「読書バリアフリーに向けた図書館サービス研修」に参加してきました。
2024年9月21日(土)10:00~16:00まで、専修大学 神田キャンパスで実施された「読書バリアフリーに向けた図書館サービス研修」へ参加しました。
11月に松戸市内で「マツコ」や「おーい図書館」で読書バリアフリーイベントを企画していること、そして研修では千葉県立図書館勤務の松井進さんが登壇されると聞いて申し込みました。
こちらのの研修は抽選だったのですが、当日は30名の枠に少しオーバーする32名が参加、主に司書等関係者の方の参加が多く「その他」は7名。
(その中の2名が松戸から参加の一般市民の私と県議の中西さん)
結論から言うと、研修は参加して本当に良かったです。
研修会の冒頭に、読書バリアフリー法について説明頂いた、成松一郎さんより「芥川賞を受賞された市川沙央さんの書籍ハンチバックの作中で「紙の本が憎い」という主人公の言葉のインパクトがすごかった。この炎が消えないうちに、さまざまな立場の方が読書をたのしめるようにしたい!」という言葉から現場の情熱が伝わってきました。
私自身、市川さんの書籍を読んで「どんな環境であっても、読むことや書くことはテクノロジーの進化でバリアを越えられるのかもしれない」と、希望を持ちました。
やはり、どんな事例も当事者の声が一番響きます。実際のツールについても、当事者が使えることや利便性を可視化していくことでしか道を開くことはできないのかも知れません。
今回お研修はそんな「ツールの可視化」をしっかりと伝えてくれるものでした。
ただ、参加された司書の方や学校関係者の方など、実際に当事者からいろいろな質問を受けたり対応をするとなると、まだまだ不安はあるのでは?とも感じました。
ICTの学びはまだまだこれから。みんなで一緒に考えながら進んでいくしかないのかもしれません。
当日は入口には書籍の紹介コーナーも。読書バリアフリーに関する展示書籍のレンタルサービスもあるとのこと。早めの申し込みが必要ですが、これなら公共図書館や学校図書館で期間限定の展示会なども出来そうです。
(こちらの案内チラシなどは私たちが企画している11月のイベントでも紹介予定です。)
※研修の講演内容抜粋
成松一郎さんより
成松さんからは、読書バリアフリー法について資料に沿って説明を頂きました。
やはり市川沙央さんの「紙の本を憎んでいる」という障害のある方の視点からの声を消さないためにも、図書館などで出来ることから取り組んで欲しい、との説明がありました。
書籍に関しては著作権の関係もあり、初めは簡単ではなかったが、各団体からの以下の声明もあり、読書バリアフリーへの取り組みもより進み始めたとのこと。
2024年4月9日「読書バリアフリーに関する3団体共同声明」
2024年6月27日「読書バリアフリーに関する5団体共同声明」
図書館などの窓口では、不安はあると思いますが、使える身近な技術を使ってバリアフリーを実現してほしい、と締めくくっていました。
平林ルミさんより
平林さんからは「ICTを活用した読書支援~読書バリアフリーの多様な世界~」について資料に沿って説明頂きました。
主に「読み・書きに困難を抱える=デスレクシア」についての取り組みについて事例と共に講演頂きました。
資料の中で「中学生の不登校の内、約50%の割合の生徒がLDを抱える」という数値もあり、予想以上に対応が急がれるのでは?と感じました。
実際に平林さんが対応していたお子さんの読書についての取り組みを紹介いただきました。kindle書籍(有料)を音声で読むことに目覚め、無料で読める(聴ける)ネット小説にはまり、量が増え外国の翻訳本を読むようになった、と。
最近の様子を紹介かただくと「紙の媒体も読む」ということで、まさに本の虫に!
やはり「読める」が基本にあってそこから「読めたい!」になる事が学びの入り口になる事例だと思いました。
とはいえ、中学生などはクラスの中でのタブレットを使った読書は本人が望まないこともある。
「バリア」とは、やりいたいことの邪魔になっているもの・こと。
なぜバリアが出来てしまうのか?⇒多数派に合わせて作られる社会だから。
このバリアを取り除くために法律があるが、日本の障害の社会モデルが「個人モデル(個人の心身機能に問題がある)」ベースのままの制度設計のため対応に谷間が出来てしまっている。
これを社会モデル(障害の無い人を前提に設計された社会に原因がある)ととらえていくともっとわかりやすく、環境整備を進めやすくなる。
後半でipadを使って、身近にあるスマホやタブレットを読む道具にする
・アクセシビリティ機能【音声読み上げ】の紹介と体験。
⇒Kindleの読み上げ体験
・ボイスオブデイジー5アプリ体験
※デイジー図書再生アプリ。有料3000円。
平林さんからは、「学びプラネットでは学びのリソースルームを展開しています。ご相談ください、との事でした。
(あとでマツジョのメンバーに聞いたら読み書き障害をもつ保護者の皆さんには平林さんファンが多数いらっしゃるとのこと。納得です(^^♪)
松井 進さんより
「視覚障害者用「読書支援機器」を活用した読書環境の現状について資料にそって説明頂きました。
実際に松井さんが使用してきた機器を見本として回してくださり、また実際に千葉県立西部図書館にはいろいろな読書対応機器が展示され体験できるとのこと。
千葉県立西部図書館ではYouTube動画をアップされているということで、実際の危機の使用方法なども学べるようになっています。
また、千葉県立図書館のサイトには電子書籍サービスがあります。
以下、案内を抜粋↓
千葉県立図書館では、電子書籍サービス「KinoDen(きのでん)」を導入し、課題解決支援や調べ物に役立つ電子書籍を提供しています。
電子書籍はリフロー型(画面に合わせて文字のサイズやフォントが変えられる電子書籍の形式)や読み上げに対応したものなど、読書バリアフリーの観点から誰もが利用しやすい資料を選ぶように心がけています。
後半の講座では、松井さんからたくさんの視覚障害をサポートするアプリの紹介などもいただきました。中でも移動に役立つアプリ「駅どっち」はシニアの方にも良さそうですし、「By My Eyes」などはうまく工夫することで視覚障害の方を助けるボランティアに協力出来ることを知りました。
ぜひ近いうちに松井さんを訪ねて千葉県立西部図書館に行きたい!と思いました。
千葉県立西部図書館
千葉県立図書館 読書バリアフリー支援機器の紹介動画(マルチメディアデイジー編)
当日は、最後にASHIRAE(あしらせ)という視覚障害の方の歩行を
サポートするナビゲーションデバイスの紹介なども。
事前にいれたナビゲーションにそって靴の中に入れた器具が振動で方向を知らせてくれるというものでしたが、こういったツールも実はシニアの方の歩行などに使えたりして?など、障がいがあってもなくても便利なものが世の中に広く知られることで社会の中のバリアが減っていくといいなと改めて感じました。
さいごに。
今回の研修会は司書の方向けのようだったので私が参加しても良いのだろうか?と、一瞬申し込みを躊躇しましたが、こちらを受講して本当に良かったです。
参加させていただき本当にありがとうございました。
改めて、今計画中の読書バリアフリーイベントがさらに楽しみになりました。
何か困ったら相談してください、と皆さんおっしゃってくださり本当に心強く感じました。
まずは、松戸での可視化の第一歩を頑張ります。
※当日はたくさんの情報案内を頂きました。(画像)
等に読書バリアフリーの書籍等体験セットの貸し出しは是非イベントを通じて取り組みを広めたいと思いました。
(富田)