フランス フリーランスヴァイオリニストとしての生活とアーティストビザ
フランス在住者なら皆さん共感できるであろう、
ふとした瞬間に不安が襲ってくるストレス案件であるビザの更新。
特にいつも私の申請しているPassport Talent, non salarié (パスポートタロン フリーランス用) というアーティストビザの更新は、
最大期間降りれば4年分取れるのですが、ケースによって期間がバラバラで、
数ヶ月と、却下いう結果にもなりうるため、この確証がない不安感は本当に嫌なものです。
そのアーティストビザの手続きが少し前に終わり、また新しいカードをいただけました!
今回は4年分のカードを無事貰えて、今後4年間ビザの心配をせずに過ごせると思うと、
心の負担から解放されて、やっと安心して日常生活に集中できるような気がします。
フリーランスでどうやって外国で生活して行けているのか、
またビザはどうやって取っているのか、気になる方もいらっしゃると思い、
このタイミングで今回まとめてみることにしました。
|私の働き方
私は現在、固定のポストがあるわけではなく、フリーランスとして活動しています。
どこかに永久雇用での契約では所属していませんが、メンバーとして在籍しているアンサンブルやプロダクション、そして毎月定期的に弾かせていただける国立オーケストラや団体がいくつかあり、それにプラスして室内楽の音楽祭や、ソロでのコンサートなど、
色々な編成で演奏する機会をいただいています。
数年前までは音楽学校で教えていましたが、演奏活動に集中すべく可愛い生徒たちとはお別れし、今は有難いことに演奏だけで生計を立てています。
スケジュール調整や、地方のお仕事の滞在で自分で宿や電車を毎回予約したり、複数のオーガナイザーと同時にやりとりしてプログラムを決めたりする時は少し大変ですが、
どこにも縛られずに、こうして自由に活動でき、毎回違った楽しみを味わえる環境は、ありがたいです。
いつも、また呼んでもらえるかな?見限られないかな?常に不安と緊張感があり、
プロの世界の厳しさもたくさん目の当たりにするので、
準備も本番も私にできる限り最善を尽くそうというその気持ちは、経験とともに年々増していっているように思います。
フランスでは外国人である上に、私よりも素晴らしいヴァイオリニストが沢山いるこの世の中、
演奏活動だけで生活していけることには、周りの方々に恵まれたというほかありません。
器用に世渡りも売り込みもできないタイプですが、
ご縁って意外なところで繋がっているんだなと思います。
例えば、数年前に受けて結果がだめだったオーディションで審査員だった方から、
実はあの時気に入ったんだよとオファーをいただくことが今年いくつかあり、
とりあえず毎回一生懸命自分らしく取り組めば、
いつか何かに繋がっているのかもと思う日々です。
そして、フランスのシステムは、フリーランスの音楽家の生活が成り立ちやすいお陰でもあります。
Intermittent de spectacle という舞台芸術関係者、
主に音楽家や俳優さん、照明さんや音響さんなどの技術さんを対象に申請できる、保証制度。契約上お給料が発生しない日=室内楽のリハーサルや個人練習、またはただの休暇に手当がもらえます。
このシステムの申請のためには、一定の基準のフランスでの契約数を毎年更新し続ける必要があり、誰でもなれるわけではありませんが、これが取れれば前年の仕事量(稼ぎ額)に応じて、一日にもらえる額が振りあてられます。
これを利用して仕事量をバランスよくオーガナイズできれば、練習時間も取れて、私のライフスタイルにはとても有難い制度です。
でも、この制度を申請するためにまず必要なのが、アーティストビザになるのです。
ということで、この制度の申請のためにビザを切り替えようと思ったのが、最初のきっかけで3年前のことになります。
|今までのビザ更新
私のビザ経歴は、学生ビザ6年→そこからアーティストビザという形です。
桐朋学園の大学を卒業して、フランスで音楽の勉強を続けるためにパリ国立音楽院に入学しました。
修士2年、室内楽修士2年、その後また別の編成での室内修士課程(途中離脱←)
と計5年間パリ音楽院の学生証があり、コロナ期間だったこともあり、なぜか長めに6年半分学生ビザがもらえました。
学生ビザは労働もOKなので、卒業後はそのビザで演奏と音楽学校で教えるお仕事をしていました。
パリの学生ビザが切れる時には、リヨン国立音楽院のアーティストディプロマの学生証があったので、
簡単な学生ビザ用の手続きのまま引き続き提出することもできましたが、その時すでにフリーランス保証制度に申請する条件を満たすお仕事の数はしていたので、
勇気を持ってこの機会にアーティストビザに切り替えしてみました。
|アーティストビザ更新のために
このフリーランスのビザ申請、一番厄介なのは
手続きに必要な書類が結局何なのか、いまいち定かではないこと。
収入と仕事が今後もあるかを証明するのが、一番の目的ですが、
どのくらいの資料を集めるべきかは正直気合次第という感じがします。
フリーランスだと、定期的にお仕事させてもらっている団体がいくつかあり、今後もそれが続くことがわかっていても、法的効力のある契約書は毎回の公演ごと。
何年間か先までの仕事数&収入の安定の証明を主に目的としたお役所への提出には、
効率が悪い&説得力が薄い状況です。
とりあえず、マックスに資料を集められるだけ集めて提出しました。
|アーティストビザ初申請時
必要書類の用意で大変だったのが、過去一年分の収入証明。
毎月ある一定の条件以上の収入があることを証明するためです。
今回の申請では納税証明を一枚出しただけで済みましたが、初回の時は何故そうしたのか忘れてしまいましたが、一つ一つ書類を集めました。
過去一年間のものを出すには、公演毎契約だと全ての支払い証明書を出さなければいけなく、
私は、書類を綺麗に全部項目ごとにファイリングなんてしていなかったので
莫大な数を家中、パソコン中引っ掛け回し探すところから始まりました。
しかも、アップロードできるファイル数がとてつもなく少なく、
圧縮アプリでひたすら一つ一つの資料を軽くして、一つのファイルにして、、
その効率の悪すぎる作業で疲れ果てたのを覚えています。笑
当時、教えていた音楽学校の分の収入は演奏活動とは別なので、
その証明には含むことはできませんでした。
でも、それより一番大変だったのが今後の収入を証明する資料の提出。
決まっているお仕事や契約書が早めにもらえると良いのですが、
そうは言っても数年間の収入を証明できる書類はなかなかないので、これがかなりドキドキなステップです。
定期的に呼んでくれる団体の方たちや、毎年開かれる音楽祭の主催者に、
契約書ほどの法的効力はないけれど、今後一緒に働きます、今後も毎年呼びますというような意向を書類に書いていただきました。
初めての申請の際には、国立オーケストラとのプロジェクトが
アーティストディプロマコースでいくつか契約があり、そこに書いていただいた今後数ヶ月の予定や、すでにそのオーケストラとお仕事をして過去に支払いが行われた証拠があったのは、心強かったです。
また、定期的に弾いているアンサンブルのプランニングが、
いいタイミングで一年先まで貰えたのもラッキーでした。
申請の時には、7通ほどアンサンブルやオーガイザーにこのような書類をお願いしたのと、
2通ほど先生や演奏家の方に推薦書を書いてもらいした。
あとは、アーティストとしての能力を証明する資料とのことだったので、
今までに出演した知名度のある音楽祭や、ソリストで弾かせてもらったコンサートの画像、
定期的に弾かせてもらってるコンサートの情報
参加したCD録音や出演したTV番組などをファイルにしました。
クラシックのことを知っている人向けの資料ではないので、
役所の人が誰でも知ってそうな名前、企業やメディアでのお仕事があれば、それを出すのが良いと聞きました。
|初申請後のまさかのハプニング
その後、「無事四年分を許可します。」との公式な通知が来て、初申請で最大期間でた!と大喜びしていたのですが、
警察署にとりに行ったらカード記載が「13ヶ月許可、初回申請なので13ヶ月のビザを出した後に収入チェックします。」とのコメント付きで、困惑&落胆。
もちろん窓口の人に言っても、私は分からないから後日ここに連絡して〜くらいで解決せず。
結果、手違いでした。
確かに、その時は四年も先のお仕事や収入なんて全く提出できていなかったので、
無理もなく取れただけありがたかったのですが。束の間の大喜び&落胆はしょうがないとして、また来年頑張ろうと思っていたら、大変だったのはこの先。
資料提出をして公式通知の来た、更新する外国局(ANEF)のサイトのアカウント上では、ずっと期限が4年になっているため、
カード記載よりも更新の手続きが随分先な状態。
期限の切れる4ヶ月前からしかサイトでの手続きができないため、まだ更新時期ではないということでオンラインでは手続きが出来なくなってしまいました。
とっても繋がりにくい電話窓口に頑張って電話しても、外国局は四年分取れてるから更新しなくて良いと言われ希望が出た一方、カードを発行する警察署には更新しなければいけないと言われ….言い分が違うので、どちらも、責任転嫁でたらい回し状態で全く解決できない。
ネットで探しても、この二つの機関の認識相違ミス?のようなケースが見当たらなく
何が起きているんだかよくわからない状況でした。
電話やメールで話しても一向に話が進まないので、対面でこれを話して解決するしかありませんでした。
ですが、ビザの更新はコロナ以降インターネットでの手続きに変わっていたので、
役所で更新の予約を取るのはほぼ不可能で、
試行錯誤して見つけた抜け道は、“家にインターネット環境がない人のためのサポート窓口“の予約。とりあえず、役所の人に会うためにそこに向かいました(笑)
結果、問題を上の方に報告してもらえて後日問題を直談判して更新するための予約が取れて一安心。
ですが、その際に提出する資料などの明記もなく、一応100ページほど前回出したものと同じような資料を持参し、案の定提出を求められました。
この予約の後に、元々のバグ分の残り年数をもらえると聞いていたので、勝手に解決したような気になっていて、年単位での仕事を証明するような書類はほとんど用意していませんでした。
直接問題を報告できて安心していたのに、数ヶ月後にいざ出来上がったカードを受け取りに行ったら、また一年半分しか出ていないというまさかの悲劇。
しかも、それを知った時には、このトラブルによってたらい回しになっている期間もカウントされていて、すでに残りが一年切っている状態。
またすぐ、更新準備に取り掛からなければで、ビザ受け取りと共に既に絶望的な気分でした。
そして、そもそもの問題点であったアカウント上の更新時期はまだ先のままで、次回また期限が切れる際もオンラインでは更新できないため、バグ問題の解決には至らず。
もうこんな意味のわからないシステムトラブルのゴタゴタには疲れてしまったので、
今回の更新では弁護士さんにお願いすることにしました。
|4年間のビザ取得のためにしたこと
弁護士さんに依頼して状況を説明すると、すぐに役所での予約を取ってくれました。
直接予約を取るまでに数ヶ月かかった前回の苦労はもう避けたかった&最近の役所の状況からして、弁護士さんの助けなしに予約を取るのはほぼ無理だったようなので、この時点で既にお願いしてよかったと思いました。
今回の更新の際には、
前回の資料提出の時よりも、定期的に呼んでもらえる複数の国立オーケストラのお仕事が増えたり、公立機関の方が関わっているお仕事などもあり、そのような団体やオーケストラがコンサートの契約証明も随分と先まで出してくれることに協力してくれ、資料の効力はだいぶ上がっていました。
弁護士さんに、何を用意すれば良いか聞いたところ、
とりあえず頼めるところ全部に、できるだけ多くの日程と資料をお願いして集めて!
とのことで、この資料提出の目的は、役所側に数年後にも毎月十分な額の稼ぎがあって安全な人ですよということをことを証明することで、具体的な数字、日程が一番大事とのことでした。
フリーランスだと、数ヶ月前ならまだしも、数年後の収入を今から書類で証明するなんて無理だということを十分に説明しましたが、それでも
過去の収入額や、今後のお仕事でいただける(と予想される)給与額や決まっているお仕事をできるだけ多く集めて表にしました。
それに加え、自分で更新手続きをした時には全く用意していかなった、雇用主の経済状況などを証明する書類も提出しました。
弁護士さんは、役所での予約の日にも同行してくれて、感じの悪くやる気なさそうな役所の窓口に人たち(行ったことある人はわかるはず!)にも、物凄い迫力で問題点と状況説明&説得をしてくれて、圧倒されとっても頼もしかったです。
というわけで、今回は弁護士さんの多大なサポートによって、スムーズに4年分いただくことができ、インターネット上のバグ問題も無事解決しました。
今回のこの依頼では、
不可能に近い予約の取得、提出書類に関する雇用主との連絡、資料のまとめ、
提出の際の同行、そして役所の方との連絡を請け負ってくれました。
びっくりしたのは、カードの受け取りの際に、全く存在も知らなかった別階のオフィスでのRDVの呼び出しがメールできて、指定時間に行くと個人面談のようで5分で終わりました。
というのも、受け取りは最近かなり時間がかかることで有名で、前回は5時間以上寒い雨の中並び大変だったので、この差は大きかったです。
このビザはもらえる期間が1年でも4年でも、225€。
なので、ストレスや色々な面倒を含めて1年ちょっとしか貰えず毎回225€払うなら、
少し費用はかかっても弁護士さんにお願いして、長い期間貰えた方が結果全然良かったなと思いました。
手続きにあたって、色々な方に書類を書いてもらったり、ビザの先輩方にアドヴァイスをいただいたりと沢山の方に助けていただき、本当におかげさまです。
そして、過去のお仕事の資料を集める作業は、
その一つ一つがビザの取得のために貢献している大切なエレメントだと実感でき、
改めて雇用してくれた方々への感謝が募る時間でした。
今回のビザの取得までに色々な大変な思いをしたので、
私のこの経験が誰かの参考になったらなと、記録に残しておくことにしました。
自分の音楽活動に集中できる環境を思う存分満喫しながら、
今後もフランスでの貴重な経験と時間を味わい、深めていきたいと思います。