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タナカフクロウの巣

今週の少女

2019.01.10 11:00




今週の少女。


なんだこのタイトル。

どうもタナカフクロウです。



今週、「少女」を見た。








俺さ。ずっとソコにいたの。15分ぐらい。



そしたらさ。視界に蚊ではない何かがずっとうろちょろしててさ。気になって見たのよ。


少女が動いてた。


たぶん、小学校2~3年ぐらいの子。

まだ10年しか生きてないですよみたいな顔をして、いろんなところをキョロキョロ見てた。興味が溢れてるんだろうな。


壁に書いてる文字を読んでは、近くにあったゴミ箱を覗き、天井を見つめたかと思えば、多目的トイレの方に一瞬消えて帰ってくる。さっき読んでた文字を指でなぞって書く。

…そして、ジーっと俺をみつめている。



……しまった!見すぎた!



一瞬で我に返った。自分がめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。俺は成人男性だ。夕方になりゃ髭も出てくる。ヤバい。これは完全に不審者&変質者じゃん。ブザーをガンガンに鳴らされるヤツじゃん。少女ガン見してる場合かよ俺。ヤバいヤバい。


すぐに視線を逸らして"経済のこと考えてますよ"の顔をした。初めてしたけど。


すると、近くのイスにその少女の家族っぽい人達が座っているのが見えた。姉母妹、姉母の5人。たぶん、あのどっちかが家族だろう。全員があの少女のことなんか気にしてない。いつもあんな感じだからやらせとけ、私たちは世間話とスマホに夢中なの。みたいな雰囲気。




もう一度、あの少女が気になってしまった。



……あれ?まだ、こっち見てるじゃん。

時止まったの?え?あ、動いた。めちゃくちゃニヤニヤしてるぞ。俺見て笑ってるわ。


あ、これアレか。

「さっきまでジロジロ見てた成人男性が、もう一回こっち向くまで見続けるゲーム」だ。



仲間意識か同族嫌悪のどっちかが働いたから一瞬でわかった。あの少女、俺とめちゃくちゃ近い。マジで申し訳ないけど、俺だ。



とりあえず俺もニコニコ笑って返してみた。

倍ニコニコして返してきた。


もう、完全に二人だけの世界が出来た。


こういうときの距離の縮まり方はエグい。

そして、お互い理解してるあの感じ。


すると、少女のスイッチが完全にONになった。というか、エグいスイッチの入れ方をカマしてきた。



さっきの行動すべてに俺を足してきたのだ。


壁の文字を見る。からの俺を見る。微笑む。

近くのゴミ箱を覗く。俺見る。微笑む。

天井を眺める。俺見る。微笑む。

トイレへ進んで戻る。俺見る。微笑む。

壁の文字をなぞる。俺見る。微笑む。



もうずっと笑ってしまった。

めちゃくちゃニコニコしてしまった。

すごい好きになってしまった。

すごい可愛い。

少女と家族のOKが出たら持って帰りてぇ。



んなことを思ってると、

少女は「わらかしたったでぇ。へへへ。」と満足気な顔をしてた。また近さを感じた。


また、トイレの方へ隠れて戻ってくるアレをやるために俺と視線が合ったまま少女は消えていった。







ここでまぁまぁなピンチが発生した。

家族っぽい人達が席を立って移動しはじめたのだ。


「あれ?あの子どこいったん?」

「もぉ!またあっちいってんちゃうん?」

「あっち、おるやろ?」


母っぽい人が大音量の関西弁を響かせながら、向こうの方に歩いていってしまった。


ちげぇから!!あの子トイレだから!!

あの子に遊んでもらってる最中!!

ヤバイヤバイ!迷子になるよ!!


と、めちゃくちゃ焦った。


そして、運の悪いことに少女はトイレから出てこない。「さっきより長めにタメて、"もう出てこないんじゃないか?"と、思わせてから出てくるヤツ。」の最中だからだ。


実際そうだったのかはわからない。

でも、俺だったらそうするから多分そう。


ちげぇよ!はやく出てこいよ!

置いてかれるぞ!俺のことはいいから!

事情が変わったんだよ!出てこい!


めちゃくちゃ焦りながら思ったが、

俺はずっと同じ位置にいた。



なんかよくわからないけど

この遊びを壊したくなかった。


もう一度言うが、俺は成人男性だ。

本気を出せば、トイレの方に駆け込んでいって「お母さん、あっちいったよ?」と言う or 家族の方に走っていって「お子さんあちらで遊んでましたよ?」と声をかけて、すれ違いを防げる。




でも、遊びのルールは決まってる。


俺は動かずにじっとそこにいる。

彼女は自由に動く。

俺が笑うかどうかだけを確認し続ける。

お互い一切しゃべらない。

近づかずに、一定の距離を保つ。

面白かったら二人ともニコニコする。


これはお互いの共通認識としてあるのだ。



どっちが決めたってわけでもないんだけど、こっちからルールを破りたくない。



迷った。これはピンチだ。

どうしよう。



すると、少女が満面の笑みを浮かべながらトイレから出てきた。



俺は笑っていなかった。


一瞬だけ「え?」という悲しい顔をさせてしまった。


少女も我に返った。


それまで気にしてなかったイスの方向を見て「置いてかれた!」という顔をしたあと、一瞬こっちを見てから向こうの方へ走っていってしまった。


かなしい。


マジで失恋した3日後みたいなテンションになった。どうすればよかったんだ。


かなしい。あっけねぇな。まじで。



あーあ。



俺もその場所から動く時間になった。

気のせいではなくダルい。しんど。


あーあ。そんな15分間の話。







…でも、この話には5秒だけ続きがある。



俺は用事を終えて隣のフロアに向かって歩いていた。もうすぐ扉の外だ~。ってところで、見覚えのある後ろ姿を発見した。



あの少女だ!



扉と扉のすぐ近くにいる少女の方へ歩きながら色んな事を考えた。


さっきの子じゃん!近くで見ると、ちっちぇな!振り向くかな?気づくまで立ち止まってみる?完全に不審者だよ!家族は?はぐれてねぇか?あ、家族いるな?見つかってよかった!わ、どうしよ!声とかはかけねぇけど、ばいばい~ってしたいな!やめとこ!でも気づいてくれ!なんか変なところで遊び終わったから寂しいじゃん!ほら!気づけ!ばいばいしよう!


と、歩きながらめちゃくちゃいろんなことを考えていた。



ついに扉のところまで来た。



このまま、前に進めば扉の向こう。

横に進めば少女のいる場所。



足は前に進めた。


でも、どうしても気になったので視線だけ横に向けてみた。


…あの少女だ!

 


後ろ姿しか見えてなかったが、よーく見てみると何かしているようだ。見た。


「取りやすいように設置されてるチラシを上に引っ張っては、落として、引っ張っては、落として、めちゃくちゃ高速でチラシをストンストンさせる遊び」の最中だった。



めっちゃストンストンしてた。


もう違う遊びを見つけてた。



俺は一人でニヤニヤしながら歩いた。




そんな話。おしまい。



なんとなく、ずっと心にあったけどなんのジャンルの思い出かわからないまま忘れるにはもったいないので、ココに放ちました。


また会えないかなぁ。


おわり。