第21回福井『ぼくの家族はみんな誰かを殺してる』読書会レポート(執筆者・藤沢一弘)
第21回福井読書会は、ベンジャミン・スティーヴンソン著/富永和子訳の『ぼくの家族はみんな誰かを殺してる』(ハーパーコリンズ・ジャパン)を課題書に開催いたしました。
本書は、冒頭で主人公が「ぼくの家族は全員誰かを殺したことがある」と衝撃的な語りで始まる、雪山のロッジで起きる殺人事件について描かれる、世界27カ国で刊行されるという話題の謎解きミステリーです。
参加者の皆様からは自己紹介のあと、ざっくりと感想を語ってもらいました。
・真相は最後まで分からず楽しめた。
・人間関係が複雑で登場人物一覧を何度も見返した。
・伏線が分かりやすく、予想が当たった。
・いくつか分からない事が残ったままでモヤモヤする。
・家族の物語として、思っていたのと違った展開を見せたのが意外だった。
・色々な伏線が最後に回収されていく様子が面白く、気持ち良かった。
・ミステリーとして、読者に対して果たしてフェアだったのか。
・意外に読後感が良かった。
思ったより複雑で人間関係を含めてなかなか理解しにくかったとの声も多く、参加者の中には人物相関図を作ってきて下さった方も!
また、ミステリーとして最後まで楽しめたという方々も多い一方で、見せ方というか構成のせいで分かりにくく感じたのではといった意見も。
そんな中でも、ギスギスしているように見えた家族関係が、謎が解けていく過程で思いのほか温かみを感じ取れるようになるのが意外だったという感想も多く、この辺が読後感が良いという意見に繋がっていたようです。
そうそう、ミステリー通な参加者からは、主人公が「ノックスの十戒」を引き合いにだしてフェアな謎解きであると主張しているけれど、提唱したロナルド・ノックス自身が「十戒」に乗っ取っていない作品を発表しており、「十戒」そのものがノックスのユーモアであるとも言えるので、今回の課題書もやはり「十戒」を提示する事による目くらましであり、ユーモアなのではとの意見も。
単純に謎解きを楽しんでいた者としては「ふむふむ」と思わず納得させられるものが。
そう考えると、フェアとは言い難いと思う人も納得?(笑)
それにしてもいくつか疑問が残ったままで、今回の読書会ではその回答が見つかりませんでした。
特に「プロットにトラックが通れるほど大きな穴」があるといった記述があったのですが、その大きな穴ってなんだったのでしょうか。
どこか本書で読書会を開催された際に答えが分かりましたら教えて欲しいです(笑)。
さて、次回の福井読書会は12月14(土)に開催予定です。
福井読書会は、普段はミステリーはあまり読まないという方も、本が好きというだけで楽しめる会を目指しております。
読書会はハードルが高いと感じられている方も、お気軽にご参加いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。