板五米店へお越しの皆様へ
当店は築100年の古商家を、
地域共有資源と捉え、
次世代に残す活動を行っています。
次世代に残すといっても、
大それたことをやる訳でもなく、
先ずはどんなきっかけでも良いから、
身近な人が街の魅力を知る事を目的に。
建築物だけではなく、
当時の営みも消さぬ様、
米屋の名残も同時に残す為、
お結び屋として。
2019年冬に再生しました。
この建築物を通じて、
周辺地域を大切に想う人が増え、
結果的にこの場に限らず、
街固有の魅力が続く事を期待して。
リノベーションは飲食店としての利便性より
「現存の状態」に重きを置き改装しました。
よって、そのまま急な階段があり。
段差が多くあり。
沢山のご不便を理解頂きながら、
日々の板五米店が成り立っています。
お陰様で維持管理を続け、
もうすぐ五年が経ちます。
時間経過と共に近隣以外の方々にも、
利用して頂く機会が多くなりました。
本当に嬉しく感じます。
同時に沢山のご不満も頂き始めました。
毎週、お叱りのメールを受けます。
「階段をどうにかした方が良い、危ない」
「段差がありすぎる」
「暑い、寒い」
「子供椅子が無い」
「セルフオーダーが面倒」
目的が「築100年の建築物の維持保全」
その為に、先ず沢山の方々に知ってもらう。
その手段として、
誰もが出入りできるカフェを創りました。
他の商業施設に比べ、
断熱構造とは程遠く「暑いくて寒い」
二階層になるので人手の都合上、
セルフオーダーを設置したり。
お子様椅子が無いのも、
店舗の事情があります。
他にある"あたりまえ"はここには無く。
返答に困惑しながら返す作業が続きます。
もちろんご不満を頂くという事は、
サービス面でより精進していくべき点があり、
日々、自覚し試行錯誤しています。
反面、日々、メール対応する中で、
ふと思うことがあります。
サービスの質向上を追い続ける事が、
板五米店を、
未来に繋げる手段として正解なのか。
五年を経ての環境変化もあります。
商業サービスと文化建造物の保全管理を、
個人で並行して行うことの難しさを、
より感じるようになりました。
色々な責務を抱える中で、
御来店する皆様の期待とその乖離。
ここに私たちの提供したい価値が、
伝えきれていないと感じている現状です。
なので、
少しだけ。
今一度、
拙いながらにも、
発信を再開していこうと思います。
「そのものを楽しむ」
「そのものを面白がる」
万一意にそぐわないのならば、
そっと距離をとる。
こんな風にするのは、
昨今では難しいのでしょうか。
より良い機能価値を追い求め、
より良いものと比較し続けてしまうことで、
心がすり減ってしまう気がします。
それは板五米店での滞在以外でも。
始めてご来店される方へ。
改めてご案内します。
ここに、
過度な期待はしないでください。
期待を超えるサービスは、
今時点ではできないと思います。
設備に関しては今が限界です。
サービス、設備、機能。
これとは異なるもの。
目には観えない、
一連を感じて頂けないでしょうか。
自分の生まれ育った街を好きな者が、
この商店街の風情を少しでも繋げないかと、
自分にできる精一杯で、
試行錯誤して営んでいる店です。
現状、足りないところだらけです。
他と比較すればさらにです。
自分の暮らす働く地域を、
なんだか好きな人が緩やかに集う。
その共存空間を楽しむ。
そんな風に。
ひとやすみ程度に、
寄ってもらえると嬉しいです。
少しでも伝わるものがあれば幸いです。
板五米店-旅とお結び- 店主