急性期病院とは?
https://mikaru.jp/column/detail/141/ 【急性期病院とは?役割や種類、ほかの病院との違いを解説!】より
急性期病院とは?
急性期病院とは、急性期医療を提供している病院のことで、重症な患者や緊急度が高い患者の治療を行っています。急性期とは、ケガや病気になり始めの状態を指し、多くの患者は容体が不安定です。急性期病院ではそのような急性期にある患者を受け入れるため、手術や全身管理が行える環境を整えています。
なお、治療により症状の進行が緩やかになった患者は急性期を逸し、回復期や慢性期と呼ばれる状態になります。回復期や慢性期になった患者は急性期病院から退院したり、急性期以外の病床に転棟・転院したりするのが通常の流れです。
急性期病院の救急医療の種類
救急医療とは、事故や災害によりケガをした方や、突然病気が発症した方のうち、直ちに医療機関での治療が必要な方に行われる医療のことです。都道府県が地域の医療体制を整えるために、患者の緊急性や対応している診療内容によって救急医療を3段階に分けています。それぞれの段階にどのような特徴があるのかみていきましょう。
一次救急
一次救急は、急性期病院の中でも比較的軽症な患者が対象です。患者の来院も救急車ではなく、自家用車やタクシーで来院するケースが多くみられます。治療後に帰宅できる状態の患者が多いため、休日夜間急患センターや救急指定を受けている診療所など入院施設のない医療機関がほとんどです。ただし、患者の病態により必要に応じて二次救急以上の医療機関に案内することもあります。
二次救急
二次救急は、入院や手術の必要な重症患者が対象で、病院は24時間365日体制で患者を受け入れます。全ての二次救急の病院が24時間365日体制を取っているわけではなく、一部では病院群輪番制を取っている場合もあります。病院群輪番制とは、二次救急の複数の病院が、輪番制で救急患者の受け入れを行う制度です。
三次救急
三次救急は、二次救急で対応できない重症患者が対象で、救急救命センターや高度救命救急センターを有する医療機関が指定を受けています。二次救急と同様に、患者の受け入れと治療は24時間365日体制です。急性期病院の中で最も高度な救急医療を提供しており、地域医療の「最後の砦」とも呼ばれます。その特徴から救急医療の教育機関としての役割も持っており、医師や看護師の臨床研修の場にもなっています。
急性期病院とほかの病院との違い
医療機関では、患者の病態や疾患によって病院・病棟ごとに役割分担がなされています。1つの役割のみを持っている医療機関もありますが、一つの医療機関で複数の役割を持ち合わせているケースが一般的です。ここでは、急性期病院とほかの病院との役割の違いについて紹介します。
高度急性期病院
高度急性期病院では、急性期病院よりも高度な医療を提供しています。設備や人員といった医療資源が多く投入されており、ICU(集中治療室)やHCU(ハイケアユニット)が代表的な例です。重症度の高い患者に対して全身管理や高度な医療処置が可能で、医師や看護師の配置も手厚い設定になっています。
救急病院
救急病院は、心疾患や脳神経疾患、事故などの外傷といった、早急に治療を開始する必要がある患者が対象です。救急病院は、救急病院を定める省令により指定要件が下記のとおり定義されています。
救急医療について相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること
エックス線装置、心電計、輸血及び輸液のための設備その他救急医療を行うために必要な施設及び設備を有すること
救急隊による傷病者の搬送に容易な場所に所在し、かつ、傷病者の搬入に適した構造設備を有すること
救急医療を要する傷病者のための専用病床又は当該傷病者のために優先的に使用される病床を有すること
患者は、救急隊による搬送で来院するのも特徴です。発症・受傷直後の医療処置を行うため救急病院に患者が長く入院することはなく、処置後は急性期病院や高度急性期病院へ診療を引き継ぎます。そのため、実際には救急病院に急性期病棟が併設されていて、入院から病が安定するまでを同じ医療機関で治療する形式がほとんどです。
慢性期病院
慢性期病院は、急性期から容体が安定した後も、治療やケアが継続して必要な患者が対象です。病気の後遺症により身体機能が衰えた患者にはリハビリを行ったり、退院後の生活に不安を抱えている患者へは在宅復帰を目的としたケアを行ったりしています。
急性期病院の主な役割や入院期間は?
急性期病院の主な役割は、重症度や緊急度が高い患者を受け入れ、治療を行うことです。その役割を果たすため、病状が安定した患者は退院や転院してもらい、新たな重症患者を受け入れられるような体制を整えています。厚生労働省保健局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅰ」によると、急性期病院が患者の入院期間1日あたりに算定できる診療報酬加算の限度が入院から14日になっており、急性期病院の入院期間は14日以内に決められている場合が多いようです。
急性期病院で働く看護師の仕事内容は?
重症で急変リスクも高い患者を多く診る急性期病院では、適切なアセスメントを行うことや、スピード感を持った看護が求められます。看護業務の中で患者の変化をいち早く察知し、迅速に対応しなければなりません。
具体的な仕事内容は、人工呼吸器や心電図などの医療機器の管理や診療補助、周術期看護などです。また、24時間体制で患者を看護することから、ほとんどの看護師が夜勤のある勤務体制で働いています。夜勤がある勤務体系は、日勤・夜勤で勤務する二交代制と、日勤・準夜勤・深夜勤で勤務する三交代制が主で、病院により異なります。
急性期病院で働く上でのメリット
急性期病院で働く上でのメリットとして挙げられるものは、以下のとおりです。
看護師としての成長につながる臨床経験を積める 認定看護師や専門看護師を目指す足掛かりにできる 患者の回復を目に見えて感じられる
急性期病院では高度医療や周術期看護に触れられるため、豊富な看護知識やスキルを身に付けられます。それだけ覚えることも多い現場と言えますが、看護師としての成長に繋がるでしょう。配属された診療科の分野をより極めたいと思った場合も、日々多くの症例の看護に携われるため、認定看護師や専門看護師になってキャリアアップを目指すうえで十分な経験を積めます。
また、急性期病院には、呼吸苦の改善や意識回復など、患者の回復を目に見えて感じられるという魅力もあります。入院時から患者が回復している姿を見ることで、モチベーションアップにもつながるでしょう。
急性期病院で働く上でのデメリット
急性期病院で働く上には、デメリットと感じられる点もあります。
仕事において重い責任を感じる場面が多い 患者一人ひとりとじっくり向き合う時間が少ない
急変や夜勤が多く、多忙
急性期病院では、患者の生死に関わるシビアな状況に直面することが多々あります。中には亡くなる患者もおり、必要以上に仕事の責任を感じてしまうことがある看護師もいるようです。
また、入退院による患者の入れ替わりが激しいうえ、急変や夜勤など日々の仕事に追われてしまい、患者一人ひとりとじっくり向き合って看護を行うのは難しいと感じることもあるかもしれません。このような点をデメリットと感じる方は、患者の病状が安定していて入院期間が長い慢性期病院や、入院施設のない診療所などでの勤務を検討してみてもよさそうです。
急性期病院で働くのに向いている人は?
急性期病院で働くのに向いている人は、高度な医療知識・看護スキルを身に付けたい人です。前述のとおり、急性期病院は重篤な患者を治療するため、働いて経験を積むことで知識やスキルが身につきます。また、急変や夜勤が多い現場のため、体力に自信がありスピード感のある対応ができる人、気持ちの切り替えができる人も急性期病院での勤務が向いているでしょう。
急性期病院は重症度の高い患者を受け入れている
急性期病院は、ケガや病気になり始めの患者を受け入れて治療している
急性期病院は受け入れる患者の病態によって3段階に分かれている
急性期病院の三次救急は高度医療を提供しており、医療従事者の教育機関の役割もある
急性期病院で働くと、高度な医療知識や看護スキルが身につけられる