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ビーズ編み羽織紐「輪飾り(仮)」の材料となった経験と余りビーズの長い話

2024.10.09 00:40

 ビーズ編み羽織紐「輪飾り(仮)」の主な材料となった経験を書き残しておこうと思います。その経験の中で余ったビーズがあったことは簡単に想像できると思います。

 最近Threadsではデザイン盗用の話をよく目にします。活動を始めた頃、盗用する人にリスペクトがないと言われてもどこかはっきりとしない気持ちが残りましたが、今は分かるようになりました。想像力がない。私も想像力は無い方ですので、経験という買えないものを積み重ねてやっと分かりました。想像できない部分は経験で補うしか無いかったのです。

 2022年4月にビーズ帯締めが2本売れた。作ったのはたぶん2015〜2018年くらいで、房が決まらず放ったらかしにしていたもの。価格はビーズ帯締めを検索し、1つだけ見つけたビーズ帯締め作家さんの販売額(約6〜8,000円)を参考にした。売ってくれたのはじざいや。じざいやで扱う普通の帯締めより安い上にビーズ帯締めは珍しい。だからすぐに売れたんだと思う。

 2021年につまみ細工を始めたとき一番悩んだのは価格。一般的なハンドメイド製作物の値段付けを参考にすると1つ1万円を優に超える。つまみ細工だけでなく、着物ユーザーが日常的に使う小物を販売しようと考えた最初の販売物がこのビーズ帯締めじゃなかったかな。

(製作に慣れればデイザインも製作も時間が短縮され、販売額が抑えられるのかと思ったけど、今でもつまみ細工作品がお手頃価格の理由はわからない。それに編み物も製作時間が長いために高額になる代表選手だと後で知った。)


 2022〜2023年には新たに数本のビーズ帯締めを作成。あれこれ削りまくって計算しても3万円台(確か本当は5万円だった)。なのでそれ以上は作らず、製作時間を縮めるために、①編む長さを短くする②ビーズを大きくする③編む太さを細くする④中に芯の紐を通さないの4つを実践したけど、それでも1〜2万円代。当然売れなかった。

(「価格は高いが他のものより絶対にいい」と思ってもらえるものを作れればいい!と今でも思っているけど、現実はそんなすごいものを作る腕はそうそう身につかない。良くても「他のものより良いのに価格は同じ」、普通は「他のものよりいいのに安い」。この状態にならないと購入に至らず悔しい。よく見せるためのブランディングの腕もかける金もない。)


 2023年後半にはビーズ編みではなく三分紐のようなビーズ織りの帯締めを見たことを思い出し実験。しかし織りが編みより早く仕上がるものでもなければ、糸の張りがクソ正確に揃わないと途中でビーズが偏ってしまう。

 せっかく編み機や糸を買ったのに長いものは無理なのか…と思い始めたとき、ようやく「①短くしよう」という発想が「羽織紐」に結び付いた。しかも織りなら④は関係ない。
 最初のビーズ織り羽織紐は年末に見た海辺の夕日の色で作成。ピンと張った時も緩く垂れた時も収まりがいいように、中央に結び目を入れたり、2本を中央で繋ぐ形にした。

 悪くはないけどネットショップでお気に入り登録されるだけ。パッと売れることはなかったし、目一杯張った時と緩んだ時はどちらの収まりもいまいちな気がしてきて、さあどんどん作ろう!と思えななかった。

 ここまで来てやっと、やっと、「ビーズ編みの羽織紐だって見たことないじゃないか。私が世界で初めて作るんだ!」「最初は糸にビーズを通す量を記録し続ける必要があって大変だけど、これは慣れでなんとかなるのでは?」と思うようになり、織り機は片付け、いろんな編みを実践した。

(書いた翌日にものすごく素敵でお高いビーズ編みを使った羽織紐を発見した。ブレスレット用のしっかりした編み上がりになる違う編み方だが、素敵過ぎて心が折れた。ただ、この値段を付けてもいいのだという自信にもなった、もっと買い手の懐と顔色を窺わず、もちろんぼったくるでもなく、私の技術の価値を遠慮しない価格を付けられる人になろうと思う。)


 羽織紐にすることで①長さは短く、③太さは細く、④中に芯紐を通す必要もない。一気に時間短縮が叶っていく(とはいっても、ビーズを通すだけ、繋げるだけで終わるほど短くはない)。②の大きなビーズを混ぜることで表情をつけたものも製作した。

 思いつくもの全てに新たな材料を揃えることができない。手持ちの材料だけで作る。手持ちの材料という制限だからこそ思いつくものが増えていく。そうして何十本も作り、解いて戻したり、仕上げてショップに掲載したりしているうち、昔ながらの2本で結ぶ形は想像以上に理にかなっているし、なにより一番綺麗だってことに納得した。ちなみに2023年はスランプ状態でほとんどつまみ細工を作らなかった。

 2024年、スランプではあったものの、じざいやではつまみ細工で羽織の乳(ち)飾りを作っていたので、その乳(ち)飾りを羽織紐の左にワンポイントとして取り込み、簪でお馴染みの藤下がりを羽織紐として作り直したものがビーズ編み羽織紐「藤」。これがつまみ細工のスランプ脱出にもなった。

 そうして2本で結ぶのに適した細さ、その細さに適したビーズ、房の付け方、編みやすさなどを繰り返し考え、2024年10月現在、スペーサーと呼ばれる大きなメタルビーズをサイズの違うビーズと共に先端に編み込んだ「輪飾り(仮)」の10色目を製作中。これもガンメタリックのスペーサーが余るだろうこと、試しに買ったが編むのが難しかった細いレース糸、ビーズ織りのために買ったビーズ、これらを活かす方法から生み出すことができた作品。

 この作品はまだネットショップに掲載していない。10月末の「神楽坂de和空間」で最初に出すと決めている。パッと売れてはくれないかも知れない。でも少なくとも私は日に何度も眺めるほど気に入っている。20色くらいまで増やして、それでも売れないようなら、また別のデザインを考えようと思う。


 経験とは苦労のような辛いことに耐え忍ぶことでは無い気がしている。やりがいがあり、楽しくもあり、スランプに悩まされ、技術の低さを悔しく思いつつ積んできた自信なんだと思う。苦労があって報われたものとはやはりなにか違うと思う。その積み上げた自信の花が綺麗だからと摘む行為は、摘まれるこちらからすれば花だけ毟り取られ、引っこ抜かれた茎は捨て置かれるようなものなんだ。根も乾き、種ものこせない。綺麗な花が欲しかったら、写真を撮ったり、絵に描いたりさせてもらおう。それから、同じような花を咲かせることができる方法を考えて実践していかなければ。