二十億光年の孤独
先日、詩人の谷川俊太郎さんがお亡くなりになりました。92歳でした。瑞々しい詩を書く方だなあと思っていました。素晴らしい作品をたくさん残しました。今回は代表作のひとつである『二十億光年の孤独(1952年)』を紹介します。
『二十億光年の孤独』
人類は小さな球の上で 眠り起きそして働き ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で 何をしてるか 僕は知らない (或いは ネリリし キルルし ハララしているか) しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする それはまったくたしかなことだ
万有引力とは ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に 僕は思わずくしゃみをした
なぜ、「人類は、火星に仲間を欲しがる」のでしょう?
それは「孤独」だからです。孤独なとき、家族や友人ではなく、火星人に思いを馳せるというのが、この詩の面白さの一つです。この詩人の孤独は、社会の中や人間集団の中の孤独というより、生あるものとしてこの宇宙に生まれたもの、あるいは投げ出されたものが持つ孤独です。詩人が火星人の生活を仮想するのは、この宇宙に生まれた孤独な者として、同じ宇宙で、同じ孤独を持つ者への呼びかけです。
そして、なぜ最後に「僕はくしゃみをした」のでしょう?
「くしゃみが出る時ってどんな時?」と考えればわかりますね。人がうわさ話をしたときです。人類が火星人のうわさ話をしたからか、火星人が人類のうわさ話をしたからです。
谷川俊太郎さんは生前、「死がないと生きることが簡潔しない。死んだあとが楽しみだ」と言ったそうです。彼の魂は、今頃、火星にいるのかなあと思わずにはいられません。
今日の切り絵は、「孤独」です。
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