0011
織(しき)
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お前は人間じゃない
泣いたら済むと思うなよ
一生許さへんからな
自分の胸に聞いてみろ
※「一生許されないほど私が何をしたか教えて。ちゃんと謝るから。」と言うと、こう言われる。許されない理由はまだ分からない。
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幾度となく続いた母からの罵声は夜中中この言葉の繰り返しだった。
無視、仲間はずれ、陰口、過度な監視、嘘で私を悪者にする、外出時の尾行、私の行動言動全てを疑い信じてくれる事なく、自分の言うとおりに行動しないと罵声がはじまる。
幼少期からの暴力に加え、家の中で小・中学生が行うようなひどいいじめを受けているような状態が続いた。
外では良い母親の顔をし、他の家族も助けてくれることはなく、私の頭がおかしいということで全て片付けられていた。
私への心理的虐待は決して見つかることは無かった。
私は母親から逃げるように関西から上京した。
機能不全家族で育った私は、社会に出てからあまりにも適合できない自分に驚き、自尊心を根こそぎ奪われた虐待の後遺症の恐ろしさを知った。
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私は周りを見る余裕がこれっぽっちも無いほど、怯えた自分の小さな心と必死で生きていた。
健全な人間関係を知らない私は、人を傷つけたり失礼なことをしたり不誠実な行動もたくさんしてしまったと思う。
そんな私の人生を良き方へ導いてくれたのは、たくさんの良き出会いだった。
尊敬できる大人の人だと初めて思わせてくれた、私がボランティアをしていたパン屋のご夫婦。
私の苦しみはあなたのせいじゃない。育ちに問題があると教えてくれたカウンセラーさん。
私の作品を後押ししてくれた大学の先生。
たくさん友達ができるよ!と、挙動不審で不安定な私を長年受け入れてくれて、世界を広げてくれた太鼓の先生。
一人で悲しくて辛くてどうしようもないとき、手作りのご飯を持って家まで飛んできてくれた友達。
私を信じて応援してくれ、虐待についても学ぼうとしてくれている夫。
何が健全かを教えてもらい、私の視野が大きく広がった。
そんな私は母親になった。
私なんかのところに来てくれたんだ。
「あなたは大丈夫。」と言ってくれているようで涙が溢れた。
自分を選んで来てくれたこの子の心を絶対に守りたい。
どんな場所でも自分らしく輝ける心の土台を作ってあげたい。
安心できる居場所を家族の中に作ってあげたい。
泣いたら理由を聞いてあげたい。
悲しくて辛いことがあれば抱きしめてあげたい。
目を見て大丈夫と言ってあげたい。
みんなで食べるご飯は美味しいと思わせてあげたい。
この子の力を信じてあげたい。
心の成長を喜んであげたい。
いつか巣立って行くとき、笑顔で送り出してあげたい。
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心の奥の本当の気持ち
繕わないで蓋をしないで
どんな自分も抱きしめて
寄り添ってあげて
自分自身で心を満たせば
本当の優しさに気づき出すよ
変わることを恐れないで
愛を繋ごう
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まだまだ苦しい旅の途中だけど、
サバイバーだって普通に幸せになれる。
母親と決して同じことを繰り返さないで子育てができる。
ということを自分自身で証明したい。
私と出会ってくれたたくさんの良き人たちのように、私も誰かの良き出会いとなれるような人になりたい。
たくさんたくさん傷ついてきた私達は、これからの人生、最高に幸せで輝く権利がある。
そして、どうかこれ以上、逃げられない家族の中での苦しみが増えませんように。
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ずっと言えなかった自分の生い立ちをここに書かせていただくことができました。この写真展との出会いに心から感謝しています。