令和6年8月 盂蘭盆会法要 住職法話
『盂蘭盆御書』 弘安二(1279)年7月13日 58歳
「盂蘭盆と申し候事は、仏の御弟子の中に、目連尊者と申して舎利弗にならびて智慧第一・神通第一と申して、須弥山に日月のならび、大王に左右の臣のごとくをはせし人なり。此の人の父をば吉殲師子と申し、母をば青提女と申す。其の母の慳貪の科によて餓鬼道に堕ちて候ひしを、目連尊者のすくい給ふより事おこりて候。(中略)仏説ひて云く(中略)七月十五日に十方の聖僧をあつめて、百味をんじきをとゝのへて、母のくはすくうべしと云々。目連、仏の仰せのごとく行ひしかば、其の母は餓鬼道一劫の苦を逃れ給ひきと、盂蘭盆経と申す経にとかれて候。(中略)詮ずるところは目連尊者が自身のいまだ仏にならざるゆへぞかし。自身仏にならずしては父母をだにもすくいがたし。いわうや他人をや。しかるに目連尊者と申す人は法華経と申す経にて「正直捨方便」とて、小乗の二百五十戒立ちどころになげすてゝ南無妙法蓮華経と申せしかば、やがて仏になりて名号をば多摩羅跋栴檀香仏と申す。此の時こそ父母も仏になり給へ。目連尊者が法華経を信じまいらせし大善は、我が身仏になるのみならず、父母仏になり給ふ。上七代下七代、上無量生下無量生の父母等存外に仏となり給ふ。(御書1374㌻~1377㌻)
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〔語句の解説〕
・目連尊者…釈尊十大弟子の一人。神通第一。(普通の人には計り知れない超越的で不可思議な力)
・父…吉殲師子。
・母…青提女。慳貪(物を惜しみ、物に執着し、欲深く、満足することを知らないこと)の罪によって死後餓鬼界(餓鬼道ともいい、常に飢餓(食べ物がなく飢えている)に苦しむなど、不足を感じて満たされることのない苦しみの境涯)に堕ちる。
≪重 要≫
「七月十五日に十方の聖僧をあつめて、百味をんじきをとゝのへて、母のくはすくうべし」
・十方…東西南北の四方。北東、南東、南西、北西の四隅。上・下の方角。
・聖僧…正しい仏道修行をする僧侶。(正しい仏道修行…釈尊の本懐・法華経を修行する僧侶)
・百味…さまざまの美味、珍味など多くの料理のこと。
【訳】
七月十五日に、さまざまなところの法華経を修行する僧侶に来て戴き、その僧侶に百味の御供養をし、法華経で母・青提女の供養をして貰えば、母の餓鬼道の一劫年の苦しみを癒すことができた。
≪重 要≫
「しかるに目連尊者と申す人は法華経と申す経にて「正直捨方便」とて、小乗の二百五十戒立ちどころになげすてゝ南無妙法蓮華経と申せしかば、やがて仏になりて名号をば多摩羅跋栴檀香仏と申す。此の時こそ父母も仏になり給へ。」
【訳】
目連尊者自身が、釈尊の本懐たる法華経を修行し、仏になる(多摩羅跋栴檀香仏)ことにより両親も成仏させることができた。
以上