ごめんね。えくれあ
こんなにも美味しいものが、世の中にあったのだ。
チョコレートとネーミングされていれば、お徳用パックでも、
デパ地下高級系でも、駄菓子屋系でも、みんな好き!
「チョコレートケーキ」って、最高に格別に美味しいよなぁ。
そうなんだ。いつの間にかチョコレートは偉大だと知った。
しかし、不思議なのだ。いったい、いつ頃なのだろう?
チョコレートの甘い魔法の沼に、引きずられてしまった頃は?
振り返れば、20数年以上前のこと。20代後半の貴公子だった頃。
「ナイーブ・シンクタンク」という手作り絵本の会に所属していた。
コンセプトが『世界でひつとの創作絵本展』なので、製本もイラストも、
すべて、一から自作。ストーリーを考えて、苦労して、創り出す。
美しい日本の文章。香り立つ言葉。幽玄で曖昧な世界に溺れていた。
絵に描いたような、白面の青二才の僕は、甘いものが苦手だった。
だからと言って、あんな失礼な言葉を使ってしまった事は許されない。
その事件と言えよう、現場の場面も全て、今でも覚えている。
確か『炬燵で絵本展』という展示会のこと。壁に展示されている作品を
僕は眺めていた。その時、背後から僕に声をかけてきた女性がいた。
「宮原さんは、エクレア好きなのですか?」
忘れもしない!愚かな僕は、人が人として、絶対に口にしてはいけない
酷すぎる言動を放ってしまった…。
「この絵は、エクレアなのですか?僕は、甘いものが嫌いなんです。」
誰だか知らない女性の穏やかな声のトーンが、少し悲しそうに変わって、
「そうですよね。甘いものなんて…。」
ちょっと!聞いていましたか!この生意気な20代の僕の発言!
あ~。嫌だ。人間性を疑ってしまうぜ!まず、心が無い。最低、最悪。
せめて「苦手です」くらいの言葉が思いつかなかった自分が恥ずかしい。
後で知ったことだけど、その女性のペンネームは「えくれあ」だった。
ごめんよ~。えくれあさん。ダセ-よな。オレ。ごめんよ~。
今では、こんなにも「エクレア」が好きになってしまったのに。
と言うことで、僕は「立派に、甘いものが大好き人間になりました♪」
親知らずを抜歯するほど、チョコが好き。低血圧だけどチョコが好き。
えくれあさんに許される過去ではないけど、自分に噓は付けないや。
エクレアってさぁ。すげー!美味いよね♪ダースでいけるね♪
日本人として、宮原らしく、ここで一句。七五調でお願いします。
「エクレアは 何故にこんなに おいしいの」
お粗末様でした。