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翁に問ふプルトニウムは花なるやと

2024.09.29 05:14

https://kigosai.sub.jp/001/archives/3484 【烏瓜(からすうり)晩秋】より

karasuuri【子季語】 王瓜、王章

【解説】

ウリ科の多年草。山野に自生する蔓草。夏に白いレースのような 花を咲かせ秋に実をつける。実は卵形で、縞のある緑色から熟し て赤や黄に色づく。

【科学的見解】

カラスウリは、ウリ科のつる性多年草で、本州東北以南から沖縄までの山野に普通に生育している。若い果実は縞模様となるが、成熟すると朱色から紅色の鮮やかな実となる。種子は、小槌または蟷螂の頭のような形をしている。また、冬になると根が塊状になるところも特徴の一つで、果実とともに生薬として利用されてきた。(藤吉正明記)

【例句】

竹藪に人音しけり烏瓜  惟然「惟然坊句集」

まだき冬をもとつ葉もなしからす瓜  蕪村「夜半叟句集」

くれなゐもかくてはさびし烏瓜  蓼太「蓼太句集初編」

溝川や水に引かるる烏瓜   一茶「文政九年句帖

行く秋のふらさがりけり烏瓜   正岡子規「季語別子規俳句集」

夕日して垣に照合ふ烏瓜    村上鬼城「鬼城句集」

枯れきつて中の虚ろや烏瓜    長谷川櫂「果実」


https://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/guide/outline/oike02/august/ 【薬草園歳時記(6)烏瓜(からすうり) 】より

 烏瓜(からすうり)(実)は晩秋の季語であり、王瓜、王章などの季語もある。

 烏瓜の花が開花する様子を観察するのが好きである。夕方、17時頃、つぼみがある。18時頃、少し開く。18時半、もこもこした感じに膨れる。18時45分、拡がってくる。19時、もじゃもじゃになる。19時50分、開花である。翌朝には花はしぼんでいる。

 4月から6月ごろ、塊根から発芽するか、あるいは実生する。花期は夏で、8月ごろの日没後から開花するのがおもしろくて観察したくなる。

 雄花の花芽は、1か所から複数つく。数日の間、連続して開花するのが楽しい。雌花の花芽は、ほとんど単独でつく。花弁は白色がほとんどである。普通は5弁で、たまに4弁や6弁のものもある。後部に反り返り、縁が白く紐状になって、まるでレース編みのハンカチのように伸びる。直径10cmにもなると見事である。翌朝、日の出前に花は萎む。

 烏瓜は、同じ時期に咲くワスレグサ(ススキノキ)科のユウスゲなどと並び、夏の夕方から翌日の午前中まで開花する花の代表として紹介されることが多い。しかし、ユウスゲが曇りの日や午後に、気温が下がって早い時から咲き始めることがあるのに対し、烏瓜は天候による気温や光量の変化に影響を受けず、暗くなってから開花する。翌朝には明るくなって細かく裂けた花弁を丸め込んでしぼみ、雄花はその日の日中に萼筒(ガクトウ)の基部から脱落する。雌花の萼筒は脱落せず、子房についたまま枯れ残って俵型の果実が実る。

 花が目立つのには理由がある。烏瓜の場合には、受粉のため夜行性の蛾を引き寄せるためであろう。大型の雀蛾を呼ぶ。花筒が長く、長い口吻(口吻)を持った蛾でないと、花の奥の蜜に届かない。

 雌の株にのみ果実ができる。果実は直径5ないし7cmの卵型である。楕円形や丸いものなどがある。縦に縞模様のある緑色で、10月以後に熟して、オレンジ色や朱色になる。蔓が枯れると実のみがぶら下がっている。中には蟷螂(かまきり)の頭に似た黒褐色の種子が入っている。また、種子の形から、打ち出の小槌に喩えられ、財布に入れて携帯すると縁起がいいとされる。

 人間の食用には適さないが、鳥が果肉を摂食し、種子を飲み込んで運ぶ。特にカラスの好物という観察例はないという。植物図鑑には「樹上に長く果実が赤く残るのをカラスが残したのであろうとみたてたか」とある。同じウリ科のスズメウリよりカラスウリの果実の方が大きいので大小を比較するためにカラスウリと名付けたのだろうとも推測できる。

 烏瓜の原産地は、中国と日本で、日本の本州、四国、九州に自生している。草木にからみついて伸びる。葉はハート型で、表面が毛で覆われている。雌雄異株であり、一つの株には、雄か雌か、どちらかが付く。

手紙を意味する玉章(たまずさ)の別名を持っている。ツチウリ、キツネノマクラ、ヤマウリともいう。

暮れかけて遠嶺くつきり烏瓜   加藤秋邨

武家屋敷から電線へ烏瓜   飴山 實

殉教の碑に垂れさがり烏瓜   有馬朗人

 中国では医薬原料として活用され、果実、種子、塊根ともに生薬として利用されている。

 日本の漢方薬では烏瓜と同属の黄烏瓜(キカラスウリ)の根を止渇、潤肺を目的に使う。生薬名を「栝楼根」(カロコン)といい、日本薬局方に収載される生薬である。

 根から採った澱粉は「天瓜粉」「天花粉」(テンカフン)といい、現在のベビーパウダーの役割として、古くから汗疹を予防するために使われてきた。

 民間療法では、根を通経、利尿剤に、種子を鎮咳剤にも用いる。若い実は漬物にする。根を煎じて、ぜんそく薬にする。果汁を手足などのひびに塗ったりする民間療法が、長野県阿智、喬木村などに残っている。インテリアなどの用途に栽培もされる。烏瓜の雌雄両株を出荷する農園もある。

 烏瓜の花言葉は、「誠実」、「よき便り」、「男ぎらい」である。夜を待つ特徴が「誠実」という花言葉の由来だという。日の出前に太陽をさけるようにしぼむことが男ぎらいの由来だという。また、よき便りという花言葉は、種子の形が由来で、結び文に似ているとされている。別名の玉章(たまづさ)の由来である。

急行の止まらぬ駅の烏瓜   和夫

伊豆石の塀をはみ出し烏瓜

 このエッセイについて、薬学部附属薬草園の専門員、山本羊一さんに多くの貴重なご意見をいただいた。記して謝意を表する。


https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/interviews/20240130-OYT8T50088/ 【小澤實さんが句集「澤」刊行…自然と向き合い、自然の中で詠む】より

 俳人で読売俳壇選者の 小澤實おざわみのる さん(67)=写真=が句集『 澤さわ 』(KADOKAWA)を刊行した。生まれ育った信州の風景や、松尾芭蕉ゆかりの地を訪れた句など、約450句を収めた。「自然と向き合って、自然の中に入って詠んでいくことが自分にとって大きなテーマだった」と語る。

 18年ぶりとなる句集は、2000年に創刊した俳句雑誌「澤」を題名に据えた。この漢字には生まれ育った信州に広がる青々とした風景への思いが込められているという。幼い頃は小学校教員だった父の仕事の都合で長野県内を転々とし、田植えや稲刈りなどを見て育った。「山の中に入って、薬草採りをしたこともあったんですよ」と笑う。

 あとがきには、同誌創刊号に記した言葉を引用した。そこには俳句に向き合ってきた姿勢が示されている。

 <「澤」はしぶきを上げつつ天から地へ山中を流れ下る 清冽せいれつ な一筋の流れである。それはそのまま清新な俳句の比喩となろう>

 この言葉に呼応するように、山々の風景をじっくり見つめ、詠んだ句も多く収めた。

 <駒ケ岳垂直の澤雪来たる>

 <青嵐われら富士への斜面にあり>

 「仲間の支えがあったからこそ、20年以上続けることができた。彼らへの感謝も込めた」

 「澤」創刊の頃から、芭蕉という大きな存在に迫ってきた人でもある。「 笈おい の 小文こぶみ 」や「おくのほそ道」などに書かれたゆかりの地に足を運び、芭蕉に思いをはせた。21年に刊行した『芭蕉の風景』では、先達の足取りを丹念に解説しつつ、自身が吟じた句を記した。

 訪れた場所は、東日本大震災で甚大な被害を受けたみちのくも多く含まれていた。

 <翁に問ふプルトニウムは花なるやと>

 「全てのものに美を見いだすことが芭蕉の俳句の精神であると考えてきた。ではプルトニウムのような何万年も変化しないものも、美というのかという疑問があった」と語る。

 1月1日に能登半島地震が発生し、東日本大震災の記憶がよみがえったという。度重なる天災を前に、俳人は何を思うのか。

 「あまりにも無力だが、それでも句を詠むことによって大地の平穏を祈り続けるしかない。それが俳人である私の役目だと思っている」

(文化部 池田創)


https://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/fms/nuclear_commentary 【核兵器/核物質の解説】より

(1) 原子爆弾と水素爆弾

近代的な核弾頭の構造:クリックすると拡大されます

 核爆発装置には、最初に開発された核分裂反応による原子爆弾(atomic bomb)、その後の核融合反応を用いた水素爆弾(hydrogen bomb)(熱核爆弾[thermonuclear bomb]とも呼ぶ)の二つがある。原子爆弾の爆発力でもTNT火薬換算でキロトン(kT)、すなわち化学反応による爆弾(~kg)の100万倍の爆発力であり、水素爆弾になるとさらにその1000倍のメガトン(MT)の規模とすることが可能である。

 図は、典型的な近代核兵器の構造の概念図である。核融合反応を起こすために必要なエネルギーを「トリガー」(一次爆発装置)と呼ばれる原爆で発生させ、二次爆発装置として核融合装置が搭載されている。この図は米国の大陸間弾道ミサイルに搭載されているW-87型核弾頭のデザインとされており、爆発力は300キロトン程度と推定されている。この図にあるように、近代核兵器には、通常高濃縮ウランとプルトニウムの両方が使われている。核融合装置の部分には核融合反応に必要な重水素化リチウム、原爆の部分には反射材のベリリウム、中性子発生装置等がある。

(出所 Frank von Hippel, et.al “Unmaking the Bomb,” MIT Press, 2014, p. 40)

(2) ウランとプルトニウム

 核兵器に必要不可欠な原材料が分裂性核物質(fissile material)である。現在核兵器にも民生利用にも用いられている核物質は二つ、すなわち、ウランとプルトニウムである。

 ウランは天然放射性元素の一つであり、幾つかの同位体(陽子数は同じで中性子数が異なる原子核)が存在する。天然ウランは、核分裂がおきにくいウラン238が99.3%をしめており、核分裂性のウラン235はわずか0.7%しか占めていない。そこで、核分裂反応に寄与する同位体の濃度を高める同位体分離作業を「ウラン濃縮」という。通常の核兵器で使用されるのは濃縮度90%以上とされているが、20%以上になると核兵器転用が可能とされており、これらを「高濃縮ウラン(highly enriched uranium: HEU)」と呼び、一方最も普及している原子炉(軽水炉)で用いられている燃料は、3~5%程度に濃縮したものであり、そのウランを「低濃縮ウラン(low enriched uranium: LEU)」と呼ぶ。

 プルトニウムは、天然には存在しない人工放射性元素であり、原子炉内でのウランの中性子照射等によって生成される。現在使用されている軽水炉の使用済み燃料には重量で約1%のプルトニウムが含まれている。プルトニウムは使用済み燃料から再処理によって回収することができる。

 濃縮度20%以上のHEUとプルトニウム(Pu)は、直接兵器に利用可能であるので、「兵器利用可能物質(Weapons Usable Material: WUM)」または「機微な核物質(sensitive material)」と呼ばれ、特別の防護・管理体制が必要である。IAEA(国際原子力機関)はウラン235が25キログラム、あるいはプルトニウムが8キログラムあれば核爆発装置が作成可能と考えている。

 最初の原子爆弾である広島原爆には64キログラムの高濃縮ウランが、長崎原爆には6キログラムのプルトニウムが含まれていたと推定される。本データベースの「核分裂性物質ポスター」ではこの数値を用いて、保有する核分裂性物質の量を相当する原爆の個数に換算している。

(出所 Frank von Hippel, et.al “Unmaking the Bomb,” MIT Press, 2014, p. 36~38)