一つ終われば、一つはじまる。
8月に祖父が亡くなり、今日四十九日の法要が終わりました。
ZINE「とまれみよ vol.1」は祖父の散歩と暮らしの記録をまとめたもので、いろんな方に手にして頂き、さまざまな感想や気持ちも寄せて貰いました。
頂いた感想を祖父に伝えるととても嬉しそうにしていたのを覚えています。ありがとうございました。
「とまれみよvol.1」は今後もぼちぼち製本して届けていきたいと思いますので引き続きどうぞよろしくお願いします。
vol.1に載せていない話もたくさんあって、祖父には今後もそれらを発表することへの了承を貰っていたのでこちらも少しずつどこかで発表できたらいいなと思っています。
私は、他者の今や昔の生活について話を聞くことを楽しみとして生きていて、いろいろな人生の一編を覗かせて貰っています。その中でも一番話を聞かせてもらっているのが祖父母たちです。本格的に話を聞きはじめた10年前には4人の祖父母が付き合ってくれていましたが、話を聞くことができるのは母方の祖母1人になってしまいました。
私たちは生まれたそのときからいつか死ぬことが決まっているので仕方の無いことというかどうしようもないことなのですが、やはり寂しいものですよね。
運よく、私は多くの時間を祖父と過ごすことができたと思っています。話を聞いたりじっと見つめたりする時間も充分に貰いました。
それでもお通夜の日の夜、布団に伏せって一人で「嫌だー、嫌すぎる-」とジタバタしました。もっと感傷的な言葉や感情がでてくるのかと思っていたのですけれど、涙が出ることもなくただただ嫌で駄々をこねるようにジタバタするばかり。
私と祖父の関係を知っている人にはとても心配されそうなのですが、元気にしています。悲しみの淵でぼんやりしているというよりは、悲しみの詰まった壺の周りで地団駄踏みならしている私を想像してください。美しくもなんともない様相で偲み、少しずつ受け入れています。
晩年の祖父は目の病気を患い、車の運転やそれまで趣味としていたいくつかのものを手放さざるを得なかったのですが、散歩には毎日せっせと出掛けていました。私が祖父の散歩についていきたいと話したとき、「じいちゃんの散歩にゃ、行事が多いど」とにっこりしたのが印象に残っています。
狭まった視界を補うように足腰や耳の感覚で道の具合や周りの様子を掴み、散歩中にはたくさんの「行事」をこなすじいちゃんについていきながらいろいろな話を聞きました。
「行事」はルリの声を聴くために立ち止まる、生まれ育った山を眺めるために座る、手を洗って大好きな楠木に抱きつく、山の神(大山祇神)の古墳の前で拝む、友人の家のある方向を眺める、飛行機の音が聞こえたら狭まった視界で見えるかどうか試す、などなど。
こまめにとる休憩は必ず33秒。長嶋茂雄が大好きなので何かにつけて3か33を選びます。
こだわりが強く、ストイックで、声の大きな愉しい祖父でした。じいちゃん、私にとっては最高に面白い人だったよ。
祖父の話を聞くことも散歩について行くことも病院につきそうこともできなくなったので、ぽっかりと時間が生まれました。この時間をどう使おうか。しばらく考えたんですが、様々な人の「聞き書き(話し手の言葉を録音し、一字一句すべてを書き起こして、ひとつの文章にまとめる手法です。環境省_山海ネットより)」をまとめた本をつくってみようと思います。
「とまれみよ」シリーズに綴っているような誰かの生活の一編を覗くような文章を募ってまとめた本をつくってみたいです。
祖父母や周りの人たちに聞いた話をまとめたZINEや文章を発表すると、その度にいくつかの『私もやりたい』とか『私もやりたかった』という声が届きます。
家族とか友人とか知人とか、とにかく自分の興味のある人の話を聞いてみたい人が結構いるんだなということは認識していて、私なりの方法を公開したり「やってみたらいいと思います!」と前のめりに勧めてみたりしていたのですが、実行するにはもっと口実が必要なんじゃないかと思えてきました。
私がこれからつくりはじめる本(最終的にはZINEになるのか雑誌になるのかわかりませんが)への掲載がその口実の一つになったらいいな、と思っています。もちろん、皆さんが公開したいわけでは無いと思うのでその辺りは慎重に選びつつ、適当な口実やきっかけとして使って貰えたら嬉しいです。
私も知りたかった人や事を逃してしまった経験はたくさんあって、その度にベコベコに凹んできたので、知ることができなかったこと、聞くことができなかったことの苦しさはわかる部分もあります。祖父に関してもまだまだ聞きたいことがありました。どこまでいっても尽きない欲求なのかもしれません。
これからつくる本について、独り言のようにざっくりと話したときに「いいじゃん!」と背中を押してくれた友人たちに存分に甘えつつ、興味のある方々に参加したいと思って貰えるような愉しげなものをつくっていきたいと思います。
まだ決まってないことばかりなので、他の人たちと言葉を交わしたいとも思っています。一人じゃできないことですからね。
最近お願いばかりで恐縮ですが、私とどこかで出会うことがあればお付き合い頂けると嬉しいです。
個人的に、秋はコミュニケーションの季節なので気軽に外へ出て行こうと思います。出会い頭でガツンといくようなコミュニケーションにも期待。
一つ終われば、一つはじまる。何事も一つずつですね。
じいちゃんのことを気にかけてくださった皆さんへ改めて感謝します。
良い秋を◎