花崗岩大地と地震
https://www.tsukuba-geopark.jp/temporary/page000066.html 【02. 加波山・足尾山(桜川市・石岡市)】より
筑波山北方の南北方向に連なる加波山、足尾山やきのこ山などの山々は、「加波山花崗岩」と呼ばれる主に細粒の黒雲母花崗岩によって形成されている。加波山山頂近くでは、風化・侵食、節理(せつり)で形成された加波山花崗岩の巨石や奇岩が多く見られる。
加波山花崗岩は、構成鉱物の大きさが均一で不純物も少ないことから良質の石材とされ、明治時代以降は「真壁石」として迎賓館(旧赤坂離宮)など日本を代表する近代建築に用いられた。
昭和に入ると、筑波研究学園都市の開発の際にこれらの石材が使われた。
また、江戸時代から続いていた真壁石燈籠(とうろう)は、平成7年から国の伝統工芸品に指定されている。
加波山麓の真壁台地上には、中世以降真壁氏が支配した真壁城跡(国指定史跡)があり、城下町の町割りが残された真壁地区は、平成22年から国選定重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
ここには、加波山由来のマサ土を使った梵鐘などの鋳造業や、加波山麓の湧水を使った酒や味噌などの醸造業といった伝統産業などが今も残っている。
https://www.mapple.net/articles/bk/12093/ 【中国山地と花崗岩には地震との深い関わりがあった!】より
広島県北部分を東西に走る中国山地と、広島の大地を覆う花崗岩。
それぞれの成り立ちと特徴、地震の発生との関係について、地質の面からみてみましょう。
中国山地と花崗岩は地震に関係あり
広島県の地形や地質の大きな特徴として「中国山地」と「花崗岩(かこうがん)」が挙げられます。気候などに大きな影響を与える中国山地と、大地の大部分を占める花崗岩。この二つは実は、“広島県の地震”に大いに関係があります。
中国山地の成り立ち
断層によりできた高さの違う3段の地形「中国脊梁山地」「高原地帯」「低地帯」が北から南へ並んでいる広島県。中でも中国山地は全国的に見ても珍しい特徴を持つ地形とされています。その中国山地はどのようにでき、どんな特徴があるのでしょうか。
中国山地は海底が隆起してできた
中国山地はおよそ1億5000万年前以降、長期にわたって陸化していましたが、1500万年前ごろになると広範囲にわたって海になったと考えられています。
それを裏付ける証拠として、広島県北部の三次市や庄原市などから海底の地層が発見され、標高500m辺りの高い地点でも、カキやクジラの歯などの海の生き物の化石が多数見つかりました。そのため1500万年前ごろに一度海底になり、その後600m以上隆起して現在の高さになったと考えられています。
中国山地はグランドキャニオンと同じ構造?
傾斜量図を見てみると、中国地方には高い山々がほぼなく、中国山地の山頂部分は比較的なだらかであることが分かります。
隆起してできた山は風化によって削られていきますが、水面以下にまでは削られないため、最後は必ず平野になります。平野になった後にまた何らかの要因でその場所が隆起すると、上が平らな台地ができ上がります。こうしてできた地形を隆起準平原(りゅうきじゅんへいげん)と呼びます。
隆起準平原は日本では中国地方だけでなく東北地方でも一部見られますが、中国山地が最も典型的な様相を示しています。この地形の代表的な場所が、アメリカの「グランドキャニオン」で、平らな台地を川による深い谷がえぐっています。中国山地はグランドキャニオンほどの深い谷はありませんが、構造的には同じものです。
広島花崗岩とは
2016(平成28)年に日本地質学会が全国47都道府県それぞれに特徴的に産出する、または発見された岩石・鉱物・化石を一つずつ「県の石」として選定しました。その際、広島県の岩石として選ばれたのが「広島花崗岩」です。
中央構造線のすぐ北にある西南日本内帯の山陽帯と称される岩石区に分布する花崗岩の中で、白亜紀末期の8500万年前ごろに貫入した珪長質(けいちょうしつ)の深成岩(しんせいがん)が「広島花崗岩」とされます。
広島花崗岩は中央構造線の北側に分布している大量の花崗岩の一部
「広島花崗岩」という専門用語が付けられるほど、広島県には花崗岩が多くあります。近年の豪雨災害などによる土石流被害において、テレビや新聞などで花崗岩や花崗岩の風化残積土であるまさ土(つち)を認識した人も多いでしょう。
確かに広島県に花崗岩が多いのは事実ですが、同じような白亜紀後期(1億年~6600万年前)の花崗岩は、日本列島を縦走する中央構造線の北側に沿って、近畿~中部地方にも大量に分布しています。瀬戸内海は陸ではないため地質図にすると目立ちませんが、中央構造線の北側のゾーンに沿って海底にもずっと花崗岩が存在しています。広島県はこれと同じゾーンに位置しており、なおかつ地上部分に見えている面積が多くなっています。
広島の花崗岩は県の面積率の約41%を占める
地質図から広島県に占める各地質の面積割合を求めると、花崗岩が約41%となります。花崗岩の面積率約41%というのは、全国的にもトップレベルだと考えられます。
地質図を見ても県全体に花崗岩が広がっていることが確認できます。花崗岩はマグマが地下深くで冷え固まった深成岩。一方面積の約33%を占める流紋岩(りゅうもんがん)は、地表に噴出して溜まった火山岩です。
両方とも白亜紀の同時代にできたもので、成分はほぼ同じ。二つを合わせると面積率は約74%にもなります。
広島花崗岩の存在が活断層に関係している
広島県は地震が少ないといわれていますが、それは一要因として活断層が少ないからに他なりません。事実、岡山県と広島県の県境を中心にその両側部分は日本一活断層が少なくなっています。そして、これには花崗岩が関係しています。
広島の花崗岩の地殻が地震を起こす力を吸い取っている?
海洋プレートが海溝からマントルへと沈み込むと、深海底に溜まった海洋粘土などが脱水して、水が地下深部のマントルに供給され、玄武岩のマグマが発生します。これが上がってきて地下で固まり、斑(はん)れい岩(がん)ができます。こうして厚くなった斑れい岩の地殻に次々とマグマが貫入すると、斑れい岩は部分的に融けて、今度は花崗岩のマグマを吐き出します。これが次々に固まっていくことで花崗岩の地殻がつくられていくのですが、今の広島と岡山の県境下には、この花崗岩の地殻が非常に厚く形成されています。
地下深くなると温度は高くなります。硬いガラスが熱で融けるように、岩石を構成している鉱物も温度が高くなると軟らかくなります。軟らかい石は、大きな力で押されても割れずに伸びたり曲がったりします。冷たくて硬い石は力に耐え切れずに割れてずれ、断層活動を起こします。それにより地震が起こるのです。
広島と岡山の両県は硬い岩盤の周りを取り囲む軟らかい岩盤に地震を起こす力が吸い取られていることにより地震が少ないと考えられています。
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中国山地に存在する断層は地すべりが起きやすい一面も
ただし中国山地に沿った広島県西部では、古くにできた断層が大量に確認されている事実もあります。白亜紀の地殻変動によって生じた断層部分が谷になり、約7000万年前の粘土を挟んでいます。己斐(こい)-広島西縁(せいえん)断層帯、五日市(いつかいち)断層、安芸灘(あきなだ)断層群、岩国断層帯などがそれにあたります。
一度断層ができてしまうと、断層破砕帯(だんそうはさいたい)に断層粘土が挟まれ、摩擦係数が下がって滑りやすい状態になります。広島県は地震自体は少ないと思われていますが、水を通しやすい性質を持つまさ土が広く分布しているため、地震動によって地すべりなどの斜面崩壊を起こす危険性を秘めているのです。
中国山地に存在する断層は地すべりが起きやすい一面も
国土地理院色別標高図を元に作成
西中国山地に平行して、いくつもの活断層が走っています。
広島は花崗岩の影響で水はミネラルの少ない軟水
水には主にカルシウムイオンとマグネシウムイオンが含まれていますが、広島県の大地は、花崗岩と流紋岩の成分が非常に強く、ミネラル分があまり含まれていません。ミネラルがあまり含まれていない天然水を軟水といいます。
安山岩類はミネラルを多く含んでいる石ですが、広島県での割合は約6%。硬水の元になる石灰岩は、約 3.7%となっています。日本は元々軟水が多いのですが、広島県は花崗岩の影響もあり、その割合が顕著です。
https://itoito.style/article/13757?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTEAAR2l2Q_b6DmwaCgG0XOUFYpLVG-Gtl6vqgdY4JhHpzWmWIZmFT2B_ym3Wek_aem_ueSnzCqg94a6cTtc1JcFtg【鳥島近海でM5.4、宮城沖でM5.3、陸奥湾・岐阜・長野・茨城・秋田でも小規模な地震(2024/11/26)】より
2024/11/26は鳥島近海でM5.4、宮城沖でM5.3、陸奥湾・ 岐阜・ 長野・茨城・秋田でも小規模な地震が発生。中規模かつそれなりの揺れを感じる地震が起きると身構えるものです。こうした地震を機に防災用品や備蓄品、最寄りの避難場所や家族との緊急連絡手段などを確認しておきましょう。日頃から「備えていない」方々は意外と多いのです。
2024/11/26:鳥島近海でM5.4、宮城沖でM5.3、陸奥湾・岐阜・長野・茨城・秋田でも小規模な地震
2024/11/26は鳥島近海でM5.4、宮城沖でM5.3、陸奥湾・岐阜・長野・茨城・秋田でも小規模な地震が発生。
それぞれを時系列で列挙すると次の通りです(記事公開時点までの最新順)
発生日時 震源 震度 規模 深さ 北緯, 東経
2024/11/26 21:18頃 陸奥湾 1 M4.4 約120km 41.1, 140.7
2024/11/26 20:26頃 岐阜県美濃中西部 2 M3.6 約10km 35.8, 136.9
2024/11/26 16:34頃 茨城県南部 1 M3.1 約60km 36.1, 140.1
2024/11/26 13:37頃 秋田県内陸北部 1 M2.9 ごく浅い 40.4, 140.9
2024/11/26 13:31頃 宮城県沖 3 M5.3 約40km 38.7, 142.3
2024/11/26 08:45頃 長野県中部 2 M3.2 約10km 36.3, 138.0
2024/11/26 02:17頃 宮城県沖 1 M4.1 約60km 38.0, 141.8
2024/11/26 00:38頃 鳥島近海 1 M5.4 約10km 29.4, 141.4
気になる揺れの地震が起きた場合は収まったからといって油断せず、万が一に備えて家族で最低限1週間は孤立しても何とか生活できるようにしておきましょう。
水や食料、モバイルバッテリー・懐中電灯・携帯ラジオなどに意識が行きがちですが、極めて重要な備えが「トイレ対策」です。
簡易トイレはしっかりと備え、何もない平時に実際に使って処理方法を把握しておくことをオススメします。
女性・高齢者・乳幼児に合った備えも必要ですし、特に備蓄食料に関してはアレルギーのある方は必ず自分で備蓄しておく必要があります。避難所で配布される食料には、アレルギー表示は無い場合もあるからです。
南海トラフ巨大地震にせよ首都直下地震にせよ「秒読み」と言われて何年(数十年)も経ちますが、むしろ他の、今までノーチェックだった場所での大きな地震が数年おきに発生するなど目立つようになってきました。
「そろそろ巨大地震が来そうだから備える」という意識は長くは維持できません。むしろ日常生活の中で、地震などの大災害が起きて電気・ガス・水道などが止まっても命(と自宅)が無事なら1〜2週間はできるかぎり自力で生活を維持するための備えを普段から生活に組み込んでおくことが重要でしょう。
災害の規模が大きいほど、消防や自衛隊・救急や警察などの公助は遅れます。状況が厳しいほど「自助」で凌がざるを得ないことになります。事前に備える「備災」が、いざ大きな地震が起きた際の「減災」につながるのです。