Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

タテイト珈琲店

ゲルマニウムな一日

2019.01.10 13:21

花村萬月、ゲルマニウムの夜。

冷気が胸に刺し込むような一日に。


これまで読んだ文庫本の中で、このブックカバーが一番好きです。

タイトルから作家名、贅肉を落とし切った配色、全てが一つの作品のような美しさを僕は感じます。



閉ざされた修道院で繰り返される、生々しい性と暴力の描写。

そこから生まれる、文章への嫌悪感と爽快感。

「怖いもの見たさ」に似ています。


花村萬月の作品は、この"ゲルマニウムの夜"に端を発する「王国記シリーズ」しか読んだことがありません。

そして、王国記シリーズも、序章に過ぎないこの"ゲルマニウムの夜"以外は面白いと思ったことがありません。


オーケストラではよく、組曲の中の"序曲"だけを抜き出して演奏することがあります。

その感覚と同じなのかもしれません。

もっとも、それは組曲という作品への冒涜だと思いますが。



寒さが募り、少々物憂げな時間が増えました。

何か負の感情のようなものを抱くと、それを振り切るのではなく、もう一歩深い感情に触れたくなります。

悲しいときは、その悲しさよりもう少し悲しい音楽を聴きたい。悲しい物語を読みたい。

行き着くところは、「自分が世界で一番不幸だと思いたい」「悲劇の主人公になりたい」「浸りたい」という欲求です。


修道院という、僕が経験したことのない閉ざされた世界を旅する、閉塞感の塊のような"ゲルマニウムの夜"。

少し次元の違う閉塞感を味わえます。笑ってしまうくらい。

日常に身を置きながら、経験できない世界に引き摺り込んでくれるというのは、文学の力に他ならないと思います。


是非、こっくりとしたコーヒーとご一緒にどうぞ。