完全菜食で気をつけるべき栄養素 その1 鉄分
鉄は私たちの体内で酸素の輸送を行う血液の必須成分ですね。
たとえば赤血球ではヘモグロビン、筋肉中にはミオグロビンのヘムタンパク質として存在します。
肝臓や脾臓、骨髄などにはフェリチンやヘモシデリンとして20~30%貯蔵されています。
筋肉における酸素の貯蔵庫としても働き、エネルギー代謝他プロオキシダントとして免疫システムの機能に関与しています。
ヴィーガンとして鉄分を摂取する食生活を心がけなければならないのはもちろんですが、
鉄分に関して日本ではほとんど指導を受けないであろう重要なポイントとして
バイオアベイラビリティというものがあります。
・バイオアベイラビリティ とは生物学的利用能、どれだけ血中に入って体に作用するかという率の目安です。
なんと完全な菜食者であれば植物源から摂取する鉄分のバイオアベイラビリティーはたったの2〜20%です。(動物のヘム鉄でも15-35 %と言われおり、高くはないです)
植物性食品の栄養成分から一見、十分な鉄分が含まれているように見えても
最悪の場合、100gあたり鉄分含有量10mgの植物性食品から2パーセントだけの吸収で
得られる鉄分は0,2mgということになります。(が吸収率には個人差があります。)
また、鉄分の吸収は同じ植物内に存在する吸収抑制物質の影響も受けます。
鉄分の吸収を助ける為、タンニンを含むコーヒー、紅茶やフィチン酸、シュウ酸を多く含む植物性の食品などと鉄分源になる食品を同時に摂取するのは避けた方が良いでしょう。
お茶などの飲み物は30分程度は時間差を設けてください。
吸収阻害物質の例は下記の通りです。
カカオ豆、チョコレート、ホウレンソウ、カブ、ダイオウ
含まれる還元酸ー シュウ酸
全粒穀物, トウモロコシ, マメ科植物
含まれる還元酸ーフィチン酸
コーヒー、 茶、マメ類、キャベツ
含まれる還元酸ータンニン
日常的な例として、ほうれん草には鉄分が多く鉄不足の際に推奨されがちですが、
阻害物質、シュウ酸によりほうれん草から私たちが鉄分を得ることは非常に難しいでしょう。
一方、植物からの鉄の吸収をよくする食べ合わせも存在します。
ビタミンC含有食品•有機酸(クエン酸、酒石酸、乳酸など)、
また発酵製品(例:テンペ、味噌など)との組み合わせで腸での鉄分吸収を助けます。
ビタミンCと食べあわせた場合、鉄分の摂取量は3〜4倍に高めることができます。
鉄分の比較的多い植物性食品の例
100gあたりの鉄分含有量
かぼちゃの種 12,5mg
ごま 10mg
全粒スペルト小麦 9,7mg
フラックスシード(アマニ)8,2mg
ヘンプシード 8,0mg
レンズ豆(調理前の状態100gあたり)8,0mg
アマランサス 7,6mg
粟 6,9mg
キドニービーンズ(調理前の状態100gあたり)7,0mg
大豆(調理前の状態100gあたり)6,6mg
ひよこ豆(調理前の状態100gあたり)6,1mg
ケール1,9mg
日本人の1日に必要な鉄分の推奨量の目安は下記の通りです。
18~29歳女性 月経なしの場合6.0㎎、
30~69歳女性6.5㎎
70歳以上女性で6.0㎎
18~29歳の男性7.0㎎
30~69歳の男性7.5㎎
70歳以上の男性で7.0㎎
私が栄養の勉強をしているドイツの学校の教科書によれば
女性の場合は月経(30ml〜60mlの出血)毎に15〜30mgの鉄分を失うと記載があり
鉄不足ぎみの方は特に注意が必要です。
ですが、不要な鉄を溜めすぎている場合には月経は貴重なデトックスの機会でもあります。
鉄分はどのような食生活の人でも不足が指摘されるものですが、
意外と知られていない吸収率の悪さにおどろかれたのではないでしょうか。
ヴィーガンにとっては
野菜、穀物、豆などからの十分な摂取及びビタミンCやクエン酸などとの食べ合わせにより
吸収を高めることが必須となります。
最後に、鉄分はプロオキシダントです。
プロオキシダントとは抗酸化物質の反対の性質を意味します。
人は過剰摂取や蓄積した鉄分を出血や経血以外の方法で排出できませんので、
鉄欠乏の診断なく鉄のサプリを予防的に導入するのは危険です。
貧血かなぁ?となんとなく思われている場合は、
鉄分の摂取に気をつけるだけでなく赤血球の合成に必要な
ビタミンB12や葉酸も十分に摂取しましょう。