点前 心身一如の所作
お茶会の始まりです~ お客様が席にお着きになると、亭主が一礼して入ってきます。 美しい礼で応えましょう。そして点前が始まります。 亭主は、袱紗と呼ばれる男性は紫色、女性は朱色の布を、 三角に折って帯につけています。 これはお客様をお迎えする側です。という印でもあります。
袱紗は道具を清めたり、大切なものを包んだりさまざまなことに使われますが、 特に清める動作は、道具をやさしくぬぐうことによって、 同時に心も清めることを象徴しています。
茶道のスピリットを表す言葉に、「和敬清寂」 があることは先に述べましたが、清めるは、まさしくその中の一文字、清です。 点前が始まると亭主は、必ず道具を優しくぬぐう、清める、という所作を行います。
お客様にお出しする前に、穢れや汚れを取り去るのです。
実際、薄茶を入れる棗といわれる漆器は、清めることでその美しい光沢を増します。
亭主は、清めるという動作を通して、自分自身の心も清らかにしているのでしょう。
身体感覚、ボディランゲージは、それに意味をつけると一層、無意識に入りやすくなります。
無意識はいつもその行為を意識せずに見ているからです。
棗を清めると続いて、茶杓も清めます。茶杓とは、お茶を掬うために竹を削って作られた細長い匙状のものです。
本来は亭主がその茶会のためだけに削りました。 茶杓には銘(そのものにふさわしい名前、愛称)がつけられています。
袱紗をさばいて、茶杓をその上にのせ、柔らかくやさしく包むように清めます。
その時、袱紗と茶杓は出会います。
私たちがお客様として亭主と出会うように。 竹の茶杓は、塩瀬という絹織物の袱紗に包まれて、きっとそのエネルギーを交換し合うのでしょう。 竹と絹のエネルギーは互いに混じり合い、溶け合うのかもしれません。 そして、亭主の思いが、そこに加わり、茶杓は清らかさを増し、 そっと棗の上に着座します。
先ほどの茶杓とは違う様子になり、まさしく一期一会の茶杓は、さりげなく周りのお道具たちと調和します。
そんな風に道具たちは、茶室という空間に調和してゆきます。
亭主は無言で点前を続けます。 一つ一つの所作は、丁寧に軽やかに流れるように進みます。
道具たちのハーモニーを妨げないように…。
そして、お釜の蓋が開いた瞬間、白い湯気は、天に向かって立ちのぼり、 そこに赤い火の子が飛ぶと、にわかに点前座は活気づきます。
色彩と音響に動きが加わり温度、湿度も、体感覚に訴えかけてきます。
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