印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
大阪で、あべのハルカス美術館にこの展示を見に行ってきた。
都内でやっていた時は今ひとつ興味がわかなかったのだけど、先月、アメリカのヒューストン美術館でアメリカの印象派をたくさん見てきたので、深掘りしたいなと思い、行ってきた。
結論としては、印象派に興味がある人には面白い展示だけど、いわゆる印象派(ヨーロッパの)を期待していくと、少し肩透かしだと思います。
「印象派とは何か」を考えるのによい展示。
19世紀にフランスからはじまった印象派は、アメリカで商業的に成功していきます。
↑モネの睡蓮をはじめて買ったのが、ウスター美術館だそうです。
同時にアメリカ生まれの画家が、印象派を学びにパリに来て、アメリカにそれを持ち帰り伝えたり、アレンジして絵をかくようになります。
さいしょの印象派の絵の風景は欧州各地ですが、アメリカの画家によってアメリカの各地が印象派の技法で描かれていきます。
同じ時期、印象派を学んだ日本人の画家たちも、印象派的な技法でいろいろなものを描いていきます。
今回の展示では、アメリカだけでなく、日本人画家の作品もありました。
上は黒田清輝の作品。黒田清輝は日本の洋画に多大な影響(良くも悪くも)を与えました。
さて、当時はカラー写真やカラー印刷が発展しておらす、画家たちは実際に隣にモネの作品を見たり並べたりして描いたわけではありません。実物の絵の記憶で、受けた印象や描き方をまねして、自身の絵を描いていきます。
当然、ヨーロッパの作品とアメリカの作品が、並べて見られることも稀でした。
今回、欧州とアメリカの印象派の絵の比較をしてみると、似ているようで、だいぶ違うし、印象派の「何をもって印象派としているのか」が、作家によって違うことがわかります。
今回一番グッときた絵。典型的な印象派ぽくはなく、新しい表現で、新しいテーマ。
アメリカのカジュアルな服装のモデルを描いている。
バサバサとした筆づかい、混色しないこと、色は明るめ、光や大気を描こうとする姿勢 などは、共通しているように見えるけど、それぞれの画家の「印象派の解釈」があるように思いました。
また、ヨーロッパの印象派にもだいぶ違いがあって ひとくくりにできないし、その後の、新印象派と呼ばれる人たちの絵は、また趣が違う。さらには印象派の後の作家は、テーマがだいぶ変わっている。
印象派的な手法を真似た事はそうだと思うが、絵のテーマは全然違ってきています。
風景や人物を写生する画家もいますが、画家自身の心の中をなぞらえて描いたり、暗い絵や、シニカルなテーマも。
しかし、そのどれにも地域性や風土、画家の思いは感じられるけど、
画家の思想や主義主張、コンセプトみたいなものは、ほとんど感じなかった。
表現よりも、絵にコンセプトを乗っけるようなもの、コンセプト優先なものは、もう少し後年のことなのかもしれない。
印象派はその名の通り、印象を写しとる「表現」こそが、印象派たる所以なのだと思います。
革新的な表現だった印象派が、アカデミックになっていく
それまでのアカデミックな「絵とは、こういうものである」ということを打ち壊した印象派が、
その後「絵とはこういうものである」の代表のようにになってしまったことが、面白くもあり、また皮肉であると感じました。