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【2024秋特集③】既設自噴井戸を活用した井水熱空調~山梨県市川三郷町生涯学習センター

2024.09.24 06:22

今回紹介するのは、2020年(令和2年)1月に生涯学習館、体育館を主体として町民の文化及び交流の促進、体力増進を目的として建設された山梨県市川三郷町の「市川三郷町生涯学習センター」(通称:ifセンター:市川三郷町市川大門1437-1)です。敷地内に以前からあった自噴する井戸水を熱源として活用した空調システムなどを導入。省エネ化を実現している施設として注目されています。

◆既存の自噴井戸を熱源として利用◆

ifセンターが所在する市川三郷町は、2005年(平成17年)10月1日に西八代郡市川大門町・三珠町・六郷町が合併して誕生した自治体。合併前の旧市川大門町は豊富な地下水を利用した紙の町として製紙業が盛んな地域で、現在も和紙の生産地でもあります。

ifセンターは製紙工場の跡地を町が購入した場所に設けられ、敷地内には自噴井戸が3本ありましたが、当初はこの井戸水の利用はトイレ用水や雑用水として検討されていました。

この自噴井戸は合計すると毎分1,000リットルを優に超える豊富な水量があるため、施工に関わった事業者がトイレ用水以外の有効活用方法として、エネルギー利用を提案。昔から地下水が豊富な地域で井戸があったことや製紙工場で井戸水が使用されていたことは地元でよく知られており、井戸水を使用することについて地元や議会からの反対はなく、むしろ地元資源の活用という点で歓迎されたほか、環境省の補助事業にも採択され、設備導入費等の課題もクリアできたことから導入が決定しました。

Ifセンターの全体概要を見ると、施設は鉄筋コンクリート造二階建て一部鉄骨造。敷地面積は13,539.07㎡、床面積6,393.20㎡、建築面積4,354.68㎡で生涯学習館(研修室等)や町立図書館、体育館などで構成されています。

◆町立図書館の空調に利用◆

自噴井戸水利用システムは、町立図書館の室内空調(冷暖房)に利用されています。熱源である自噴井戸からの水を自然勾配で地下に設けた井水槽へ導き、この水を熱交換器に送水して冷暖房の熱源として利用。ヒートポンプは冷房能力67kW/暖房能力77.5kWとなっています。地下水槽には常に自噴水が流入するため水温はほぼ一定であるほか、井戸ポンプの動力が必要ないためシステムCOPが高いのも特徴です

◆熱利用後の水はトイレや散水などにカスケード利用◆

熱交換後の井水は貯水槽に貯めてトイレ用水や敷地内の樹木などへの散水用に利用するなど水資源のカスケード利用という点でも注目されます。また、各水槽からオーバーフローする水は水路に放流し下流域の農業利用に役立っている点もポイントと言えます。

総事業費は、約3,985万円(うち補助額2,074万円、補助率2/3)となっています。

◆温室効果ガス削減効果は約31.3t-CO2/年◆

導入効果を見ると、温室効果ガス削減効果は約31.3t-CO2/年となっており、導入前後のCO2削減率は86%となっています。

なお、室内機を設置した図書館の閲覧エリアにはガスヒートポンプも併設されています。これは総負荷を地中熱ヒートポンプだけで賄うとシステムに掛かる費用が嵩むため、補助的に導入しているものですが、実際に施設が稼働すると全負荷運転となる期間は極めて短く、通常はランニングコストの低い自噴井戸システムだけで運転され、ガスヒートポンプエアコンが運転するのは冬季の延べで2週間程度となっているようです。

地下水の熱利用では井戸の掘削費やポンプの設置などコストが割高になることが課題と言われていますが、既存の井戸を利用していることなどから初期コストを抑えることができている点もポイントです。

これは、既設の井戸がありプラスマイナス3℃前後の井戸水の温度変化が許容されうるケースで水質や水量等も十分であれば、初期費用を抑えつつ効率的なシステムの構築が期待できることを示していると言えそうです。

このシステムを提案した山梨県地中熱利用推進協議会では、「山梨県内でも地下水の保全のため井戸の設置に規制を設ける自治体が多い中で、既にある井戸を利用した省エネ策の一環として、会員のデータや知見を活かし井水の物理利用と併せた熱利用を提案し地域のエネルギーの課題解決の一助とすることを図って参りたいと考えます」と述べており、ifセンターの事例を柱に今後、既設井戸を利用した空調システムの普及、一層の省エネ化へ期待が集まります。

市川三郷町生涯学習センターホームページは以下URLを参照してください。

https://www.town.ichikawamisato.yamanashi.jp/20life/ifcenter/ 

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