林業の関連書籍(国内編)
先程アップした以下のブログに続いて、今回は林業にまつわる書籍を読み返してみての国内編です。色々と改善すべきポイントや、悲観的な見方も多い日本の林業ですが、見れば見るほど様々な課題を孕んでいる事がわかります。
引き続き、対象書籍は以下4冊で、これらから得られる考察やデータを載せていきます。
■エネルギーはそこにある(三浦/大場)
■日本林業はよみがえる―森林再生のビジネスモデルを描く(梶山 恵司)
■日本の森はなぜ危機なのか―環境と経済の新林業レポート(田中 淳夫)
■森林からのニッポン再生(田中 淳夫)
日本は国土のおよそ2/3が森林に覆われた、世界でも有数の森林国です。その面積の中でも、40%が人工林となっています。
また、上記の数値はとても面白いですが、戦後の直後から比較すると非常に森林面積が増えている事がわかります。戦後の重要国策の一つとして、エネルギー源の確保を目的として、育ちやすい針葉樹(スギなど)を植えまくった結果です。逆に天然林は減少しています。
今の日本では、大体50~60年ほどの林齢の樹がかなりの割合を占めるようになってきており、「伐り時」と言えます。でも日本では林業に携わる人口が少ないため、育ちっぱなし・伸びっぱなしでとてももったいない状況にあるのです。
林野庁のこちらのグラフでは、林齢の構成が分かりやすいです。
■人工林の林齢構成
・日本の森林面積は約2,500万ha(国土の約2/3)
・約4割の1千万haが人工林(樹種:スギ/ヒノキ/カラマツなど)
・日本の森林蓄積は2007年に約44億m3
・高齢級の人工林は2017年に6割に増加
・10齢級(46~50年生)までが全体の79%
また、日本の国産材が外国材に押されてしまっている事を示すグラフが上記です。外国材は安価で、インドネシアなどの途上国から安い労働力で大量に生産されているから日本は負けてしまっている、という理屈もありますが、実際はそんな事もないようです。海外市場の競合とのマーケット優位性については、以下のような事が言えそうです。
■日本林業の不振(欧米の勝因)
・育林コスト
下刈/間伐ほぼしない、欠点は加工面/技術でカバー
・出材コスト
林道/作業道が効率的、高性能機械が普及(雨天作業可)、1台でマルチな林業機械を広く導入
・木の利用度
廃材を上手にカスケード利用(幅広い商品展開)、日本の場合は木全体の2割ほどの活用幅のみ
■日本林業の不振(日本の敗因)
・乾燥度の違い
輸入材→ほぼ乾燥された状態で輸入される
国産材→十分な乾燥度は1割未満(後の歪みの原因)
・ロット(量)とアイテム(種類)
輸入材→商社が介在し効率/安定的/大量に仕入れるサプライチェーン
国産材→問屋機能が不足/産地規模が小さい(安定しない)
■日本林業の不振(外材に敗因を求める誤解)
・安価な外材に負けた→今や価格面で大差ない
・外材は利用しやすい大径木が多い→最近は中経木も増加
・日本の山は急峻→欧米にも日本以上の急峻な山地は存在する
・育林コスト(人件費など)が高い→欧州では日本より賃金が高くてもペイしている
いずれにしても、国策、国民の認識、産業としてのエコシステムの作り方、などなど、海外の競合プレイヤーに比べると、日本は豊富な森林を持っているのに活かしきれていない(勿体無い)というのが現状なのではないかと思います。
最後にもう1点だけ、日本の林業が課題をずっと引きずってしまっている要因に関して、上記のような面白いデータがあります。各データを見ると、「小規模に森林を抱える戸数が多いが、収益化できる規模でも無いので結果的に放置するしかない」というのが結構クリティカルな課題かと思っています。
■森林所有者の保有山林規模
・保有面積が1ha未満の世帯数は145万戸
・1世帯で事業を行う家族林業経営体が9割
・家族林業経営体の経営主の平均年齢が66.0歳(約7割が60歳以上)
・相続に伴う所有権の移転等で、不在村者の保有する森林が増加
・所有者の特定と境界の明確化が課題