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菊池洋勝さん

2024.11.10 08:02

五島高資

俳句スクエア同人の菊池洋勝さんが句集『聖樹』を刊行されました。ご恵贈頂き心よりお礼申し上げます。菊池さんの句では北大路翼編著『アウトロー俳句』に掲載された「呼吸器と同じコンセントに聖樹」が感銘深い。ますますのご活躍を!!

菊池洋勝・句集『聖樹』(毎週web句会)

春暁や尿する音に寝たふりす  菊池洋勝

春爛漫ナースに糞を褒めらるる  同

風船にたとふ腹腔鏡手術  同

菜の花や逆さに立てるマヨネーズ  同

種のある葡萄と後で聞かされる  同z

菊池洋勝@kikutitc

手足の筋肉が萎えていく持病があり在宅療養しながら認定NPO法人とちぎボランティアネットワーク(@tochigivnet)発行のボラ情報に表紙イラストを連載している。病床にあって執筆した子規にリスペクトして俳句を続けている。「屍派」アウトロー俳句(河出書房新社)発売中

https://www.shunyodo.co.jp/blog/2019/11/outlaw_taidan_02/ 【【アウトロー対談】北大路翼×白石和彌監督〈後編〉「屍派」とエロス。生と死はとても近いもの】


https://ddnavi.com/news/427093/a/  【元ホスト、女装家、鬱病・依存症患者、ニート…“生きづらさ”をストレートに詠んだ「アウトロー俳句」】より

新宿歌舞伎町俳句一家「屍派」 アウトロー俳句

 いき場をなくした“はみ出し者”たちが「生きづらさ」をストレートに詠んだ句集、『新宿歌舞伎町俳句一家「屍派」アウトロー俳句』が、2017年12月19日(火)に発売された。

 歌舞伎町の路地の奥、現代芸術家の会田誠から引き継いだ「砂の城」を拠点に屍派を束ねるのが、同書の編者・北大路翼。昼は会社員として働きつつ、句集『天使の涎』で第7回田中裕明賞を受賞した気鋭の俳人だ。

 屍派に集まるメンバーは元ホスト、バーテンダー、女装家、鬱病・依存症患者、ニートなど、行き場をなくした“はみ出し者(アウトロー)”たち。「生きづらさ」を抱える彼らが夜な夜な「砂の城」で詠み続ける型破りな俳句は、切なさ、やりきれなさの感情がまじり合った、不思議な魅力にあふれている。

 同書は、屍派家元の北大路と、そのメンバーが詠んだ2000句以上のなかから珠玉の108句を厳選し、屍派にまつわるストーリーを交えて紹介。「軽トラで持つていかれたぬひぐるみ」「キャバ嬢と見てゐるライバル店の火事」「駐車場雪に土下座の跡残る」「春一番次は裁判所で会はう」「春の風邪キスをしてもうつらない」「蒲公英は倒れてゐることが多い」「ウーロンハイたった一人が愛せない」「六本木ヒルズに行つたことがある」など…。新宿のアウトローたちが贈る、不寛容な時代に疲れた人のためのアンソロジー(句集)になっている。

http://rekijitsu.cocolog-nifty.com/blog/2017/02/post-25d0.html 【ハートネットTV 「歌舞伎町の俳句集団」  NHK Eテレ】より

「歌舞伎町の俳句集団」を視聴した。

歌舞伎町俳句一家、その名前は「屍派」。ぎりぎりのところで生きている人たち。

その人たちの生の確認でもある「俳句」。

俳句を作ることによって、ダメである自分自身が救われる、とも語るのを聴いていると、あぁ、わたしとおんなじだな、と共感する。

境涯は多少違えど、自分自身が救われたいのだ。わたしも。

あるがままの自分でいたい、とも思う。(なかなか難しいことだが……)

       俺のやうだよ雪になりきれない雨は   北大路翼

       蒲公英は倒れてゐることが多い     五十嵐筝曲

       雑踏の中にざくざく在る孤独    白熊 左愉

       ライオンを愛したくても檻の中       咲良あぽろ

       君が死ぬ金魚じゃないから流せない   一本足 

みんな何かを抱えて生きている。

その何かをもひっくるめて、受け入れてくれる。

       居場所ならここにあったよ歌舞伎町

それが「屍派」なのか。

主宰の北大路翼なのか。

翼の〈翼〉はだいじょうぶ、か?

きさらぎのつめたい空を翔ぶことができる、のか?

翔び続けることができる、のか?

☆     ☆

なお、北大路翼の句集『天使の涎』の紹介を拙ブログ「暦日夕焼け通信」の

2016年7月1日に掲載している。


https://sectpoclit.com/doitanka-4/ 【呼吸器と同じコンセントに聖樹 菊池洋勝【季語=聖樹(冬)】】より

1971年生まれ, 「ASYL」, 「屍派」, 「楽園」, 「里」, 「雪華」, と, に, コンセント, 冬の季語, 同じ, 呼吸器, 土井探花, 聖樹, 菊池洋勝

呼吸器と同じコンセントに聖樹  菊池洋勝

 聖歌や讃美歌からポップスまで、誰にも好きなクリスマスソングがあるように、俳句を嗜む方にも「推し」のクリスマス句があると思う。掲句がわたしにとってそれにあたる。

 作者は「先天性筋ジストロフィー」を患っている。筋力が徐々に弱ってゆく指定難病であり、人口呼吸器は生命維持の為に必要不可欠なものの一つだ。そんな呼吸器の電源が電飾の点いたクリスマスツリーと同じコンセントから取られている。或いはタコ足配線かもしれない。多くの人がこの圧倒的リアルさと強い皮肉の表出を賞賛している。もちろんこの無責任なコンセントに頼って生きざるを得ない悲哀もあるがそれをも自虐的ユーモアに昇華するのだから只者ではない。

 比べるのも烏滸がましいが、わたしも宿痾を持つ人間だ。境涯はもちろん詠む。だが辛さを主張するばかりで菊池洋勝の軽やかさシニカルさの境地には一生届きそうにない。掲句を愛する所以である。

 作者は2021年に第一句集『聖樹』を毎週web句会より上梓した。この連載を読んで興味を持たれた方は2023年に喜怒哀楽書房より発行された電子書籍版を手に入れて欲しい。口語俳句ではない句の方が多いが

 春爛漫ナースに糞を褒めらるる   看護婦の透ける下着も春めける

 遠足はいつも八度の熱が出る   立ちバックする足がある春の夢

 余命半年の変態髪洗ふ

など実に生々しい魅力を持つ句群である。

 これは単なる飛躍なのだが、クリスマスのイルミネーションを見ると、病める地球とこの浮かれた電飾もやはり同じコンセントを共有しているように感じる。あくまで飛躍である。あくまで。