うつつより富士を望むや枯尾花
額へと燃え移りたる尾花かな 高資
うつつより富士を望むや枯尾花 高資 — 場所: 江ノ島
https://www.nwn.jp/feature/201121manyo_susuki/ 【万葉植物散策〜ススキ(尾花)】より
人皆は 萩を秋と言ふ よし吾は 尾花が末(うれ)を 秋とは言はむ 作者未詳
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と有名なことわざがありますが、この「尾花」とはススキのこと。怖い怖いと思っていると、枯れたススキでも幽霊に見えてしまうとの意味です。何事に対しても、過度に疑心暗鬼になってはいけませんね。
ススキはイネ科で、お月見にはハギと共にお供えするおなじみの植物です。和歌山県では生石高原が有名で、シーズンには車の大渋滞が起こります。確かに生石高原のような群生を眺めるのは最高ですが、ススキは街中でも空き地でも、それこそどんな所にでも生えます。ただし、すぐに刈られてしまう場合も多く、郊外に行かないとスケールの大きな株を見るのは難しいでしょう。紀伊風土記の丘でも至る所で目にします。写真は大日山35号墳で撮ったものです。
ところで最近、奈良や大阪へ行く自動車道沿いで、ススキの2倍ほども背丈がある植物をよく見かけるようになりました。ヨシススキと呼ばれる外来植物です。両者が混じって生えていることが多いので、機会があれば見比べてください。
万葉集にはススキを詠んだこんな歌があります。
「人皆は 萩を秋と言ふ よし吾は 尾花が末を 秋とは言はむ」
みんなが秋を代表する花はハギだと言うのなら、私はススキの穂こそが秋の代表だと言おう…。ちょっとへそ曲がりな歌ではありますが、カラフルなものばかりに目を奪われることなく、モノトーンの植物にも風情を感じる作者の豊かな感性がにじみ出ていますね。 (和歌山県立紀伊風土記の丘、松下太)
(ニュース和歌山/2020年11月21日更新)
https://kashima-able.com/news/archives/396 【尾花(おばな)】より
尾 花(おばな)
秋の七草のひとつ尾花は、ススキの別名。穂花が動物のしっぽに似ている所からきています。
また、漢字では草が亡びると書いて「芒(ススキ)」、または「薄」とも書くようです。
そんな尾花ですが、嬉野市の大野原高原では、見事な尾花の群生が広がっています。まるで毛糸の絨毯高原のような錯覚を起こしてしまいそうです。
私は、尾花と聞くと、「枯れ尾花」を連想し「幽霊の正体見たり枯れ尾花」につながります。
尾花は、風に揺れると「こっちへいらっしゃい」と誘うように揺れ動きます。
このことから尾花には「招く」という意味があるらしく平安時代の和歌にも詠まれています。
「花薄(はなすすき) まねかばここに とまりなむ いずれの野辺も つひのすみかぞ」(源親元)
昔の野っ原では「野辺送り」というように、人が亡くなるとお棺を担いで行って野辺で荼毘(ダビ)に付すことがありました。
そのような場所ですから、昔の人々は、枯れ尾花が「こっちへおいで」と招き誘うように揺れているのをみれば、あの世からきた幽霊が招いていると思い込み、きっと怖くなって走って逃げ去ったことでしょう。
思い込みこそ怖いですね。