と志を持った人材が多い。仕事へのモチベーションが高く優秀な社員が多いため、自分自身を成長させる環境としても非常に良いと思う。コンプライアンスに対してもしっかりと取り組んでおり、モラルも高い。社員に対してはトレーニングもまめに提供されており最新のスキルを磨くことができる。他の外資系も同様だと思うが、ビジネスは四半期単位でレビューが入り、結果を出し続けることが求められる。(部長、男性、日本マイクロソフト)」
対象データ
OpenWorkに2019年以降に投稿された、管理職の社員・元社員による会社評価レポート24,824件を集計。