川越えて朋へつづくや枯尾花 五島高資
https://note.com/hmjm292709/n/n5c3e8e278107 【矢作直樹・村上和雄対談『神(サムシング・グレート)と見えない世界』】より
不動産相続手続きも終わり、のんびりとした気分で好きなスピリチュアル系の本を読んでみた。
以前も紹介したことがある矢作直樹氏(東京大学大学院医学系研究科教授、医学部附属病院 救急部・集中治療部部長、医学博士)と村上和雄氏(筑波大学名誉教授、農学博士)の二人の科学者による対談本『神(サムシング・グレート)と見えない世界』です。
スピリチュアルとなると、科学者からトンデモ系として排除されることになりますが、お二人はれっきとした科学者であり、しかも矢作氏は救急医療分野の方なので、安心して読めます。
矢作という名で、昔テレビ番組でUFOや超常現象を説明していた矢追純一という名を連想します。
この番組では、物理学者大槻義彦が出場してきて、矢追氏の説をことごとく科学的な根拠で否定していたことを思い出すからです。
私は、機械工学を学んでいるため、数学・物理が好きなので、大槻氏側の人間なのですが、実は、UFO、宇宙人、霊、魂などのスピリチュアル系に惹かれています。
森羅万象は、全て科学で説明できるのであり、説明できないようなスピリチュアルなものは、非科学的なものなので、無視してよいというある種科学の傲慢な態度には、反感を持っている側になります。
特に、老人ともなると、あの世、霊性、魂などに興味を持つのは当然ではとさえ考えています。その意味でも本書は、この考え方を補強してくれます。
村上氏は、神について下記のように述べています。
むしろ、神の存在を全面否定してしまうと、無理があるとわかります。人間の遺伝子がまったくのでたらめな配列・構成で組成されるということは絶対にありえない。私は、研究者としての経験からそう思うようになりました。
(中略)
一三七億年前にビッグバンという現象があり、宇宙が誕生した、今も宇宙は膨張しつづけていると言うけれど、ではどうして素粒子から人間ができたのかという疑問が残ります。
素粒子から原子や分子ができて、それから星ができて、星から太陽系が生まれて、地球ができて、人ができるというのだから、これはもう膨大な作業です。
(中略)
素粒子みたいな極微の世界から、宇宙の生成と発展に至るまで、人智を超える「神の働き」があったとしか思えないというのが、私の考えです。
人智を超える何者か(サムシング・グレート)を村上氏は「神」と名づけています。
一方、『利己的な遺伝子』で有名な進化生物学者のリチャード・ドーキンスは神の存在をまっこうから否定している。
これには、二人ともに異論を唱えています。「遺伝子学でも大脳生理学でも、これだけ進歩した現代でもわからないことが山のようにあり、それらが全部、この先円満解決するのかと尋ねられれば、うんと頷くにはとても無理あると思う」というわけです。
矢作氏によると、神を信じている医師は、意外に多いようです。救急医療のように泥臭い現場では、理屈から外れるというか、理屈に合わないことを日々経験するからということです。
矢作氏は、霊魂・霊・魂はさまざまに用いられ混乱があるというのです。
霊魂は今世で肉体にまとっている状態を「魂」と呼ぶ。
シルバーコード(魂の緒)が切れて肉体を離れたものを「霊」と呼ぶ。
今世での肉体に対して見えない「からだ」を霊的(慣習的に定着している言葉)な体といういう意味で「霊体」とする。
したがって霊魂と霊体は同義となる。
人間は、霊魂は永遠という事実を理解してはじめて、自分がこの世界で生きることの意味が、おぼろげながらわかるのだ、と矢作氏は主張する。
そうでなければ、仮にこの人生ですべてがおしまいということなら、多くの現象の意味が理解できないからというわけです。
仏教では、修行することで、煩悩を消尽し、悟ることによって、輪廻しない、つまりこの世には戻らないことを究極の目的としている。
一方、悟りには縁のない凡庸な人にとっては、魂が不滅で、転生して、人生をやり直せるから死を恐れることはないということであろうか。
村上氏は、依存症こそ「スピリチュアルな病」ではないかと述べています。
どういうことでしょうか。
心の働きによって、遺伝子のスイッチがオンになったりオフになったりすることが、その裏づけでもあります。
つまり依存症は、霊性に関する病というわけです。
霊的に健康な状態とは、つまり「大いなる存在」ときちんとつながっている状態です。神でもいいし、祖先でもいい、その人にとっての大いなる存在です。
しかし、依存症になると大いなる存在とのつながりを確認・実感できなくなり、その人が依存するものとの関係性だけが強化されます。
そして、精神的な孤独に陥り、判断力が乏しくなり、周囲とのコミュニケーションが完全に壊れてしまいます。
これは、肉体ではなくて魂レベルの病と言わざるをえないのです。だから、もはや薬で治療できる範疇ではない、と述べています。
そして、矢作氏は、人が病気になる理由として、「肉体が病んでいる場合」と「霊体が病んでいる場合」の二つを提示しています。
治療者は、肉体レベルか、その外側なのかを見きわめることが肝要だと述べる。
心や体という「現象として見えている」不調は、肉体と霊体のどこが悪いかによってまったく違う顔を見せます。
スピリチュアルヒーリングは霊体に働くようで、気功は肉体と宇宙での気の干渉現象を治しているようです。
ハンドヒーリングや気功という施術法は、怪しげとかオカルト扱いされていて、日本では医学的な検証を避けている側面が強いが、欧米の医学界では本格的に取り組んでいるそうです。
矢作氏は、「現象」としてとらえるのか「実用」でとらえるのかという認知の違いであり、ハンドヒーリングや気功は実用面でとらえればよいとしています。
子どものころ、母親世代の人は、霊媒師たちを信頼していて、何と非科学的なことを信じているのかと半ば呆れ顔で見ていたが、77歳となってみると、全否定はできないなと考えるようになっています。
医学教育では、ハンドヒーリングや気功にはまったく触れていない。科学は、実証されたものだけを伝えるのをよしとするのが作法で、客観的な計測器で計測できないものは「存在しない」と帰結する、もしくは無視してきたことの弊害であろうか。