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Excare dreamers project

10 社会福祉法人 京福会 看護職員 ぐりさん

2024.09.26 07:25

仕事に行こうと思うのに、なぜか涙が出てしまう…。
コロナをきっかけにメンタルヘルス不調に。


不安に襲われる日々を乗り越え、現在は仕事に復帰。
回復に至るまでの経緯や今の状態、周囲への感謝を聞かせてくれた。


20年以上看護師として働いていたが、親からの教えもあり、仕事を休むことはほとんど無かった。「休む」なんて考えすら頭に無い中で、生きてきた。


ある日をきっかけに不安が大きくなり、仕事に行こうと思うのに、涙が邪魔をする。


療養するための休養を経て仕事復帰をした今、センシティブな内容にも関わらず、同じようなことで悩んでいる方もいるかもしれないからと、全てを赤裸々に話してくれた。





‐‐初めてお会いした時のことをよく覚えています、偶然が重なり声をかけて下さったんですよね。今ぐりさんが働いている施設で、私が6年くらい前にケアマネをしていたんですけど。

 当時、お世話になり可愛がってもらった入居者様の話を他の職員さんとしていたら、たまたま横に居たぐりさんが、「私、孫です。」と声を掛けてくれて。



「そうでしたね。実は今の施設に異動するにあたり、おばあちゃんの話を職員さんから聞けるかもしれないと思っていました。残念ながらおばあちゃんは亡くなってしまいましたが、まさかあのような形でお話が聞けて、さらにおばあちゃんのことをよく覚えてくれていて。とても嬉しかったですね。」



‐‐私もお孫さんが京福会で働いているとは思っていなかったので、本当に驚きましたし、お会いできて嬉しかったです。ぐりさんは看護師として今の施設でお仕事をされていますが、ずっと高齢者施設で働いているのですか?」



「最初は病院でしたね。高校を卒業して看護学校へ行って、正看護師の資格を取りました。そして、病院で働き、約20年間在籍していました。

 その後、ご縁があって京福会で働くことになったんです。」



‐‐約20年と長い間病院でお仕事されていたんですね。病院から高齢者施設へと働く環境を変えてみて、どうでしたか?



「環境を変えた時がコロナ禍で、半年くらい働いた時に施設内でクラスターが発生してしまったんです。

 その時があまりにも忙しくて。みんなにとって初めての経験だから、精神的にも肉体的にも余裕がない状況でした。

 新型コロナウイルスに感染した入居者様の状態が良くなくて、救急搬送することになったんですけど、搬送前に急変してしまい、受入先の病院も見つからなくて。

 救急車の中で心臓マッサージをしたり、救急隊の方も必死に受入先を探したり。私も急性期病院に長く勤めていましたが、経験したことがないくらい緊迫した状況でした。

 実はその経験をきっかけに不安が大きくなってしまい、仕事に行けなくなってしまったんです。」



‐‐大変なご経験でしたね。



「仕事に行こうと思うのに、なぜか涙が出てしまうんです。当時は本当にその原因が自分では分からなくて。

 親の教えもあって、病院に勤務していた時も私はほとんど休んだことはありませんでした。だから仕事に行こうと思うのに、涙が邪魔をする。夫が心配してくれて職場まで送ってくれたんですけど、車の中で涙が止まらなくて。

 それでも、自分は大丈夫って思っていました。人が少ないから迷惑は掛けられないし、職場に行けば気が張ってスイッチは入り、頑張れていました。

 でも、夫が心配して表情がいつもと違うよって言ってくれて。夫にすすめられて病院へ行ったら、先生からは仕事を休もうかと言われました。

 その時に、私はいつもと違かったんだなって実感しましたね。」



‐‐どれくらいお休みをされたのですか?



「まずは3ヵ月休みましょうと言われました。3ヵ月休んで、さあ復帰しようと思ったら、気持ち的には良くなっていると感じていたものの、こんなに長く休んだことがなかったし、あの時のことも思い出してしまって、復帰することが怖くなってしまいました。

 まわりにどう思われているんだろうとか、とにかく後ろ向きに物事を考えてしまい、それが酷くなってしまって。

 先生からももう少し休んだ方がいいと言われて、さらに3ヵ月、結局半年くらいお休みさせてもらいました。

 そのタイミングで在籍していた施設の施設長と面談をさせてもらい、働く環境を変えた方がいいかなと言ってもらえて、常務と面談をすることになりました。常務は今働いている施設の施設長でもあるのですが、私の話を真摯に聞いて下さったんです。

 当時の私は人に対して何かを話そうと思うと、かなりの精神力を使っていたように思います。そんな中で常務は私の不安や気持ちを汲み取って、共感してくれて。

 私って話し方が回りくどくて長くなってしまうんですけど、嫌な顔をせずに親身に聞いてくれました。

 そういったことが安心となり、復職に対して前向きに考えられるようになりました。」

「そして、今の職場で少しずつ復帰することになり、常務は毎月面談をすることも提案してくださいました。初めての環境で、人間関係もゼロからで、別な不安もありましたが、面談の中でとにかく話を聞いてくださり、助言もしてくださり、少しずつ不安が解消されて、前を向けるようになりました。」



‐‐その中で、今に繋がるきっかけみたいなものはあったのでしょうか?



「看護業務の中で、その日の責任番を任せてもらえるようになったんですけど、始めた頃はなかなか思うようにできなくて不安で。どうしたら解決できるのかを常務との面談の中で相談しました。

 そしたら、些細なことでもいいから先輩看護師に相談したり聞いたりすれば、そこでひとつの不安が解消され、次のことに動けるようになるって言ってもらえたんです。

 とてもシンプルなことなんですけど、当時の私はそれさえも不安でできていなかったんだと思います。そっかそうだよねって、すっと心の中の靄が取れたような感覚でした。

 そこからは不安や悩みを溜め込むのではなく、その場で先輩たちに聞いたり、介護職員さんに聞いたりして、ひとつひとつ解消しながら仕事ができるようになりました。そして、不安が解消されたことで、自分でタイムスケジュールを組んだりと、前向きに自主的に次の行動を起こせるようになりました。前に進めていると実感できましたね。それにまわりとの連携が良くなり、関係性も良くなったように感じました。

 その経験から、何か壁にぶつかった時には、面談でこういう話をしてくれていたなと思い出し、それを自分の次の言動に繋げることができていました。

 常務から言って頂けた言葉の中で、今も思い出して自分の励みにしている言葉あります。


 “ぐりさんが不安になるほど、仕事ができていないとも思わないし、不安に感じる必要がないくらい職員との関係も良好に築けているから大丈夫ですよ”


 という言葉です。

 その言葉をときどき思い出すようにし、安心と自信に繋げています。」



「あとは看護部の仲間のサポートが本当に大きかったです。子育てもあったから当時はいっぱいいっぱいだったんですけど、子育てに配慮して勤務も無理のない形に調整してくださいました。そこで余裕が生まれたのは大きかったですね。

 業務に関しても、無理ない程度にやってくれたらいいよっていつも声を掛けてくださり、カバーしてくれていました。分からないことや実際にやってみたこと、相談したいこと、不安なことはみんなに共有してねって言ってくださり、それを看護部のみんなが分かっていたら、現状を知れて次の指導に繋げられるからって言ってくださいました。

 実は看護部の仲間がよく声をかけてくれた言葉で、心が救われた言葉もあるんです。


 “頑張り過ぎないでね。”


 という一言です。

 みんないつも気にかけてくれて、こう言ってくれていました。この言葉が魔法のように効きましたね。肩の荷がどこかへ飛んでいくような感覚で、とってもラクになれました。本当に感謝しかないです。

 振り返ってみると、施設の職員さんは私のことを病人のように扱うのではなく、ひとりの看護師として見てくれていたように思います。皆さんが温かくサポートをしてくれて、それが不安の解消に繋がり、安心して仕事ができていました。

 最近は常務との面談で、困っていることや悩んでいることはありますかと聞かれても、考えないと出てこないです。それくらい不安や悩みは減りました。」



‐‐常務や仲間からの言葉とサポートもあり、ぐりさんの不安が減って、仕事がしやすくなったのですね。ぐりさんが自分で色々考えて、アクションを起こしたことも大きかったのではないかと思います。

 色々と話しにくいこともお聞かせいただき、ありがとうございました。

 今回、このようなお話を聞かせていただきましたが、この内容をインタビュー記事にしてもいいのでしょうか…。



「当時のことを思い出して話していたら、もしかしたら同じようなことで悩んでいる方もいるのではないかと思いました。そういった方に届けば嬉しいなと思うので、記事にしていただいて大丈夫です。

 休むのってとても勇気がいるんです。

 心の病気は風邪や怪我とは違って、どれくらい自分の具合が悪いのか、心が痛んでいるのかって判断ができないし、見えないんです。

 休むときにちゃんと休む勇気も必要だなと今回感じました。そこで無理をして復職してもまた壊れてしまう。私はまわりの理解があってしっかり休むことができたし、まわりに支えてもらって復帰ができました。

 休んでいるときも手続きをするのに無理に施設に来るようには言われなかったし、施設に行かなくても済むように事務員さんが手紙を送ってくれ、何か分からないことがあれば連絡くださいと優しい言葉も添えてくれていました。

 復職するまで、そして復職した後も手厚いサポートがあって今があります。今では貴重な経験だったなと思えるようにまでなっています。

 当時は不安でいっぱいでしたが、今は上司や同僚への感謝でいっぱいです。」



‐‐貴重なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。


2024.9.26