Pole Vault Summit 2019②「The Journey with Mondo」
2019年1月18・19日、アメリカのネバダ州リノで開催された棒高跳サミット現地レポートの第2弾!
今回はMondo選手の母であるHelena Duplantisによる『The Journey w/ Mondo as a Mother and Coach: From Backyard Fun to 605』を紹介します。
このセッションはコーチ、学生選手、また選手の親を対象に行われました。
【The Journey w/ Mondo as a Mother and Coach: From Backyard Fun to 605】
Duplantis家は私以外の全員が棒高跳経験があります。私の専門は7種競技で、私だけが棒高跳をやったことがありません。私は学生時代は7種競技をやっていました。またアメリカ陸上競技連盟のコーチライセンスは短距離・ハードル(レベル2)を持っています。
今回は、皆さんも覚えていると思います、ヨーロッパ選手権での6m05を跳ぶまでをテーマに話をします。
1.6m05を跳ぶまで
①Backyard; 2002~2004
彼の棒高跳は裏庭での遊びからスタートしました。
実は兄が棒高跳を始めたことをきっかけに、裏庭に棒高跳ピットを作りました。彼の裏庭での遊びはYoutubeなどでも見ることができると思います。 裏庭は、彼にとっての練習アリーナです。ピットや、ロープ、鉄棒、トランポリンがいつでもできます。
②Team Sports; 2004~2014
彼は特に野球とサッカーが好きです。
実際に、小学生の頃のメインは棒高跳ではなく野球でした。当時は2つの野球クラブと1つのサッカークラブに所属してプレーしていました。 また、フットボールやスケートボードも好きです。
③High School; 2014~2018
棒高跳と走幅跳、リレーの3種目を行っていました。
また、この頃も野球クラブに所属して、プレーしていました。多くの人は、彼が早くに棒高跳専門化して、それだけをやっていると思っていますが、それは間違いです。
2.Team Duplantis
私たちのテーマは「Smarter than not harder」です。
Experience, Common Sense, Cutom Made, Video, Technical Analysis の5つの要素を大切にしています。 特にメニューについては、私がストレングスとランニング、夫が技術をメインに組み立てていきました。
また、彼の練習の特徴としては、ゴムバーを使わないことです。ゴムバーはとても使いやすいですが、実際の跳躍とは違う動きになりかねませんので、いつでもバーをかけて練習しています。
3.彼を成功に導いた要素
①心理面
本当に強いメンタルを持っています。競争心が強く、決してあきらめません。
彼がまだ小学校に入る前、裏にはで兄と棒高跳の試合をしたことがあります。彼は、兄に負けるのが嫌で何度もチャレンジしていました。
ヨーロッパ選手権の前には、何度も過去に行われたヨーロッパ選手権の動画を見ていました。そして「次に勝つのは僕だ」と言って、自ら心理面の準備をしていました。また彼は毎年目標を立てて、それに対して1年間を通して突き進みます。2017年の11月に立てた目標は「6m08でヨーロッパ選手権に優勝すること」でした。非常に高いハードルに思えましたが、結果は「6m05を跳び優勝」しました。あの6m05は1年前から予定されていた結果だったのです。
②多様なスポーツの経験
先ほども言いましたが、彼はこれまで多くのスポーツを経験しています。
多くの人は、幼いことから棒高跳だけをやっていると思いがちですが、全くそうではありません。この経験は大きく棒高跳に活きていると確信しています。
③技術面
彼のすごいところは、同じ跳躍を何度も繰り返すことが出来ることです。
9歳のころ2m60の高さを50回ミスなく連続で超えていました。最近ではKendricks Challenge(時間内に設定したバーを決めた回数跳ぶチャレンジ)をして、5m50を30分以内に10回クリアしました。
また、彼はいろんなシチュエーションで跳躍をしています。
ハンドシフトやホフマンロール、竹跳びや着ぐるみを着ての跳躍、セグウェイに乗って跳んだり、ビーチで跳んだりもします。
④身体面
彼の動きはフランスの棒高跳選手だったMaurice Houvionを彷彿させます。これは少なからず、棒高跳に活きているでしょう。
⑤遺伝
もちろん、7種競技を行っていた私と、棒高跳選手であった夫の遺伝子を受け継いだのもいい影響です。
【Q &A】
Q. どんなウエイトリフティングをやっていますか?
A. 実は彼はウエイトをあまりやりません。実は好きではないです。その代わりに器械体操系の、より棒高跳の動きに近い運動での補強を行っています。ちなみに器械体操は週に1日は行います。器械体操では、ロープ、鉄棒(ジャイアントスイング、マッスルアップ)など、いろんなことをします。
Q. これから6m05よりもさらに高く跳ぶために、どうしようと考えていますか?
A. グリップを高くして、より硬いポールを使えるようになる必要があります。また踏切の技術を改善するべきです。
Q. ほかの兄妹とMonodo選手とで指導に違いがあるのですか?
A. 兄は野球を選びました。妹はまだ身体面を強くする必要があります。Monodo自身も2年半前にストレングストレーニングを始めたばかりです。ただ技術に関する指導については、同じように行っています。
Q. 私の娘は硬いポールになると、上手く跳躍できなくなります。どうすればよいでしょうか?
A. まずはコーチと選手の間で信頼関係を築いていくことが一つ重要でしょう。今のポールでできていたことを、次のポールでも同じようにできるかが最も大切ですね。実は、Monodo自身が以前高校生からこの質問を受けたことがあります。その時の彼の答えは「Not Happen to Me(そんなこと今までなかった)」でした。
Q. 練習の質を保つために、内容についてどのような工夫をしていますか?
A. 選手のコンディションは日によって異なります。選手と相談するか、W-upの状況を見て、すぐにその日の歩数や本数を決めます。いつも同じ歩数や同じポールで跳ぶことはありません。また、質をキープするために、本数の制限(10本程度)をします。終わりの分からない跳躍練習では、質が下がります。
Q. 私は息子のコーチをしています。Duplantis家ではコーチと親の切り替えはどのようにしていますか?
A. 基本的にはMonodo自身が行っています。そのため、幸運にもこれまで親/コーチという立場があることが家族/競技に問題を与えたことはありません。ただ父とMonodoの間では、一度少し問題がありましたね。ただどのように接していくのかは、子供の性格次第になると思います。私たちは「自然に」いることを心がけます。わざわざ家族の時間に棒高跳の話をしようとすることもありません。彼が棒高跳の話を始めれば少し話す程度です。また、彼自身も私たちのコーチとしての決定は尊敬してくれています。
Q. 実際のトレーニングで、走る練習と跳躍練習はどのくらいの頻度でやっていますか?
A. 跳躍;週2回、スプリント;週2回、持久系;週2回、メディシンボール/リフティング;週2回を組み合わせています。例えば 月)跳躍、スプリント、メディシンボール:火)持久系:水)器械体操:木)跳躍、スプリント:金)持久系:土)ドリル、リフティング:日)休み ですね。また、私たちの持久系走練習では150mより長く走ることはありません。100m×10本などのようなセットで練習を行います。この時ポールを持って行うことも多いです。
Q. どうやって彼の跳躍スタイルを作ったのでしょうか?誰かをモデルにしていましたか?
A. 誰かをモデルにしたことはありません。いつもどうやったら今よりも高く跳べるかを考えています。例えば、Kendricksは16.5ft、Barberは17.9ft、Mondoは17ftのポールを使います。それぞれ違うところがあるはずなので、高く跳ぶためには真似するだけではいけません。
Q. 私はMondo選手が棒高跳を始めたころからトップ選手になるまでをまとめた動画が好きです。これまで短いポールから長いポールまでいろんなポールを使ったと思いますが、それらのポールはどうしているんですか?
A. 次に必要な人にあげています。リサイクルと寄付ですね。Mondoが通っていた高校にも寄付していますよ。あなたが使いたいポールがあれば、あげますよ!