三代目❤夢小説 『NAOTO編53』
民宿に帰ってくると、まりあの母が待ち構えていた。
「まりあ、碧さんから何度も連絡があったよ」
「スマホ持って出なかったから…すぐに掛け直すね、母さん」
まりあは直人に軽く会釈をして、厨房の奥に消えていった。
まりあの母はカウンターの中から直人に笑顔を向けて言った。
「お帰りなさい。ハナリはどうでした?」
「あ…最高でした!お借りしてたウェットスーツ洗いたいんですが…」
「ああ、外のホース使って下さい。すぐに夕食ご用意しますね」
「ありがとうございます」
ーシュノーケリングもそこそこに、娘さんとキスしてたなんて、言えるわけがない。
直人の心がチクンと音を立てた。
レンタルしていた物を綺麗に洗って返し部屋に戻ると、iPadに大量のメールとデータが届いていた。
直人はiPad片手にカウンターへやって来て、まりあの母に断って、データをチェックしながら用意された夕食を食べ始めた。
「オリオンビールでいいですか?」
「あ、まだデータのチェックがあるので、アイスコーヒーいただけますか?」
「はい」
iPadを操作していると、厨房の奥からまりあが顔を出して母に言った。
「母さん、明日東京に帰るね」
直人も自然に反応する。
「また急に。碧さん何だって?」
「…うん、お母さんの容態が思わしくないから、できるだけ早く帰って来て欲しいって」
「そりゃ大変だね、すぐに帰らないと」
まりあはコーヒーを入れる母を通り越して、直人を見つめている。
直人は視線を感じて手を止め、iPadを閉じた。
「俺も明日には東京に帰ります」
「そうですか。またいつでもいらして下さいねー」
母はコーヒーを直人の前に置いてからまりあに言った。
「あんた、お客さんを那覇までご案内して」
「…お父さんいつ帰るんだっけ?」
「明日の夜になるから、港までは私が乗せてくよ」
「わかった」
「飛行機の予約一緒に取りましょうか?」
まりあから意外な提案があり、直人は少し戸惑った。
「そうだね、それがいい!まりあすぐに手配して」
「家のパソコン借りるね」
まりあが奥に入っていった。
「あの…」
「ああ、ご心配なく」
「はぁ…」
「空席がなかったら、那覇で一泊出来るようにこちらで手配しますね」
「…何から何まで、ありがとうございます」
ーとにもかくにも、東京までは一緒にいられそうだ。
直人は、まりあの母に対して後ろめたさを感じながらも、これから想定される修羅場でまりあを守り抜く決意を固めていた。
つづく