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雷霆を告げる音

1つの点

2019.01.17 14:19

無機質な街並みに、

暗闇のような影が伸びる。


「めんどうだなぁ」


男は呟くように愚痴をこぼした。

彼の身体にビニールのような、

トカゲの皮膚のような黒いスーツが縫い目に合わせて丁寧に折り重なる。


そのスーツは服というよりは皮膚だろう、

それほどタイトに見える。

そんななか先程の影は大きなビルの上から地上に這って、

この地域の一部を覆っている。


夜数少ない人々に影が身体に纏わりつく、

見た目には良いものとは思えない、

だが、纏わりついた影に一般の人間には何も感じられず、

ただただ影に、闇に飲まれて行く。


影に飲まれた土地や空間、人間は向こうの世界に逝ってしまうのだ。


ゆっくりだが影の勢力は確実に、人間界を包み込んでいる。


「気色悪いことするよな」


彼は一体誰に話しかけているのか?

彼は黒いカフェレーサーのバイクに跨り、

トカゲの皮膚を身体に履いているようだった。


でも、それは自らの手ではなく、自然に皮膚の上にのっているように見える。

そして彼は今大きな交差点の真ん中、歩道橋がありそれは円形であった。

その全ての真ん中、ここがまるで世界の中心かのように、彼は危険な場所に鎮座していた。


彼はバイクから降りる、

するとバイクは勝手に動き始め、路肩にバイクスタンドまで1人でに出て、安全な場所に止まった。


交差点の向こうから暴走している車が、

猛スピードでこちらに侵入してくる。


中央分離帯に車が当たり、

大きな音、火花、そして車体のフロントが大きく畝り宙に浮く。

彼の上空を飛びながら車は向こうの歩道にまで吹き飛んで行った。


「その運転手の体は返してもらう、

お前らに喰われたままでは、地球の土に還れないんでな」


発した言葉と同時に彼の跳躍は、

事故を起こした車の上まで一瞬にして接近していた。

爆発した車から黒い人型の異物が、勢いも借りて飛び出してきた。


「お前はまだ人間側か?地球はもう終わりなのぅぁっら!?」


異物は言葉を使える、たまにノイズのような音が聞こえる。

彼はその言葉に反応することなく、

容赦なく異物を叩く、

異物の顔であろうか?そこに気持ちいいぐらい完璧に拳が食い込み、言葉を遮る。


「黙れ、お前の汚ねぇ皮を剥いでやる、

その身体返してもらおうか」

彼の言葉にも小さなノイズが入る。


異物は街路樹まで吹き飛ばされ、

ガサガサとそこから出てきた。


「まあ、お互い生きるか死ぬかだからな、

それよりお前も酷いよな、人間の体をブん殴るなんて」


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。


息遣いは共鳴してるようであった。







-黒と白- Coming soon