競技人生に「大満足」
~大橋悠依選手、笑顔で引退会見
◆競技人生に「大満足」 後進育成、学業にも意欲
東京オリンピック競泳女子200m個人メドレー、400m個人メドレーで2冠を達成した大橋悠依選手が10月18日、29歳の誕生日を迎え、帝国ホテルで引退会見を行った。会見では、約21年間の競技生活に「大満足だった」と述べ、晴れやかな表情を見せた。今後は、イトマンスイミングスクール特別コーチとして後進の指導にあたりつつ、大学院でスポーツ栄養学を学ぶなど、水泳界の発展に貢献していく意向を示した。
◆人との出会いに恵まれた競技人生
大橋選手は、姉の影響と自身の体力向上のために水泳を始めたことがきっかけで、競技人生をスタートさせた。オリンピックでの金メダル獲得、そして2冠達成は「夢にも思っていなかった」と語り、充実した水泳人生への感謝を述べた。競技生活を振り返り、大橋選手は「人との出会いに恵まれていた」と強調した。特に、東洋大学時代の恩師である平井伯昌監督との出会いが、大橋選手の水泳人生を大きく変えたと言える。平井監督は、大橋選手の才能を早くから見抜き、膝の怪我や貧血など困難な時期も支え続けた。大橋選手も、平井監督の指導を「良い面も悪い面も」受け止め、感謝の気持ちを述べた。
◆印象的なレースはリオ五輪選考会での400m個人メドレー
数々の輝かしい成績を残してきた大橋選手だが、最も印象的なレースとして挙げたのは、2016年のリオデジャネイロオリンピック選考会での400m個人メドレーだった。当時、400m個人メドレーを「嫌い」だった大橋選手は、平井監督に促される形で同種目に出場。予想以上のベストタイムを更新し、自身にとってのターニングポイントとなったレースだったという。
◆東京五輪後の苦悩とパリ五輪への挑戦
東京オリンピック後の3年間は、モチベーションの維持に苦しんだ時期でもあった。特に、2022年は「感情がどうなっているのかも把握できない」ほどの混乱を経験したと明かした。練習を途中で放棄することもあった大橋選手を支えたのは、東京オリンピックで「結果がどうなってもいいから、自分の泳ぎをする」という勇気を持ってレースに臨めた経験だった。その経験を糧に、パリ五輪への挑戦を決意したという。パリ五輪代表選考会では、400m個人メドレーで代表内定を逃したものの、200m個人メドレーで代表の座を獲得。2大会連続のオリンピック出場を決めた。
◆水泳界への貢献と未来への希望
引退後は、イトマンスイミングスクール特別コーチとして、平井監督や入江陵介コーチと共に後進の指導にあたる。大橋選手は、自身の経験を活かし、メンタル面や試合への心構えなど、技術面以外の指導に力を入れていくという。また、「自分の限界を決めないでほしい」と、若い世代へのメッセージも送った。
会見には、サプライズゲストとして入江陵介コーチが登場。大橋選手の誕生日を祝うケーキが贈られ、和やかな雰囲気に包まれた。入江コーチは、東京オリンピック後、同じチームで練習してきた大橋選手を「競技人生を通して競泳界に貢献してくれた」と評し、今後の活躍に期待を寄せた。大橋選手は、大学院進学も予定しており、スポーツ栄養学を学ぶ意向を示している。
「楽しい人生をこれからも作っていけるように頑張りたい」と、笑顔で締めくくった大橋選手。競技生活で培った経験と知識を活かし、水泳界の未来を担う若者を育成していくとともに、自身の新たなステージでも輝き続けることだろう。
#大橋悠依
TEXT・Photo:Tomoyuki Nishikawa/SportsPressJP