構造主義の解説の仕方
今日の現代神話学の講義では、レヴィ=ストロースを取り上げた。まず構造主義の概説をし、そのあとレヴィ=ストロースの学説(「神話論理」四部作におけるそれ)を紹介する、という段取りで話を進めたが、学生たちはどちらかといえば前者のほうに興味をもってくれたようだ。
構造主義のことは、大学の講義でこれまで何度か話をしたことがあるが、説明の仕方について、いつも悩む。僕自身が構造主義が好きで、学生たちにはきちんと理解してほしいという思いが強いので、そのぶんいっそう準備に力が入ることになる。今回の場合は、少し前に読んで優れていると思った、武田悠一『読むことの可能性―文学理論への招待』の解説(第4章)を借用することにした。僕がとくに気に入っているのは、ソシュールの「言語は、ネガティヴな差異のシステムである」という主張にかんする、Q&A形式の補足説明の部分(pp. 143-145)だ。非ヨーロッパ文化圏の人にbrownの意味を知ってもらうためには、brownの色をした物を何百、何千と示しても無駄で、brownと、たとえばred、yellow、blackの違いを教える(つまり、何がbrownではないのかを教える)必要がある、という説明である(この例自体は、ジョナサン・カラー『ソシュール』が出典となっている)。
こういった補助資料の力もあり、学生にはおおよそうまく構造主義のことが伝わったようだが、「関連の本(入門書)をいくつか紹介してほしい」という声もあったので、次回までにふさわしいものをリスト化しておくつもりだ。学生のときに読んだ数冊が本棚から久しぶりに取り出されることになるだろう。この類の読書には胸が躍る。
【参考文献】
武田悠一『読むことの可能性―文学理論への招待』彩流社、2017年。