ステロイド製剤の塗り薬(その13)リンデロンVG(リンデロンってまだあったの?)
リンデロンVG
本日は、リンデロンVGについてです。 リンデロンVとゲンタマイシンの配合剤です。
リンデロンVは、ベタメタゾンの吉草酸エステル(Valeric acid)で、classⅢに分類される塗り薬です。
ゲンタマイシンはアミノグリコシド系の抗生物質です。
ベタメタゾン
リンデロンVGには3種の製剤があります。 軟膏、クリーム、ローション剤です。
軟膏
まず軟膏ですが、この製剤は塗り薬の中で最もポピュラーな製剤です。
リンデロンVG軟膏は流動パラフィンと白色ワセリンと2種類の脂溶性基剤を混ぜて製造しています。 この処方は、リンデロンV軟膏と全く同じです。
ゲンタマイシンは油への溶解性はほとんどないので軟膏中では微細に分際して存在すると考えられますが、軟膏1g中に1mgのゲンタイマイシンの配合量はわずかでですので、製剤の見た目もリンデロンV軟膏とほとんど変わりません。
クリーム剤
クリーム剤やローション剤は界面活性剤を添加しないと製造することができません。
界面活性剤は一般に皮膚刺激性を持っています。 塗り薬を塗る患者さんの皮膚はダメージを受けている皮膚が多いわけで、保護効果もある軟膏剤が専門的には優れています。
パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシン安息香酸メチル、流動パラフィン、白色ワセリン、セタノール、ポリオキシエチレンステアリルエーテル,リン酸二水素ナトリウム,リン酸,水酸化ナトリウム
こちらも、リンデロンVと全く同じ処方ですが、クリーム剤は水と油の乳剤です。 なのでゲンタマイシンは水中に溶解して存在しています。
クリーム剤は刺激性があるため、傷のある皮膚や、ジュクジュクし炎症を起こした皮膚に用いることができませんが、浸透性は軟膏剤より高くアトピーの他あせも治療などに用いられます。
ローション剤
ローション剤ですが液体ですので広範囲への塗布が可能で塗りにくい頭髪などに用いられます。
油脂性基剤は流動パラフィンのみでこれにベタメタゾンを溶解させ、界面活性剤には6種類のものを混ぜて用いており、水相には、水酸化Naとクエン酸を用いて製剤化にてあります。
パラオキシ安息香酸メチル、流動パラフィン,セタノール,オレイルアルコール,グリセリン,イソプロパノール,ステアリン酸ポリオキシル40,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60,モノステアリン酸グリセリン,水酸化ナトリウム,クエン酸水和物
さて、リンデロンVGですが、ステロイドのベタメタゾンとゲンタマイシンを配合した、塗り薬のいわゆる合剤です。
一般にステロイドはアトピー等の炎症を起こした皮膚の赤みを和らげ、痒みや痛みを除きます、ステロイドには強力な抗炎症効果がありますが、免疫力を落とすため細菌感染が起こしやすくなります。
最後に
塗り薬においても、処方は会社毎に特徴があります。 単純な処方ほど製造現場での工夫ができず、生産には困難を伴います。
しかし、日本の製薬会社の生産現場には職人肌の方が多くおられて、彼らの経験値をもとにした製剤設計がなされ、新薬の登場に伴いその経験は引き継がれていきます。
このようにして会社毎に特徴のある処方となっていたのですが、近年製造の外注が増えてきました。
技術の伝承がされないで社内から消えていくのはさみしい限りです。