【幸せのためのヒントFile40:自分に素直になるということ 〜chaabee主宰・藤田ミミさんの経験から〜】
『月刊ケアマネジメント』(環境新聞社)で連載している「4つの視点から考える 幸せのためのヒント」。
10月号では、chaabee (チャービー)という、ちょっとマニアックなライブや展示などを催す場を切り盛りする、藤田ミミさんにお話を伺いました。
暮らしや仕事のなかで、いま自分が置かれている場所に“縛られている”と感じたとき。それはもしかしたら、自分で自分を縛っているのかも?
ミミさんの話は、そんなふうに目線を変えてみることが大事だと教えてくれます。
chaabeeとは、ヒンディー語で「鍵」という意味なのだそう。
「私のなかでは、目の前に扉があるイメージなんです。そして、その扉は外側ではなく内側から鍵がかかっていて。で、その扉を開けるでしょ? すると、その先にもまた扉があるんです。だから、ずーっと開け続けていくんですけど。しかも一つだけじゃなくて、できることが増えれば増えるほど、一度にたくさんの扉が現れる、みたいな。新しい世界とつながる扉です」
と、軽やかに話していたミミさん。
chaabeeをひらくまではずっと、組織のなかで働く“仕事人間”で、自分が暮らしている社会や会社の“閉鎖的な部屋”から外には出られないと思っていたそうです。
それがあるとき、その部屋の鍵はすでに自分が持っていて、内側から簡単に開けられることに気づきました。
そこから、自分を解放して生きる人生がはじまります。
舞台は、東京・門前仲町になる、かつて鉄工所だったという、錆びて赤茶色に染まったヴィンテージ感を放つ建物。
ミミさんは、自分の引き出しにストックされた経験や知識に“好きなこと”を掛け合わせながら、“五感に響く”イベントなどを企画しています。
お客さんにも、部屋の鍵を自分で開けて、その人らしく生きていってほしいという想いで。
ではなぜ、場所の名前がインドの言語、ヒンディー語なのか。
実はミミさん、インドに語学留学した経験があります。
20代の頃、バックパッカーとしてインドを旅したとき、下町のおばちゃんたちが道端で大声で笑って話をしているのを見て、
「なんでこんなにエネルギーに溢れているんだろう? 経済的には苦しい生活を送っているはずなのに、私よりずっと幸せそう」
と思ったのがきっかけ。
とにかく彼女たちが何を話しているのか知りたくて、ヒンディー語を学ぼうと思ったのだそう。
それで、インドのおばちゃんたちは道端で、どんな話をしていたのかというとーー。夫の浮気の話とか洗濯代が高いといった、世間話だったのだそう。
「なんだー、そんなこと話してたの?」
と思ったそうですが、活気に圧倒されながらカオスなインドで暮らした経験は、大きな糧になっているのだそう。
chaabeeを開いて8年目。
「身軽になったんですよ。過去の実績や成功体験を背負ってしまうと重いんですけど、それらもぜんぶ手放していって。そしたら、どこにでも行けるし、何でもできるし。『インドに行ったときのように、過去の私を知っている人がいない場所で、新しいことをポンってやればいいよね』って思えるくらい、いまは背負っているものが何もないですね」
と、清々しいミミさん。
それから、
「ふと思ったのは、自分の食べるものや暮らしを自分の手でつくれる場所や土地にいたら、そこは楽園だと思うんですよ、幸せ度が高いと思っていて。その主役は自分だから、他人の物語に憧れることもなく、自分のところで満足できちゃう。でも都会では、誰かがつくったところにポンと入る感じで、便利は便利だけど、物語の主役にはなっていない感じがして……」
と話してくださったのが印象的で、ストンと腑に落ちるものがありました。