プロと線引きをしないでいいこともたくさんある
学生の頃「プロって音出しの時点からもう違うよね」なんて話を昔はよくしていました。
「だってプロだし、そりゃうまいよね」すげーなー、うめーなー、となんだか他人事のように。
分析力が低かった。なぜもっと考えなかったんだろう、と当時の自分に思います。
どうして上手だなと思うのか、そんなに難しい話じゃないと思うのです。
きっと、下手だな、って思うところがないからなのでしょう。当たり前だろって?
じゃあ下手だなって思うのはどんなとき?
思ったように音が出せていない(ように見える)
出した音が不安定(音色、安定感)
音痴に聴こえる(音程感)
単なる音出しだったらメロディではないので歌う表現力よりもこういった基礎的なことが前面に出てくると思います。
ですから、「音出しの時点でうめーなー」と思うのはこの逆であればいいわけで、
すんなり音が出せている(ように見える)
出した音が安定している(音色が美しい)
音程感が良い(ソルフェージュ力が高い)
すんなり出せている、というのは見た目的な部分が大きくて、マウスピースを当てるときにも、ああでもないこうでもないと不安そうに何度も当てては離してを繰り返していると、見ている側も不安になります。
安定している人は、すんなり構えて、きちんとしたルーティンがあって、音を出しているので、そのスマートさが上手に見えるわけです。
音色に関してもそのセッティングと関連性がありますが、きちんとした音の出し方が確立されていると音色も安定します。
その美しい音色を音程感良く音階などを演奏していれば、もう「ああ上手な人だ」と感じてもらえることでしょう。
「そんなことできないし!だって上手じゃないもん!」
とか言わないでください。上手な人のそうした行為って、意識したり真似したりするのは難しいことではないはずです。スムーズで丁寧なセッティングのルーティンを心がけることや、美しい音色を追求すること、美しい音程感を持って音階を演奏しようとする心がけ、そうしたひとつひとつが演奏レベルを成長させることもたくさんあります。
楽器の演奏は「奏法」というマニュアルを頭で覚えてそれを実際の動きに当てはめれば上手な演奏になる、というまるで「数学の公式を覚えたら問題が解ける」みたいに思ってはいけません。
僕はレッスンで音が出る原理やセッティング、音域変化などを体の断面図や言葉で解説することが多々ありますが、その情報がすべてだと思ってしまうと、全然実現できないという状態に陥ります。
僕が話しているその内容はあくまでも僕が実際にやっている「主観」をさらに言語化したものですから、参考程度にしかならず、それを生徒さんは「自分だったらどうするか」というもう1ステップが絶対に必要になります。
「奏法」はマニュアル化不可能なものです。なぜなら人間には個性があるから。機械のように量産されたまったく同じコピーではないのですから、自分の奏法は自分で見つけ、確立するしかないのです。
そのためのきっかけとして上手な人を見て、分析し、コピーしてみたり自分だったらどうするか考えて実験してみたり、そうしたきっかけってとても大切です。
上手になりたければ上手になればいいのです!
荻原明(おぎわらあきら)