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団員インタビュー Vol.1 指揮者 阿曽沼 飛昂

2019.01.16 11:29

団員インタビューの記念すべき第1回目は、指揮者であり、シュタール・フィルハーモニー管弦楽団の発起人でもある、阿曽沼 飛昂(あそぬま ひだか)さんです!

シュタール・フィルハーモニー管弦楽団への想いや、プライベートのお話、また今回の演奏会より芸術監督・指揮者としてお越しいただいている大山 平一郎先生のお話など、たくさんうかがってきました!


シュタール・フィルハーモニー管弦楽団(以下、シュタールフィル。)は昨年、阿曽沼さんの呼びかけにより結成されたとのことですが、どのようなきっかけで結成されたのでしょうか?


 元々は、2013年に(一社)全日本特殊鋼流通協会様から「はがねの日記念ファミリーコンサート」の依頼演奏を受けて、年一回、大阪の中之島にある中央公会堂で演奏会をしていたのが始まりです。毎年、その都度いろいろな繋がりでメンバーを集めていたのですが、5回もやるとメンバーもだんだんと固定化されてきて、顔なじみの人が多くなりました。

 依頼公演でしたし、それなりに楽器が弾けるメンバーが集まっていたのですが、毎年集まっては数回ばーっと練習して本番後は解散、そして次の年になると完全にリセットされた状態でまた一から音楽作りをして…という繰り返しで、なんか凄くもったいないなと思って。これだけのメンバーが集まってせっかく演奏会をしているのに、蓄積されていくものがないことが残念だなと思っていたら、ちょうどメンバーの中でも、定期的に演奏会やりたいという声を多く聞くようになったので、それなら、とみんなでオケを立ち上げました。


今回は規模の小さい室内楽オーケストラ(チェンバーオーケストラ)とのことですが、何か狙いがあったんですか?


 ちゃんとオケとしての実力を積み上げることが出来るチェンバーオケをすることにしました。別に小さな規模の曲をやるだけのオケにしたかったわけではないのですが、チェンバーオケって一人一人の技量やアンサンブルの実力が如実に演奏に出ます。

 また、大きな編成のオケをやる時と比較して、奏法や、楽譜に書いてあることの解釈を揃えていくプロセスが演奏の質を大きく左右します。そういう環境下でオケとしての経験を積んでいくことが大切なんじゃないか、というドエムな発想です(笑)。

 元々寄せ集めオケだったわけですし、大きな曲をやる時は新しくメンバーを集めれば良いか、と。そのときにコアメンバーの奏法や楽譜の読み方が揃っていたら、新しく入る人も方向性が分かって合わせやすくていいんじゃないかと思っています。


団のコンセプトのようなものはありますか?


 組織の存在意義って色々あって良いと思いますし、みんなが同じ目的でこのオケにいなくても良いと思ってるんですけど、自分にとって、このオケをやる上でのコンセプト/目標は大きく2つあります。

 1つ目は大げさではありますが、クラシック音楽が持つ伝統芸術の要素をちゃんと伝えられるオケにしたいと思っています。クラシック音楽を愛する団体として、ただ単に好きだからクラシック音楽をやります、ではなく、巷に溢れる様々な種類の音楽の中で、なぜクラシック音楽を演奏するのか、なぜ聴いてもらいたいのか、ということに対する答えをしっかりと出していきたい。その時に室内楽的な編成で古典派の音楽に取り組むことは必須だと思います。今回の演奏会はまさにその第一歩ということになります。

 2つ目はやっぱりファミリーコンサートが起源のオケですので、老若男女誰でも楽しめるコンサートをやっていきたいです。クラシック音楽って高級な音楽、だけど退屈な音楽、そして何よりごく一部の人が楽しむ音楽、というイメージが強いかと思うのですが、そもそも高い芸術性を持っているクラシック音楽だからこそ、分け隔てなく多くの人が楽しめるものであるはずなんです。ただ演奏をするだけでなく、普通の演奏会にはないようなことも取り入れながら、少しでもクラシック音楽に親しんでもらえるような場を提供できたらと思っています。


今までは団のことについていろいろお聞きしましたが、次は阿曽沼さんのプライベートな部分もお聞きしたいと思います。まずは今までどのように音楽をされてきたのかを教えていただけますか?


 4歳の時にヴァイオリン始めました。始めたと言っても持たされた、という表現が正しくて、子供の頃はスポーツの方が好きでレッスンに行った時だけ楽器を持つという感じでした。中学の時に地元(倉敷)のジュニアオーケストラに入りまして、そこでみんなで演奏することの楽しさを知り、少しずつ楽器を持つ時間も増えていった感じです。

 そして大学では、京都大学交響楽団に入団したのですが、熱心にオーケストラ活動しすぎて、気づいたら10年も在学することになってしまいました(笑)。親は泣いてましたが(笑)、貴重な時間だったなと思っています。

10年⁉︎(笑) しかし、そういう経験が礎となり、シュタールフィルが生まれるきっかけになったのですね。ちなみに普段どのようなお仕事をされているのですか?


 大学で化学工学を専攻、大学院では燃料電池の研究をしていまして、今はエンジニアとして、大阪ガスで新エネルギーや環境技術の開発を行っています。会社でも気づいたら社内のマンドリン部や弦楽アンサンブルを指揮したりして、本当に仕事してるのか、と思われがちです…(苦笑)。

 ただエネルギー問題に少しでも関わりたいという思いから入社したので、微力ながらその一端(末端)を担うような仕事ができることにとてもやりがいを感じています。東日本大震災の原発事故や世界的な環境意識の高まりから、かつてない変化を迎えているエネルギー業界の中で、少しでも人類のよりよい未来のために貢献できたらと思っています。


お仕事も音楽も充実した毎日を送られているのですね。さて、今回の演奏会では前プロ(※演奏会のプログラムの最初の曲)を指揮をされますし、先ほどのお話で社内のサークルでも指揮をされているとのことですが、指揮はいつ頃からされてたのですか?


 大学オケに所属していたとき、年一回、団内で行う発表会があり、そこで同期だけ集まって演奏する“回生オケ”というもので指揮をしたのが僕の指揮デビューです。そこから指揮のおもしろさに目覚め、今に至るという感じですね。

 指揮を専門的に学んだことはないのですが、指揮の指導を受けてきたのは、ジュニアオーケストラ時代からお世話になっている中井章徳先生です。その中井先生の師匠が大山先生なので、僕は大山先生の孫弟子に当たります。まぁ大山先生には孫子分と言われてますが…(笑)。

※シュタール・フィルハーモニー管弦楽団は、2019年より芸術監督に大山 平一郎先生を、首席客演指揮者に中井 章徳先生をお迎えしています

(左から大山 平一郎先生、中井 章徳先生、阿曽沼さん)


そういった繋がりで大山先生とお知り合いになられたんですか?

 

 僕が学生オケに入った頃、大山先生は大阪シンフォニカ(現大阪交響楽団)の音楽監督をされていて、まだ大山先生のことを全然知らないときに、中井先生に連れられて先生の演奏会を聴きに行きました。エニグマというエルガーの曲をやってたんですけど、それがめちゃくちゃ印象に残って。この人に自分がいるオケを振って欲しいなぁと思って、中井先生を伝手にオファーをして京大オケの客演に来てもらいました。それがもう10年も前のことになります。今では孫子分として(笑)、指揮を指導してもらうだけでなく、色々な面でご指導いただいています。


大山先生はどのような方ですか?


 大山先生の経歴において、私は4つの大きな特徴があると思っています。そして、その4つを兼ね備えた音楽家は、世界でもかなり異例なんじゃないかと僕は思っています。

 1つ目はなんと言ってもオーケストラプレーヤーとしての側面です。ヴィオラ奏者として、ロサンゼルス・フィルハーモニック(以下、ロスフィル。)で長い間トップをつとめ、その間にバーンスタイン、ジュリーニ、メータといった数々の巨匠指揮者と共演しています。先生が指揮をする際、弦楽器は必ずボーイング入りの譜面を渡されますが、そこにはロスフィルの刻印が押してあることも少なくありません。バーンスタインがこの譜面を使って演奏したと考えると…とてもテンションが上がります(笑)。

 2つ目は指揮者としての側面です。先生の指揮者としてのキャリアはプレヴィンにロスフィルの副指揮者に任命されてから始まっているので、大山先生の指揮のベースは日本での指揮の教育にはありません。そのため先生の指揮は一般的な日本の指揮者の方々とは違い、かなり独特です。先生なりに考え抜かれた指揮法は、その独特さにビックリすると同時に、なるほどと納得させられます。それはまさに先生の音楽にも通じるところがあり、時に斬新に感じられる先生の曲の解釈も、徹底的に考え抜かれた上で構築されています。

 3つ目は室内楽プレーヤーとしての側面です。マルボロ、サンタフェ、ラホイヤといったアメリカの大きな音楽祭にヴィオラ奏者・音楽監督として参加し、クレーメル、マイスキー、プレヴィンなど多くの世界的プレーヤーと共演しています。

 そして最後の特徴は、教育者としての側面です。先生はカリフォルニア大学のサンタバーバラ校で30年以上にわたって教授として教鞭をとられています。若い音楽家を育てる指導力は世界的に評価されています。今回そんな先生を芸術監督に迎え、シュタフィルを何段にも成長させてくれると信じています。

阿曽沼さん、ありがとうございました!



阿曽沼 飛昂(あそぬま ひだか)


岡山県倉敷市出身。

京都大学工学部卒業後、大阪ガスに入社。エネルギー・環境関連の技術開発に従事する傍ら、社団法人 Music Dialogue の関西企画担当として室内楽の企画制作を行っている。

京都大学交響楽団でコンサートマスター、学生指揮者を歴任。

ヴァイオリンを入江洋文、阪中美幸、指揮を中井章徳、大山平一郎に師事。