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花より桜餅

命を食む【2:0:2】

2024.10.02 15:23

こちらは『ハロモンシナリオ』という企画で書き下ろさせていただいた作品です。ハロモンシナリオと言っていますが、ハロウィン要素は微塵もありません。

 

【あらすじ】

太陽が地上の作物を全て枯らしたあの日、人類は3大欲求の「食欲」を失った。人類は遺伝子研究により植物と交配に成功した新人類として新たな地球で過ごしていた。

そんな中、地下深くに閉じ込められていた旧人類が目覚める_____


出演人数:4人

時間:40分(推定)

配役

◆マモル🚹:旧人類の男、ガサツなおっさん

◆ズズ🚹:レジスタンスの一員、弟分気質

◆ノーム(性別不問):レジスタンスの長

◆ユグド(性別不問):新人類を束ねる長

 

※性別不問キャラに関してですが、一人称は変えないでいただけると嬉しいです。

 

 

ズズ:(M)西暦30xx年、太陽が地上の作物を全て枯らしたあの日から、人類は「食欲」を奪われた。残された地球人は遺伝子研究により、植物との交配に成功した新人類へ次々に成り代わり、たちまち“人間”は排斥(はいせき)の一途(いっと)を辿る…

ズズ:(M)が、俺たちは決して屈しない。屈さない。

 

ズズ:お天道様の前にゃどんな人間だって尊ばれるべきだ!俺がぜってえあのスケコマシをぶん殴って……!

 

ノーム:またやってるのかズズ?

 

ズズ:どわっ!?お頭!?ど、どこから聞いてたんすか!

 

ノーム:お?おーなんだったか、西暦何年…ら辺だったか?

 

ズズ:それ最初からって言うんすよ!ああもう!あっちいってください!

 

ノーム:まぁ確かにお前のその勢いには励まされる部分があるが、こう…無鉄砲すぎて見てられなくなるんだよ

 

ズズ:俺は諦めないっす。俺の家族はもうみんな死んじまった。それもこれも全部、あの植物野郎共のせいだ!あんなんなっちまったらもう人間じゃねぇっすよ!!

 

ノーム:私達は食いものがなければ生きていけない。だがアイツらは光合成とかいうやつだけでピンピンだ。どこに勝ち目がある?今まで通り洞穴でひっそり農業して暮らすというのは、案外悪くないと思うが

 

ズズ:それはそうっすけど……、でも俺は!

 

ノーム:分かってる。だからこそお前は私達に助けを求めたことも。だけど今は装備も何もかもが不十分なんだ。すまないがもう少し我慢してくれ。

 

ズズ:お頭の意向なら俺は何も言わないっすよ…。じゃあ俺、そこのオアシスで水汲んできますね

 

ノーム:っ、ズズ待て!風が変わった。誰かがこちらに向かってきている

 

ズズ:なっ、敵っすか!?

 

ノーム:分からん。ただ一目散にこの洞穴(ほらあな)に向かってきているのは間違いない。念の為だ、防衛体制を!

 

0:ノームの一団は一斉に体制を整える

 

ノーム:ズズ、前に出るなよ

 

ズズ:お頭が狙われなきゃそうするっすよ

 

ノーム:っ、来るぞ!

 

マモル:なんだぁ?お前ら…。はっ、嵌(は)められたか?

 

ノーム:何者だ。

 

マモル:知らねぇよ。そりゃ俺が知りてえ事なんだからよ!!!

 

ノーム:っ!

 

ズズ:お頭!

 

0:金属と金属が打ち付けられる音

 

マモル:お?なんだガキ、一丁前に出てきやがって

 

ズズ:助けを求めるならともかく、お頭を傷つけるなら容赦しないっすよ

 

マモル:自己防衛の何が悪い。どうせお前らもあの草クセェ奴らの仲間だろうが。アイツらよりかマシだが臭うんだよ。

マモル:俺は、草という草が大っ嫌いなんだ!!あんなもん食うくらいなら生の肉食ってる方が100倍マシだね

 

ズズ:肉?お前肉を食うのか?

 

マモル:あ?ったりめえだろ。でなきゃなんのために生きてんだよ

 

0:剣をはじいて両者1歩下がる

 

ズズ:お頭!

 

ノーム:聞いていた!全員武器を下ろせ!

 

マモル:……降参か?それとも会談でもしようってか?俺はごめんだがな

 

ノーム:いいや。君が我々の敵、世界樹教団の手の者でないと分かったからだ。

ノーム:そして誤解を解くために言っておくが、私達も教団の手の者では無い

 

マモル:んだよその世界樹教団とかいう奴は。俺は草クセェ奴らに追われてただけだ。

マモル:目が覚めたらよく分からねえ建物の中で管がやたらと刺さってやがった。うぜぇから引っこ抜いて出ていったら追われてこれだ

 

ノーム:なるほどな…。これは僥倖(ぎょうこう)だぞズズ

 

ズズ:え!?なんでっすか!

 

ノーム:聞いたことがある。教団が数年前に遺跡から仮死状態の旧人類を発見したという情報があった。君はその旧人類なんだろう?「食欲」が、それも肉に対してのその欲は旧人類でないとありえない思考だ。

 

ズズ:教団が隠し持ってた研究対象ってことっすか!?

 

ノーム:ああ、彼を仲間に引き入れば計画が早く進むかもしれない

 

ズズ:まじっすか!

 

マモル:おい、仲間内でペラペラ喋るのは勝手だが、俺の中でお前らはまだ敵なんだが?食いもんだってロクに取ってねぇから腹が減って仕方ねぇ。

 

ノーム:これはすまない。私の名前はノーム。ここの集団のリーダーをしている。

ノーム:どうだろう。ここは取引と行かないか?私は君にこの世界の情報を全て教えることと、君の身の安全を約束しよう。その代わり、私達の計画に協力して欲しい。

 

マモル:断る。計画とやらが何も知らない状態でその提案に乗るほど俺は馬鹿じゃないんでね。

 

ノーム:ならば先に提示しておこう。

ノーム:私達は教団の計画を壊し、この世界から「食欲」を取り戻したい。

 

マモル:ほぅ……、続きを言え

 

ズズ:お前お頭になんて態度を!

 

ノーム:いいズズ。

ノーム:世界樹教団とは植物との交配に成功した新たな人類が呼称している団体名だ。彼らは食を必要とせず、光合成のみで生存することが出来る。

ノーム:作物が一度全て枯れたこの世界で彼らは世界を掌握(しょうあく)した。そして次に執り行ったのが全人類の交配計画だ。彼らはこの世界に生きている全ての人間を植物と交配しようとしている。

ノーム:かくいう私達も、その計画の被害を受けた者でな。間一髪で逃げ出した者たちがこうして集まり、レジスタンスとして行動を共にしている。

 

マモル:それで俺に協力者になれってことか

 

ノーム:その通りだ。断ってくれてもいいが、この辺りに私達のような集まりは居ない。君にとってこの場で最も安全な場所はここだと豪語できるが…どうだ?

 

マモル:テメェ、一丁前に脅してやがんな?

 

ノーム:悪く思わないでくれ。私とて皆を危険に晒す真似はしたくない。

 

マモル:………

マモル:っしゃーねー、お前らの方がまだ話が通じるみたいだしな

 

ノーム:理解が早くて助かる。

 

マモル:とりあえずあれだ。飯だ、飯よこせ

 

ノーム:ズズ、畑から少し採取してきてくれ。

 

ズズ:なんで俺がそんなこと……分かりました

 

ノーム:さて、ズズが食べ物を持ってきてくれるのはいいが少し問題だ。

 

マモル:何がだ?

 

ノーム:今この場には肉がなくてね。欲しいなら自分で取りに行ってもらわなきゃいけない

 

マモル:………こりゃとんだ人間に捕まっちまったな

 

 

* * *

 

 

ズズ:お頭〜!とりあえず今日採れるものは全部採ってきたっすよ

 

ノーム:ありがとう。私達も何とかなった

 

マモル:けっ、鹿1匹ごときで悠長(ゆうちょう)なもんだぜ

 

ズズ:飯食えるだけありがたいと思えっす

 

マモル:あ?てめガキが

 

ノーム:ズズやめろ。君もだ

 

ズズ:そうっすよおっさん。俺にはズズって名前があるんすから。ガキじゃねっす

 

マモル:ガキをガキと読んで何が悪い。あと俺もおっさんじゃない、マモルだ

 

ノーム:マモルか、随分と古風な名前だな

 

マモル:流行り廃(すた)りは知らねえよ。俺にとっちゃお前らの方が異質だわ

 

ノーム:それもそうか。随分長いこと収容されていたみたいだな?

 

マモル:俺だってただ寝てた間にウン百年経ってるたぁ思わねぇよ。

 

ズズ:そんなに前なんすか!?おっさんじゃなくてジジイ……

 

マモル:ぶっ飛ばすぞ

 

ノーム:はぁ………お前たちな…

 

マモル:あんまりおちょくるようなこと言ってっと食わせねえからな

 

ズズ:いらないっすよ

 

マモル:は?ガキがムキになってんじゃねえ

 

ズズ:だからいらねぇってば!

 

ノーム:ズズ、そのくらいにしておけ。それからマモル、実は本当に要らないんだ。私達は食べないからな。

 

マモル:食わない?肉だぞ?

 

ノーム:だからだ。だが食「べ」ないでは無いな。食「べられ」ないが適切か。

 

マモル:食べられない?

 

ズズ:アイツらのせいっすよ。

ズズ:アイツらが計画の一端として勝手に俺たちの身体をおかしくさせたんだ

 

ノーム:教団が計画の第一段階として実行したのが肉を食べられなくすることだったんだ。だから私たちは食べたくても食べられない。無理に食べると拒否反応を起こして最悪死んでしまう。

 

マモル:ほーん

マモル:じゃあ遠慮なく食わせてもらうぜ

 

ノーム:かまどはあっちだ。数が限られているからズズと分け合って使ってくれ

 

マモル:やっと食いもんにありつけるぜ…

マモル:っと、解体は…おいガキ…

 

ズズ:………

 

マモル:ガキ、聞いてんのか?

 

ズズ:………ふんっ

 

マモル:あー…チッ、ズズ

 

ズズ:なんすか

 

マモル:解体するから台を借りたいんだが

 

ズズ:そこの使っていいっすよ

 

マモル:はいよ。めんどくせぇヤツ

 

ズズ:聞こえてるっすよ!父さんと母さんが考えてくれた大事な名前、無下にする方が悪いんす!

 

マモル:あーあー分かった。で、その両親は?

 

ズズ:……もう居ないっす。アイツらに殺されたっすから

 

マモル:………それは

 

ズズ:無理に声かけなくていいっす。そういうその場だけの優しさいらないんで。

 

マモル:そうか

 

ズズ:でも!今は悲しくないっすよ!ここにいる皆が今は俺の家族っすから!…だから、だからこれ以上は絶対奪われたくないんすよ

 

マモル:家族か……そりゃいい

 

ズズ:おっさ……マモルさんもいたっすか?家族

 

マモル:……ガキ、コールドスリープって分かるか?

 

ズズ:?はい

 

マモル:俺は元々変な病気でな、現代で治せねえから未来に託して眠りについた

マモル:が、起きたのはウン百年後だ。家族なんかとっくの昔に死んじまってたよ

マモル:お前は周りが家族になってくれて、良かったな

 

ズズ:おっさん……

 

マモル:マモルな、いい加減覚えろガキ

 

ズズ:ズズっす…!そっちもちゃんと覚えろっすよ、マモルさん

 

0:2人同時に笑う

0:マモルが鹿に向かって黙祷をしていることに興味を示すズズ

 

ズズ:何してるんすか?

 

マモル:これか?肉とはいえ命をもらってるからな。こうやって敬意を示してんだ。動物だって人間だって命の価値はそう変わらねぇ。自分の血肉になる分感謝はしねぇといけねぇし、やってる分美味くなってる気はするな。

 

ズズ:なるほど…?俺も食えたらなぁ…

 

マモル:美味いぞ肉は。野菜なんかよりずっと美味ぇ

 

ズズ:俺はもうどんな味だったか忘れちゃったっすよ

 

マモル:これから食ってきゃいいんだよ。食える体に戻ってからもう1回

 

ズズ:そうっすね…!

 

ノーム:マモル、少し話があるんだが……なんだ、もう仲良くなったのか2人とも

 

ズズ:な、仲良くなってないっすよ、別に…

 

マモル:はっ、素直じゃねえヤツ

 

ノーム:ズズは照れ屋だからな。朝も1人で空に向かって何か語りかけてたのに私が来たらだんまりだ

 

ズズ:お頭あ!!!!!?!

 

ノーム:(くつくつと笑いながら)あまりにも可愛らしくてだな…

 

ズズ:わざわざ口にしなくたっていいじゃないっすか!

 

マモル:そうだぞノーム。妄想語りは男のロマンだろうが。かっこ悪いこたねえよ

 

ズズ:そうっすよね!?マモルさん話わかるじゃないっすか!

 

マモル:で、何言ってたんだ

 

ズズ:それは!!……秘密っす

 

ノーム:(ズズの真似をしながら)だが俺たちは決して屈しない、屈さない…。お天道様の前にゃどんな人間だって…

 

ズズ:お か し ら ! !

 

マモル:だっははは!!!ズズそりゃお前、人に聞かれちゃそうなるぜ!

 

ズズ:笑わないでくださいよ!お頭も!裏切るなんてひどいっす!

 

ノーム:(笑いをこらえる)す、すまない…

 

ズズ:あーもう!俺あっちで皮なめしてくるんで!!2人ともしばらく来ないでください!

 

マモル:おいそれ俺の皮だろ!!……あーあ、行っちまった

 

ノーム:少ししたら戻ってくるから、心配するな。

ノーム:……可愛らしいだろう、あの子は。

 

マモル:まだガキだな。手始めに突っ込んで来るあたり、勇敢と無謀をはき違えてる感じだ

 

ノーム:だが誰よりも前向きで元気だ。私たちも助けられているところが多い。

 

マモル:…で?話ってなんだ

 

ノーム:おや、もう話を変えてしまうのか?

 

マモル:そっちから話しかけてきたんだろうが。いいからさっさと話せ

 

ノーム:私のことについてなんだが……、私は他の皆とは少し出自が違ってな。これから協力関係として長く続けて行くためにも私の自己開示は必要だろう。

 

マモル:それズズ達は知ってんのか

  

ノーム:いや、知らない

 

マモル:ならあいつらもいた方がいい。俺は隠し事が性(しょう)にあわねぇからすぐバレちまう。どうせ言わなきゃいけないことならアイツらも聞いといた方がいい

 

ノーム:…それもそうだな。すまない、この話は後日ちゃんと話すとしよう。

ノーム:ズズが戻ってきたらなめした皮を貰うといい。鹿の皮は何かと使えるぞ

 

マモル:言われなくてもそうするつもりだ

 

ノーム:ズズだってマモルにあげるためになめしに行ったんだろうしな

 

マモル:そいつは……可愛いやつだな

 

 

0:数日後

 

マモル:おう戻ったぞ

 

ノーム:おかえり。ズズを見てないか?水汲みからまだ戻ってないんだ

 

マモル:帰ってる最中にすれ違ったぞ。あと5分もしたら戻ってくるだろ

 

ノーム:それもそうか。帰ってきたら2人に話があるんだ。

 

マモル:こないだ言ってた出自ってやつか。

 

マモル:…随分と怖い顔しやがって。何に怯えてんだよ

 

ノーム:少し、な……。怖いんだよ。今まで隠してた秘密をさらけ出すのが

 

マモル:まぁ、ズズはおめぇに執心だから心配いらねえと思うがねぇ

 

ノーム:……だといいな

ノーム:マモルはその、教団を倒したい明確な理由とか…あるか?

 

マモル:なんだ今更。別にズズやお前みたいな大層な理由なんかねえけどよ、要するに、教団がいれば俺は肉が食えなくなるんだろ?んなのゴメンだね

 

ノーム:っふ、随分理由が俗っぽいな。子供か君は

 

マモル:だから言ったろうがよ。あー、やめだやめ。

マモル:そもそも、お前らが俺を半ば無理やり引き入れたんだろうが。責任取れよな

 

ノーム:っはは!それもそうだったな…!

 

マモル:脅したくせに忘れてんじゃねえぞ……

 

0:(演出)少し間を空けて

 

マモル:…………なぁ、ズズのやつ遅くないか?

 

ノーム:確かに……いつも行っているオアシスならもう帰ってきてもおかしくない時間だ

 

マモル:野生動物にでも襲われてるか? 

 

ノーム:戦闘経験はあるはずだが…群れに遭遇しているなら問題だな

 

マモル:っしゃ、とりあえず行くぞ。なんもなかったにしても遅かったってひっぱたいてやる

 

ユグド:それは乱暴ですね

 

マモル:うるせぇ言ってろ……誰だお前!?

 

ユグド:おやおや、随分なご挨拶で。誰が君を生かしてやったと思っているのでしょう?

 

マモル:んなの知らねえよ!急に出てくるなり訳わかんねえこと言ってんな!

 

ユグド:訳が分からない?少なくともノームはわかると思いますがね

 

マモル:あ?

 

ノーム:ユグド……!なぜお前がここに…

  

ユグド:決まってるじゃないですか。そこの彼を取り戻しに来ることは、教団の人間としておかしくない行動でしょう?

 

マモル:なるほどな、お前あの草野郎共か

 

ユグド:『野郎共』だなんて汚い言葉を…さすが、旧人類は野蛮で穢らわしい人間ですね。

 

マモル:んだと!

 

ユグド:しかしそんな貴方も我々の手で立派な立派な研究対象となれるのですから、これ以上の誉はありませんよ。

ユグド:知っていますか?今の環境はかつての人間が好き勝手した結果によるものです。食物連鎖の頂点でふんぞり返っていた貴方がたの罪だ。森を切り開き、海を汚し、二酸化炭素を大量にばら蒔いた結果です。

ユグド:私達の研究はそれを止める素晴らしいもの。動物の肉を食べなければ、植物のように陽の光と水で生きることが出来たなら、それは世界の希望となりましょう。そのためにオリジナルの旧人類は使えるだけ使わねばなりません。

ユグド:しかし、旧人類を手助けしていた愚民が、まさかノームだとは思いもよりませんでした。これは思わぬ収穫ですね。

 

ノーム:何故ここが分かった

 

ユグド:いやね、逃げた彼を追いかけていたら1人の少年に出会ったものですから、少しお話をさせてもらったんですよ。ただ、元気すぎて私の部下が何人かやられてしまいましてね……。危ないので保護させてもらってるんです。

ユグド:名前はたしか……ズズくんでしたか

 

ノーム:っ!お前ズズを……!

 

ユグド:安心してくださいノーム。彼はまだ死んでいませんよ?

ユグド:「まだ」、ね

 

ノーム:………!

 

ユグド:私は慈悲深い人間ですから、そこの旧人類と交換でどうでしょう?本当は貴方も、と言いたいところですが、貴方が許してくれそうにないので仕方ありません

 

ノーム:っそんなの…

 

ユグド:?出来ないのですか?だって、数年前からの仲の少年と、つい最近知り合ったお尋ね者なら、どっちを選ぶのか明白では?

 

マモル:…そりゃそうか

 

ノーム:待てマモル!私は…!

 

ユグド:(ため息)…仕方ありません。1日、時間をあげましょう。彼を連れてきたらズズくんは解放します。けれど、来なければ残念ですがズズくんは処分します。文句ありませんね?

 

ノーム:……分かった

 

ユグド:では明日、私たちが生まれたあの場所で。待っていますね。

 

0:ユグド出ていく

 

ノーム:ズズ……、マ、モル…

 

マモル:どうする、俺を売るか?

 

ノーム:でも、それでは君が…!

 

マモル:俺よりズズの方が大事だろ

 

ノーム:それは……

 

マモル:売るなら早く俺を縛った方がいいぜ。今にも逃げようか迷ってるところだからな

 

ノーム:でも君がいなければ私たちは…

 

マモル:じゃあズズを見捨てるか?

 

ノーム:っ……

 

マモル:だんまり決め込むなよ

マモル:なぁお前、本当に俺たちの味方なのか

 

ノーム:なぜ、なぜそう思うんだ!私はずっとここでみんなと…!

 

マモル:じゃあなんで草野郎のこと知ってんだよ。アイツ言ってたよな。「私たちが生まれた場所で」って。

マモル:なぁ、本当にお前は俺たちの味方か?

 

ノーム:…………

 

マモル:答えろよ!!!!

 

ノーム:………ユグドは、私の知り合い、だ…

 

マモル:っ、やっぱそうかよ

 

ノーム:でも!私はもうユグドの元から去ったんだ!裏切って逃げてきた!今の私はズズ達と一緒のレジスタンスなんだ!!だから!だから…!

 

マモル:だから信じてくれって?どう信じればいいんだよ。証拠がねぇ、あるのはお前の証言だけだろ!

 

ノーム:それは…だが、私、は…

 

マモル:ウダウダ言ってんなよ!信じて欲しいなら、信頼出来るって思わせるくらいの態度取れよ!それが出来なきゃチームごっこなんざやめちまえ!!!

マモル:今のお前クソダサいぞ

マモル:言いたいことがあるなら全部言え!隠し事なんざしてたら信じたいことも信じれねえだろうが!

 

ノーム:っ……!

ノーム:…わかった。全部話すよ、私の全部を

 

0:(演出)少し間

 

ノーム:私はレジスタンスのみんなと同じ身体じゃない。私の身体は、ユグド達と同じ新人類の身体だ。光合成のみで生きることが出来る。

ノーム:…私とユグドは同じ日に同じ場所で生まれた友だった。だが、ある日いきなりユグドが当時の総帥(そうすい)を殺して、トップに立った。あの時からユグドはどこが異常だった。私はそれが怖くて……逃げ出した。

 

マモル:それでアイツはお前も追ってたのか。

 

ノーム:私はユグドを止めたいんだ!昔の教団の考えは納得いくものだったが、今はユグドの独裁で欠片も残ってはいない。あんなもの、昔掲げた教団じゃない。あんな…人間を強制的に止めさせる行為は、もう…!

 

マモル:ならどうする。俺か、ズズか、どっちを選ぶ

 

ノーム:今までの私なら何がなんでもズズを選んだ。だけど今は……選べない

 

マモル:……かったりぃな

 

ノーム:何を

 

マモル:あのなあ、どっちかしか選ばなきゃいけないほどお前の選択肢は狭いのかよ

マモル:俺は俺が行きにくくなる世界はごめんだ。だけどな、そのために俺より若いズズを捨てるなんざあっちゃいけねぇ。

マモル:ならどうする。無理だ無謀だは一旦ほっぽって、お前がどうしたいのかだけ聞かせろ!

 

ノーム:私は……

ノーム:…どちらも諦めたくない。

ノーム:初めてズズに会った時、私は彼の明るさに助けられたんだ。あの場にいた時には決して得られなかった楽しさがズズと一緒だとあった。

ノーム:君ともだマモル。始めは、生意気だ乱暴だと思っていたが、君は誰よりも友達思いだ。…私なんかよりずっと。

 

マモル:ならどうする

 

ノーム:どっちも選ぶ。私はレジスタンスの長だ。同時に君とズズの友人だ!どっちも大事ならどっちも選ぶ。それが人間というものだ!!

ノーム:それに、私はかつての友としてユグドに一発入れなきゃいけない。逃げるなんて選択肢、無い。

 

マモル:…いい顔できんじゃねえか。

 

ノーム:君には負けるがな。

 

マモル:ズズ取り返して、草野郎ども全員沈めるぞ。そんで帰ったら、肉食おうぜ肉。

 

ノーム:ご相伴にあずかろう。私が死にかけてもいいならな

 

マモル:そりゃ違ぇねぇ

 

0:(演出)間をあける

0:世界樹教団 拠点

 

ズズ:ここから出しやがれ!このっ!

 

ユグド:そんなに乱暴をしてもかえって自身を傷つけるだけですよ?囚われの姫らしくしんみりと待てばいいじゃあないですか

 

ズズ:誰がそんなことするかよ!お前、お頭たちに何かしたら許さねぇからな!

 

ユグド:さあ?どうでしょうか。今頃ノームが貴方か旧人類かを天秤にかけているところでしょうかね

 

ズズ:は…?お前、お頭とマモルさんに何言いやがった

 

ユグド:言葉の通りですよ。貴方を引き渡す代わりに旧人類を渡せと言ったのです。

 

ズズ:っお前!お頭がそんなの決めるわけないだろ!お頭がお前の言うことなんか聞くもんか

 

ユグド:ですがノームは私達と同じ新人類の身体ですよ?私の味方と考えるのが自然では?

 

ズズ:は?

 

ユグド:おや、聞いていませんでしたか?隠し事をされているなんて、信用がないんですねぇ

 

ズズ:嘘だ、お頭が俺たちを騙すなんて、嘘だ…

 

ユグド:良いじゃありませんか。旧人類を渡すだけで貴方は逃げられるのですよ?自分の命の方が惜しいでしょう

 

ズズ:黙れ!お頭は、お頭はそんなやつじゃない!本当だったとしても絶対何か理由があるはずだ!

 

ユグド:いいえ?ノームのことは私が一番分かっていますから。彼女がどちらか片方を選択できないことも、最終的に私を頼るところも。

 

ズズ:彼女…?

 

ユグド:おやそこからですか。本当に何も知らないんですね

 

ノーム:何も知らないのはお前の方だよ、ユグド

 

ユグド:ノーム!随分早いですね。約束の時間より早く来てくれるなんて嬉しいですよ

ユグド:彼を連れてきたということは、決まったんですね?さぁ、早く彼をこちらに!

 

ノーム:……

 

ユグド:ノーム?

 

マモル:はっ、誰がお前のものになるかよ。気持ちわりぃ

 

ズズ:お頭!マモルさん!

 

ノーム:あぁ。悪いが2人ともやれん。だからお前との取引はナシだ

 

ユグド:……どうして?

ユグド:ノーム貴方、この少年に何も言ってないそうじゃありませんか。自分が元教団の人間なことも、自分に性別が無いことも。それはつまり彼らを信用していない事の表れではないですか?

 

ノーム:そうだな…

 

マモル:お前女じゃなかったのか

 

ズズ:お頭、男の人じゃなかったんすか!?

 

ノーム:あぁ。私はどちらでもない、人間じゃなくなった、ただの化け物だよ

 

ユグド:嗚呼ノーム。そう自分を卑下しないでください。素晴らしいじゃないですか、これぞ真の男女平等じゃないですか。

ユグド:しかしらしくありませんね。1を切り捨てて大勢を取るのが貴方のやり方だったでしょう?いいんですよ?ぽっと出の旧人類を差し出して自分のお仲間を救うことを私は咎めたりしません。そもそも、旧人類だって元は我々の所有物だったわけですし、迷子を届けたとでも思えばいいんです。気に病む必要は何も無い

ユグド:なのにどうして貴方は2人とも救うという愚かな選択をするのですか?変わってしまったのは、貴方が仲間と言っている者の影響ですか?

 

ノーム:(間を置いて)変わったのはお前だよ、ユグド

ノーム:元々教団は食糧難を何とかするため作物の品種改良をしていただけの組織じゃないか。元総帥(そうすい)を殺し、私の身体を勝手におかしくさせたお前の方こそ変わったように思うよ。

ノーム:今の私はレジスタンスのみんながいる。ズズと、マモルが居る。もし私が変わったと思うのなら、それは今の環境のおかげだ。こっちの方が私はずっと息がしやすい。

 

ズズ:お頭…!やっぱりお頭は俺たちを裏切ってなんかいなかった!

 

マモル:なんだよズズ。そんなこと考えてたのか?

 

ズズ:もちろん嘘だと思ったっすよ!!ただ、確証はなかったし、本当だったらって思うと怖かったっす…

ズズ:でも嬉しいっす!やっぱりお頭はお頭っすね!

 

ユグド:……私よりそいつらを選ぶんですか。そいつらよりもずっとずっと貴方のために尽くしてきた私を捨てるんですか?そんな愚かな行動、昔の貴方ならしなかったのに

 

ノーム:そうだな、昔の私ならしなかった。でも今は違う。今の私はレジスタンスのリーダー、ノームだ。お前の手は取らないよ。

ノーム:ズズを、返してもらう

 

ユグド:ありえない…ノームが私から離れていいはずがない…ありえない、ありえない…

ユグド:そうだお前の、お前のせいだ!お前の!!

 

ズズ:がっ!?は…なせっ……!この…っ

 

ユグド:貴方のような下等種がいるからノームはダメになったんです!ノームは私の、私だけのノームを、愛おしい我が親友を貴方は穢した!!死に晒せ!

 

ノーム:ズズから手を離せユグド!

ノーム:なぁユグドどうしてだ!?どうしてトップを殺す必要があった?どうして人間を絶滅させようとしているんだ!

ノーム:何が…君をそこまで突き動かす…?

 

ユグド:…人間はね、三大欲求を持って生まれるんです。食欲・性欲・睡眠欲。そんなものがあるから人間は争いを続ける。欲しいもののために、争いを続ける。

ユグド:貴方は知らないでしょう、私と貴方が教団の中で欲の捌け口になりそうだったことを。男は力づくで私達を組み伏せようとし、女は若い肉を求めて近づいた。私は悟ったんです。この世に欲求を持つ人間がいる限り平和は訪れないと。

ユグド:だから私が作ってあげるんです!食事も、睡眠も、交合(まぐわ)うことも必要ない世界を!全人類を新人類化させればそれが出来る!性別も欲も無い人類による新世界が誕生する!

ユグド:けれど、それも今となっては邪魔になるだけですね。新人類もどきの少年もまた、同じように貴方を求めてしまう。

 

ズズ:か、はっ……

 

ユグド:ノーム、私の行動原理は全て貴方ですよ

ユグド:本当は旧人類なんかに興味は無い。私が欲しいのはノームただ1人。

ユグド:旧人類を滅ぼし、トップに私とノームを据えた完璧な世界を作る。この教団はそのためだけのもの。私の行動指針はそれだけです。

 

ズズ:ま、て………。なら、俺の両親を殺したのも、ただ、それだけのためなのか……?

 

ユグド:はて、それは一体いつの誰のことでしょう?私、ノーム以外に興味は無いもので

 

ズズ:………

 

ユグド:おや?どうしました?もしかして死にました?

 

ズズ:お前、許さねぇ…!!!

 

ユグド:はぁ……その状態で言われましても…

 

ズズ:黙れ!お前だけは、お前だけは絶対殺してやる!!

 

ユグド:……うるさいですね。

ユグド:どうせノーム以外みんな殺しますし。私のために死んでください

 

ズズ:がはっ!?(咳き込み)お、かしら……

 

ノーム:ズズ!!

 

ズズ:おかしら……、逃げてください!おれは、だいっ、じょうぶ…っす、から!

 

ノーム:ズズだめだ意識を飛ばすな!今助けるから!

 

マモル:判断遅いぞノーム!

マモル:おい草野郎!ズズを離しやがれ!!

 

ユグド:邪魔、、するなぁあああ!!!!!

 

0:打撃音

 

ユグド:卑しい種族の分際で!私のノームに触れるな!

 

マモル:ノームをもの扱いしてんじゃねえ、、っぞ!つーか、お前が1番卑しいんじゃねえのか!?

マモル:ノームは自分のモノ?ノームと2人きりの世界を作る!?ノームノームノームノーム!!お前が1番欲にまみれてんだろうが!旧人類とかいう俺でもドン引きするぞ、その欲望!

 

ユグド:黙れ!お前に私の崇高(すうこう)な理念は分からないでしょう!!

 

ズズ:わかんねぇっすよ!!!!!(噛み付く)

 

ユグド:っ!噛みつくとは何たる無礼か犬畜生!!

 

ズズ:うわっ!?……っ痛ぁ!

 

マモル:ズズ無事か!?

 

ズズ:な、んとか!!

 

ユグド:お前たちが居るから!お前たちが居るからあ!!!!!

 

マモル:なっ!?くそっ、が…!

 

ズズ:マモルさん!うわっ!?

 

ノーム:ズズ!マモル!

 

ユグド:邪魔をするな!!

ユグド:ノーム!選ばせてあげます。私の元に帰ってくるなら、今すぐこの2人を殺すのはやめてあげましょう。だから私の元へ来るのです。彼らを死なせたくはないでしょう?

 

ノーム:ユグド、お前はどこまで…!

 

ユグド:ええ!えェ!貴方のためならどこまでだってやりますよ!貴方を腕(かいな)に抱けるならいくらでも!

ユグド:私はいつも貴方の為に生き、貴方の為に動きます!貴方の望むことをなんでも叶えられる!

ユグド:嗚呼ノーム!貴方は私の全て!さぁ決断なさい!さぁ、さぁ、さァ!!!

 

0:(演出)間を空ける

 

ノーム:…すまない、お前をそんな風にしたのはきっと私の罪なんだろう。

 

ユグド:いいえ、いいえ!謝ることなど何も無い!貴方の意思が私の行動原理となるのです…!貴方の心も、身体も、私がお慰(なぐさ)めいたします…!

 

ノーム:だが、それは自分のためだけの慰(なぐさ)めだろう。私の為だと言っておきながら、本当に私がして欲しいことはお前は何一つしない。できない

ノーム:私は2人と生きたいんだ。お行儀よく飼い主の帰りを待ち、与えられるだけの生活なんぞごめんだ。

 

ユグド:ノーム?

 

ノーム:先に謝っておくぞ、マモル

 

マモル:謝られたんじゃしょうがねぇ。いつでも来い

 

ノーム:はあっ!(マモルの腕を斬る)

 

マモル:っ!おらよ!俺の血の味堪能しやがれ!

 

ユグド:がっ!?

 

ノーム:お前の実験によって皆は肉を食せない身体になった。それは無論私もだ。拒否反応を起こし最悪死に至る。

ノーム:なら、今まで肉ばかり食べているマモルの血を飲んで、果たしてお前は正気でいられると思うか?

 

ユグド:ノーム何を!…っく、離しなさい下劣(げれつ)が!

 

マモル:生憎(あいにく)と、尊敬できない奴の言うことは聞かないのが人間ってもんだぜ?

 

ノーム:安心しろ、私もこの身体で証明済みだ。致死量ぶんきっちり飲ませてやる

 

ユグド:触れるな!ノームを穢す化け物が!離せと言っている!

 

マモル:化け物だぁ…?それは、お前のことを言うんじゃねぇのか

マモル:昔の人間はな、死んだら土葬されんだよ。なんでか分かるか。微生物がその死体を食って土に栄養をもたらすからだ。土に還元しちゃ作物が育つ、その作物を動物が食う、その動物を俺たちが食うんだ。

マモル:食物連鎖ってのはそうやってできてんだよ。命を食うってことはそういうことだ。お前のやり方は作物から栄養を奪ってくただの荒らし屋なんだよ

マモル:崇高な理念?お前がいつ人間以外に配慮したよ。お前の理念はただの嫉妬苦しい駄々っ子の考えだろうがよ!

 

ユグド:(吐血して咳き込む)ノーム、ノーム…!嫌だ、私を捨てないで、私を見限らないで、貴方に捨てられたら、私は…!私の存在意義は!

 

ノーム:自分の人生の指針に他人を置くな。自分の頭で考えて、自分の足で未来に行け。

ノーム:さよならだユグド。また会える時は、平和な世界だといいな

 

ユグド:ノーム……行かないで、私を置いて行かないで!ノー……(厶)

 

0:間を空ける

 

ズズ:お頭!マモルさん!大丈夫っすか!?

 

ノーム:マモルすまない。深く切りすぎたか

 

マモル:へーきだへーき。こんなん怪我のうちにも入らねぇよ…ッテェ!触んなズズ!

 

ズズ:思いっきり痛がってるじゃないっすか。大人しく治療受けるっすよ!お頭も!ほっぺ切ってるっすよね!

 

ノーム:私は別に……それより助けに行くのが遅くなった。すまない

 

ズズ:お頭が謝ることなんて何も無いっすよ!俺がヘマやらかしちまっただけですし。そういやアイツの部下たちはどうしたんすか?確か色んなところに配置されてたはずなんすけど…

 

マモル:全員倒してきた

 

ズズ:ああそっすか、全員……全員!?

 

ノーム:さすがに殺すまで行ってないが…マモルがことごとく血をだな…

 

ズズ:う、うわあ……

 

マモル:人がふらついて死にかけてる時になに引いてんだ

マモル:帰んぞ

 

ノーム:そうだな。帰ろうズズ。これからマモルに死ぬほど肉を食べさせなきゃいけないからな。獲りに行くの手伝ってくれ

 

ズズ:…うっす!!はち切れそうなくらいの肉用意してあげるっすよ!!

 

0:(演出)間を空ける

 

ズズ:(M) 西暦30xx年、太陽が地上の作物を1度全て枯らしたあの日から、人類は「食欲」を奪われた。地上では世界樹教団と呼ばれる組織の新人類化計画により人類は排斥の一途を辿る。

ズズ:(M)だが、俺たちは屈しなかった、屈さなかった

ズズ:(M)お天道様の前じゃ、どんな奴だって平等だ。平等に生きて、平等に死ぬ。

 

ズズ:母さん、父さん、俺やったよ。仇、取れたよ

 

マモル:ズズ!肉焼けたぞ!

 

ズズ:はーい!今行くっす!!

 

ノーム:美味いなこれは

 

マモル:俺特製の香草焼きだ。味はお墨付きだぞ

 

ズズ:今でも嘘みたいっすね…まさかもう一度肉が食えるようになるなんて

 

ノーム:まさかマモルの血が肉への耐性を付けるのに有効だったとは

ノーム:マモルが有言実行で本当に肉を食わせたことに驚いたが、今となってはいい発見になって良かったな

 

マモル:せっかく食えるようになったんだ。じゃんじゃん食ってけ

マモル:ズズ!突っ立ってねぇでお前も食えよ!

 

ズズ:うっす!

 

マモル:(M)俺たちが生きるために犠牲になるものがいる。食い食われを繰り返して世界は回っていく。

 

ノーム:(M)数多の生物が生きる地球という生命を前に

 

ズズ:(M)今日も感謝と敬意を込めて、命を食(は)んでいく

  

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