Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

都会の森に佇むアール・デコの装飾美 (東京都庭園美術館 宮内省内匠寮 1933年作 )

2019.01.14 15:05

 アール・デコ(Art Deco)とは、アールヌーヴォーの時代に続き、ヨーロッパやアメリカを中心に、1910年代半ばから1930年代にかけて流行した装飾の一傾向。

 (「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.12.22>主な解説より引用)

 世界を魅了したアール・デコ建築様式を存分に取り入れた建物が、東京・白金台にある「東京都庭園美術館」(昭和8<1933>年宮内省内匠寮・作 旧朝香宮邸)である。

 朝香宮鳩彦夫妻は、パリのアール・デコ博で本場の装飾芸術にふれ、フランスのデザイナー、アンリ・ラパンを起用して邸宅を建設した。日本に現存する代表的なアールデコ建築である。内装もフランス直輸入のものを用いている。

 アール・デコ様式に特徴的な、幾何学的模様をモチーフにしたデザインは、建物の外観そのものが潔いほどシンプルである反面、建物内の玄関扉、壁面のデザイン、シャンデリアなどの照明器具など、内装の至るところに用いられている。フランス工芸家 ルネ・ラリックが製作した玄関扉は、贅沢でありつつその繊細な造りが見事である。

 アール・デコは、1925年に開催されたパリ万博で花開いた。博覧会の正式名称は「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」。この様式は、装飾ではなく規格化された形態を重視する機能的モダニズムの論理に合わないことから、流行が去ると過去の悪趣味な装飾と捉えられたが、1966年以降再評価がすすんだ。

 アール・デコ様式は、「歴史の正統的な流れをあざ笑う」といった、一時期「異端の芸術」ともされた歴史があった。しかし、当時の斬新な最先端芸術のあり方を模索する中で、「反復の美」「繰り返しの美学」が、日本の最高の職人技(宮内省内匠寮の集団)ともあいまって、ここに具現化したのである。

 そこには、残念ながら完成後1年という若さ(42歳)で病気により逝去した、朝香宮允子(のぶこ)妃殿下の、建物完成にかける情熱と凛とした気品を、いまも漂わせているのではないか・・・

(番組を視聴しての私の感想綴り)

 もっとも、印象的であり魅力的であったのは、宝飾デザイナーでもあり、工芸家でもあったルネ・ラリックがデザインし、建物の玄関に採用された、4体の女神像をあしらった美しき扉である。

 日本文化でいう「おもてなしの心」が、来訪される客を最大におもてなす玄関扉として、構想されたのではないかとも推測してしまう。

 さらに、次室にあるアンリ・ラパンがデザイン制作した「香水塔」。部屋に香りを漂わせるために置かれたオブジェである。

 香水塔を置くこと自体、やはり「おもてなしの心」を香りで演出するという、発想の豊かさを垣間見てとれる。線香という日本独特の香り文化があったとして、ここでは何を香料として使ったのか興味深く思われた。

 マックス・アングランのエッチングガラス扉のモダンな装飾美は、ミロの抽象画を彷彿とさせるような、見事なデザインであり、現代のデザインとして用いられても、全く遜色しないものであると感じた。

 建物の内装には、フランスから直輸入した物をふんだんに取り入れるなど、アール・デコ建築のいわば粋を感じる一方で、その建物自体の外観は、極めてシンプルに造りあげられている。このギャップは意図的なものだったのかどうか、番組では直接触れられてはいなかったが、興味をもった。

写真: 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.12.22>より転載。同視聴者センターより許諾済。写真 上部: 外観 右下: 香水塔のオブジェ 左側上: 食堂天井 同下: 玄関扉女神のレリーフ