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国営放送のNHKがワンクリック詐欺?

2024.10.16 08:58

は詐欺すぎ?

 NHKがワンクリック詐欺の被害に遭わないように注意を促しているのではない。なんとNHKによるある取り組みがワンクリック詐欺ではないかと巷を賑わせている。

NHKのインターネット配信については2024年5月に放送法の改正を経て任意業務から必須業務に変更される。それに伴いNHKはテレビを持っていない人でもインターネットを利用できる環境さえ整えば契約を結ぶ必要に迫られるのでないかと心配する人も多い。その対象はパソコンやチューナーレステレビだけではなくスマートフォンも契約対象である。ただし、現在、既にテレビの受信契約を結んでいる視聴者はその対象ではない。

 2024年5月に放送法の改正によって第64条と第20条を改正された。第64条では「特定受信設備を設置した者」に加えて「特定必要的配信の受信を開始した者」とし、第20条では「受信できるようにするためのプログラムを公衆に対して無償で提供しなければならない。の受信を開始しようとする者に対して通信端末機器の操作を求める措置その他の特定必要的配信の受信を目的としない者が誤ってその受信を開始することを防止するための措置を講じなければならない。」としている。

 インターネット配信を視聴する為のブラウザや端末用アプリは無償で提供しなければならない、有料配信を行うにあたって利用者が誤って意図しない視聴を行い課金されてしまわないように配慮することが規定されている。

 上記の法改正が2025年10月に施行されるにあたりNHKは具体的な試行の準備に取り掛かっているようである。NHKがメディア向けに声明したのが次の図にあるような仕組みだ。例えば、スマートフォンを介して視聴する場合は視聴画面に第一段階として、上位レイヤーが現れ、特定必要的配信の受信開始の確認と契約締結義務の発生が告知される。現れた告知には、受信契約が必要である旨と地域を選択することで災害情報などが受け取れるという内容が表示される。その先に進むには「同意して利用する」か「ご利用以降の確認について」という二つのボタンから選択するように促される。選択しない限りは次には進めないようになっていることが見て取れる。

それ以降の確認をするというボタンをクリックすると一定期間を経過すると登録等を実施しなければならなくなること、その登録は更に一定期間が経過すると契約内容の確認を促す画面に切り替わることが説明されている。これらの一連の流れを確認するボタンと同意して利用するというボタンしかないというのはあまりに不親切である。視聴せずに退出するというボタンがあって然りなのではないか。取り止めるという選択肢がないことから「NHKがワンクリック詐欺を始めるのではないか」と疑念を生んでしまっている。

 ではなぜNHKはこのような一方通行ともいえる同意の得方を進めるのか。それは放送法第64条に起因する。同法では特定受信設備を設置した者、特定必要的配信の受信を開始した者は協会と受信契約を締結しなければならないと定めている。これまではテレビを設置するとNHKと受信契約を締結する義務があった。テレビにおいてはこれまで通りであるが、ネット配信は違う。ネット配信での契約は受信を開始した際にその義務が発生する。つまり、国民がNHKはネット端末を持ったり、視聴アプリをダウンロードしただけでは契約を迫ることはできない。とにかく受信(視聴)を開始するように仕向けないと契約の締結には至らない。入り口となる画面に「視聴を取りやめる」とか「戻る」というボタンを設置することは契約が義務ではないことがばれてしまうことに繋がる。ネット端末を持った者が受信を開始しないと契約する義務はない。設置するだけで契約の義務があるのはテレビを設置した場合だけである。

 NHKが検討しているスマホ画面のPC画面で視聴の同意を促す画面をワンクリック詐欺と呼ぶには悪意を感じるので賛成はしないが、視聴を取りやめたり、進路を引き返す案内が無いことにも悪意を感じる。少なくとも国営放送を仕切る事業者の取り組みとしては評価できない。

 さて、当事者のNHKはこの仕組みに関する指摘を受けて「NHK番組のネット配信サービスは受信料制度の下で設計されているものであり、民間のサブスクリプション型映像配信サービスのように任意に加入したり退会したりを繰り返すような性格のものとは異なる」と回答している。サブスク事業者が扱うサービスのように加入や退会を繰り返すものではないのなら尚のこと慎重に丁寧な説明を行った上で加入の意思を問うべきだ。というか、サブスクと何が違うというのか。NHKはスマホやPCでのNHK視聴を開始したあとに受信契約を解約する場合には、テレビでの受信契約と同様に「NHKを視聴できる端末を何も持っていないことを何らかの形でわかるようにしていただく必要がある」とのことだが、それはおかしい。受信をできる端末を持ったら契約しないといけないという法規定はない。受信を開始することで契約の義務が発生するだけのことであり、受信をやめたら契約を継続する必要は法的にはないはずである。パソコンやスマートフォンを持っていようがいまいがNHKとは関係ない。NHKが言うパソコンを持っていないことやスマートフォンを持っていないことを証明しなければ解約できないという主張は法的にも成立しないはず。

 2022年5月には改正消費者契約法が成立し、解約手続きに必要な情報提供の努力義務を事業者に課されるようになった。「無料期間中だけで解約したつもりが請求が続く」や「1度利用しただけで継続契約の登録したつもりがないのに請求がある」などという解約トラブルがサブスク業者に対して多く発生している。NHKはこれらの諸問題を回避する為にサブスクのようなサービスではなく受信料制度の延長上での措置というのならそれは詭弁だと言われてもしょうがない。配信の受信を始めることも止めることも個人の自由である。NHKにその自由を奪う権限はない。契約の自由が法的に保障されている状況下でNHKだけが特別扱いされることはない。

 NHKが提示する案としては非常にお粗末なものである。公平性にも利便性にも欠けている。大いに見直するべき導入案であるばかりか、NHKの団体としての思想風土にも不安を思える。NHKは国民の為を第一に取り組む姿勢を構築せよ。今、NHKに最も欠けているのは国民に対する「思いやり」なのではないだろうか。


参考

放送法

https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000132/20251001_506AC0000000036#Mp-Ch_3-Se_6-At_64

NHKネット配信、「スマホを持っているだけで受信料徴収対象」にならない措置など公表

PHILEWEB

https://news.yahoo.co.jp/articles/1d31f6f9a2660282800ffda61afa30995bdbd768

同意ボタンでNHKネット受信料の契約対象に。サービス仮案公開 阿部邦弘

https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1630125.html

令和6年改正放送法の概要等について 2024/06/25 NHK受信料制度等検討委員会

https://www.nhk.or.jp/info/pr/kento/assets/pdf/shiryo_43.pdf