名もなき仕事で思い出したこと
電車の広告に名もなき仕事についての記事が出ていた。職場でコピー用紙を補充する。ちらかった用紙をまとめる、ゴミを拾うなど。名も無き家事はラジオで特集されるくらい知られているが、私達の職場、地域、などにも名もなき仕事をしてくれている人がいる。今朝、大谷翔平先週が5151を達成したが、彼も球場のゴミ拾いなど名もなき仕事を普通にやる人だ。
フランスかどこかで、盲人のように白い杖とサングラスで道を歩いて、道を渡る時に、どのくらいの人が声をかけるか実験をしたところ、百人以上の通行人がいたなか、二人だけしか盲人を助けなかったという。二人とも、声をかけ、道を渡るのを誘導してあげていた。その二人は日本の若者だった。普通のことをしたように立ち去っていったという。
そこで、思い出したことがある。私は1980年代の私立大学医学部に入学したが、周りはボンボンばかり(私もボンボンだけどね)、最初の3年くらいは医学部には友だちも少なかった。
喫煙が許されていて講堂にはいつも吸い殻や、煙草の空き箱が転がっていた。私は、申し訳ないような気がして、帰り際、奴らをにらんで捨てたりしていた。
ついに奴らに怒りがでて「ここを掃除してくれる人がいるんだからさ、捨てるなよ」と言って空気が悪くなった。・・・・
その一ヶ月後、医学部学生科の壁に信じられないものが貼られていた。
私に怒られた学生がやったのか、そのことを見ていた学生が作ったのかわからない。
お掃除してくれいるおばさんの一日を写真をポスターにして紹介してくれていたのだ。
「いい奴がいるじゃないか」と、心が熱くなったことを思い出す。
もちろん学内掃除のおばさんは名のある仕事だが、金持ち医学生にとっては、「見えない存在」だったのだろう・・。私達には見えていないが、私達はいろんな人、いろんなものに助けられて、支えられている。
お掃除おばさんのポスターは、誰がつくったのかわからない。つくった学生が、名前を公表しないでほしいと言ってたようだ。
きっと作者は、東海大学医学部の希望の星である「良医」となり、いまもどこかで患者さんを診ているのに違いない。