10年間で最も残業時間を減らした企業ランキング(vol.127)
1位は約78時間減!年々減る残業時間の背景にあるリモートワークの拡大
要旨:
- 1位は船井総研、2位はフューチャー、3位はデロイト トーマツ コンサルティング
- 1位と2位は10年で70時間以上の削減
- コンサルが上位に集中!残業時間は大幅減でも忙しさは変わらず?
- コロナ禍の「リモートワーク」がもたらした、業務時間への裁量と課題
2019年4月から働き方改革関連法が施行され、今年で5年。柱である「残業時間の上限」は大企業から順次導入となり、今年の4月に医師、建設業、自動車運転業にも適用となりました。国の旗振りや、企業と個人の意識の変化も相まって残業時間は年々減少傾向にあります。OpenWorkが今年4月に発表した「社員クチコミ白書」では、平均残業時間は2014年に平均44時間/月でしたが、2023年には平均23時間/月と、10年間で21時間減少しています。
今回の調査レポートでは、OpenWorkに投稿された残業時間の企業ごとの推移に着目しました。2015年と2024年(1~9月)それぞれの平均残業時間を比較し「10年間で最も残業時間を減らした企業」を調査しました。働き方改革だけでなく、コロナ禍により世界的に働き方に変化が起きた近年、残業時間を大幅に減らした企業にはどのような特徴があるのか、OpenWorkに投稿された社員クチコミと併せてみていきます。なお、今回の調査レポートでは現職社員による残業時間の投稿を各年ごとに集計しているため、回答者の属性によって結果が変化する場合があります。
コンサルが上位に集中!残業時間は大幅減でも忙しさは変わらず?
10年間で最も残業時間を減らした企業ランキングは、上位3社がコンサルティング会社という結果になりました。ランキング全体を見ても、30社のうち6社がランクインし、TOP10の半数を占めています。
激務のイメージがあるコンサルティング会社に共通するのが、元々の残業時間の長さ。1位の船井総研と2位のフューチャーに投稿された2015年の平均残業時間は月100時間を超えていましたが、いずれも10年間で70時間以上の削減となりました。上位のコンサルティング会社のクチコミを見ていくと、クライアントやプロジェクトによってワーク・ライフ・バランスが大きく左右される中で、企業として長時間労働の是正に取り組んでいることや、個人の裁量によって調整可能であることなどがうかがえます。
ランクイン企業の社員がOpenWorkに投稿した、残業時間に関するクチコミ
「クライアントワークのため、お客様に合わせて動かざるを得ない点で調整はしにくいと考える。チームリーダー以上になれば自分でスケジュールを決められるため、多少は調整しやすいと思う。独り立ちしていない社員は、先輩の都合に合わせて動くためスケジュールを調整しにくい。(経営コンサルタント、女性、船井総合研究所)」
「最近ではリモートワークが進んでおり、柔軟性は高まっているように感じる。リーダー層だと家庭を持つ方も多いが、離席して家庭の用事を済ませつつ仕事をするといったことも可能になっており、比較的バランスはとりやすくなっている。また労働時間の削減にも力を入れており、残業時間に関しては厳しく注意されることも多い。やることさえやっていれば朝遅く起きて夜遅くまで仕事するも、朝早く起きて早い時間に退勤するも個人の自由といった雰囲気である。(ITコンサル、男性、フューチャー)」
「クライアントワークであり、クライアントの事情に左右されてしまうという性質上、ワーク・ライフ・バランスが調整しやすいとは言えない。しかし、近年特にスタッフ層の働き方改革が進んでおり、5~6年前と比較すると断然業務時間が減り、休暇も取りやすくなっている。(マネージャ、女性、デロイト トーマツ コンサルティング)」
「自分がアサインされているプロジェクトではワークライフバランスは取れていると感じている。特に残業時間の管理は(上司の方針にもよるが)厳格に管理されているため、法外な残業時間になることはない。だが一部では残業の多いプロジェクトも存在するため、配属されたチーム次第だと思っていたほうがよい。(ITコンサルタント、女性、アクセンチュア)」
コロナ禍の「リモートワーク」がもたらした、業務時間への裁量と課題
2020年はじめからの新型コロナウィルス感染症の流行により、人々の行動が制限され、働き方の見直しが行われました。多くの企業でリモートワークやフレックスタイムの導入が進められ、個人の裁量で業務時間を調整できるようになったことで、不必要な残業が減り、プライベートとの両立がしやすくなったという声がランクイン企業のクチコミからも見られました。企業によって浸透度合いは異なるようですが、リモートワークの導入が残業時間削減に一定の影響を与えたことは間違いないでしょう。
一方、リモートワークによって働きやすさが向上したことで、プライベートとの境目が曖昧になる、いつでも働けることが長時間労働につながるという声も散見されました。昨今、コミュニケーション面や管理・評価における課題から、リモートワークを廃止する企業も出てきています。コロナ禍によってもたらされた新たな働き方が、今後どのように変化し根付いていくのか、OpenWorkでは引き続き注目していきたいと思います。
ランクイン企業の社員がOpenWorkに投稿した、リモートワークに関するクチコミ
「リモートワークが浸透しており、多くのミーティングがオンラインで行われる。オフィスもフリーアドレス。プロジェクトによっては、ほとんど出社せずに勤務することが可能。また、コアタイムなしのフレックスを採用しているため、時間の調整はしやすいと感じる。特に現在子育て中の社員は恩恵を感じているのではないかと思う。(コンサルタント、女性、PwCコンサルティング合同会社)」
「昨今では、リモート業務のスタイルが定着して、過度な残業などはかなり減っている。休日等の作業や業務もあることはあるが、かつてほど長時間労働の常態化はなくなってきている。(営業、男性、博報堂)」
「コロナで働き方が見直され在宅ワークが増えた。時差出勤も可能になり、出社しても在宅でも勤務が可能になり働きやすくなった。ただ部署によって、出社しないと仕事ができない部署とフルリモートでも仕事ができる部署があり不平等感はある。上司も積極的に在宅勤務している部署だと部下も在宅勤務しやすいが、上司がそうでないと出社を促されるようなことも聞いたので、まだ会社としての制度はこれからだと感じる。(事務、女性、三井住友信託銀行)」
「部署や上司にもよるかもしれませんが、柔軟にテレワークをすることができるため、プライベートとの両立はかなりしやすいと感じています。午前中のみのテレワークや帰宅後のテレワークも可能なので、子育てとの両立もしやすいです。今後より両立しやすい環境になっていくと思われます。(総合職、女性、経済産業省)」
「リモートのプロジェクトが多いため、ワークライフバランスが調整しやすい。ただ、リモートとはいえ、激務の日々が多く、朝から夜までずっとパソコンの前で作業したり、会議したりする日も多い。その分、移動時間がないのはありがたいけど、リモートだからという理由で逆に長時間働くことになるので、オン・オフの切り分けがまだできない人には疲れる可能性がある。(シニアコンサルタント、女性、EYストラテジー・アンド・コンサルティング)」
「もはや個人的な問題であるが、昨今のリモート環境下ではついつい就業時間外でも仕事に手を付けてしまいがちで、プライベートとの線引きが難しくなっているように感じる。通勤時間がないというのはラクである反面切り替えの難しさに繋がっていると思う。(プリセールスエンジニア、男性、日本アイ・ビー・エム)」
「フレックス勤務を導入しており、時間的拘束が少ない。また、リモートワーク中心で業務をする社員が多いため、場所的拘束も少ない。ただし、全社として出社を推奨する流れも生まれているため、今後はある程度出社が求められる可能性も。(マーケティング、男性、電通)」
対象データ
OpenWorkに投稿された会社評価レポート126,848件(現職社員による2015年及び2024年投稿分)を集計。