#342 丘の上の団地展に行ってきました
【福井尚子・高志】
2024年9月30日(月)〜10月20日(日)まで、二宮団地でアート展が開催されていました。
会場となったのは、団地の廃止棟。つまり現在、人が住んでいない棟です。
昨年は一部屋で開催していた団地展。今年は規模を拡大し、階段室の2階から5階までの部屋を使っての展示となりました。
今日はその模様をお届けします。
会場となる廃止棟の入口へ到着。普段は入れない廃止棟に入ることができて、ドキドキワクワクします。
階段室に入ってすぐ右手の郵便受けには、入居者さんのお名前が書かれたパネルが!一覧して参加者がわかって見やすいし、とてもかわいい。
受付の2階へ。光が入って明るいお部屋です。
映画やドラマの撮影などにも使われているお部屋とのことで、建具もすてきです。
2階の受付の向かいに入居していたのはチートモさん。
部屋の真ん中にある棚には、カバや馬、人形、ランプなどの置物が置いてあります。
どうやらいろんな国から集まってきたもののよう。
天井から吊るされたパネルには、旅先で出会ったそれぞれの品との思い出が書かれていました。
パネルには、飾ってあるものとの出会い、旅の思い出、一緒に旅をした人のことなどが書かれていて、ひとつひとつとても楽しい。小さな部屋にいながら心が旅する展示でした。
3階はs_nebemさん。水彩画と餃子のポーチが1つのお部屋に展示されています。
餃子のポーチは昨年も展示がありましたが、さらにサイズが大きくなっていました!
うっかり写真を撮り忘れましたが、5歳の娘なら寝袋にしてしまえそうなサイズ感。
nebeさんのイラストはなんと壁にも描かれていました!優しい色合いであったかい気持ちになります。
こんなところにもかわいい子が!
3階のお向かいは、アロマ工房fuさんと21さんのお部屋。
fuさんが団地の周りの植物などから作ったという香りを嗅がせてもらいました。
3種類のホーリーバジルを混ぜてつくったという香り。ホーリーバジルはクセがありますが、これは爽やかで好きでした。
娘は夏みかんやレモンなどが入っている、「春のおとずれ」や「春の風」が気に入ったよう。
21さんは、ミシンで模様を描いたスウェットを販売していました。
ほとんど売り切れでしたが、残り2つの中から私は赤字にハートが描かれたスウェットをゲット!この秋大活躍しそうです。
(下の写真トルソーさんが着ていました。裸ん坊にしてごめんなさい)
4階は写真家の八幡宏さんの部屋。狭いお部屋に、大判の写真がドーンと展示されています。
深い色の海の写真にうっとり。
お部屋に残されていたというクローゼットの鏡に、写真の蝶が映る仕掛けも楽しいです。
狭い団地という空間や残された家具まで最大限に生かしている八幡さんの展示。
とても見応えがありました。
4階のお向かいは、展示を企画しているLife is a Poemさんのお部屋。
お部屋に入ってびっくり!畳が階段になって押入れへと続いています。
実はこのお部屋は痛みが激しくて、畳も見られた状態ではなかったそう。
それならば、と畳をアートにしてしまうLife is a Pemさんの手腕にうなります。
穴を開けた壁からはキラキラと光が差し込み、風が通り抜けます。
ああ団地って心地の良い住まいだなあと、改めて団地の良さを感じるお部屋でもありました。
5階はSKETCHBOYさんのお部屋。ツボイタカユキさんとつぼみさんの御夫婦のユニットです。
つぼみさんの展示は、ピンク色の部屋の中で開催されていました。
なんと床までピンク!全部ご自身で塗られたそうです。
ツボイタカユキさんの展示スペース。よく見ると、壁から植物が生えています。
部屋丸ごと展示のようになっていて面白い!
様々な生き物をかたどったブローチもかわいかったです。
5階の最後のお部屋は、shin ikegamiさん。
部屋に入った途端、良い香りがします。
よく見ると、ヒバチップがあちこちにありました。
元々は部屋の香りが気になるからと置き始めたものらしいのですが、すっかり香りごとアートになっています。
部屋の壁には白い糸が無数に吊り下がっていました。雨や滝のようにも見えます。
これを全て貼るのにどれぐらいかかったのだろう...
その狂気と根気にアーティスト魂を見ました。
(お風呂場の排水溝にもアートが!)
階段室へ出ると、まぶしい緑が広がっていました。
今回の会場となった廃止棟は高台にあるため、とっても見晴らしがいいのです。
じっくり展示を見ていたら、2時間近くの時間が経っていました。
今回の団地展は、昨年より規模が大きく階段室を丸ごと使えるようになったことで、部屋ごとにカラーがあり、元々あった部屋の特色やそこにある残置物なども活かした展示を見ることができました。
アートには日常を異なる視点から見せてくれる作用があると思いますが、今回廃止棟で展示されていたアートたちは、古いもの、使われなくなったものに光を当て、当たり前と感じていた風景に、たくさんの驚きや発見をもたらしてくれたように感じました。
今、さまざまな地域で土地の魅力を掘り起こす「芸術祭」が開催されていますが、団地の住まいとしての心地よさや魅力を引き出す今回の展示は、ただのアート展にとどまらない「団地の芸術祭」と言って良いものだったと思います。
また来年も団地展の開催を期待しています!